王子様とお姫様。 4 | 気まぐれ図書館

気まぐれ図書館

気ままに綴っていきます。
主に、サイト更新関連かと。
社会人しながら、専門で小説の勉強中です^^

 その日は、久しぶりに遅くまで読書をしていた。

 いつから趣味になったのか、記憶にはないが、少なくとも、本を手にしている間は、嫌なことは忘れられる。

「ん…?」

 静まり返った家の中で、不意に、隣の部屋から物音がしたことに気付く。

「まだ起きてるのか?」

 いや、そんなはずはない。

 いつも、彼女は部屋で寝ていて、そうそう起きることはない。いつも、俺の方が寝るのが遅いから、そういう習慣に気付いていた。

 だが、一度気付いてしまえば、気になるもの。

 思わず立ち上がると、部屋を出、おもむろに姫の部屋の戸を叩いた。

   コンコン

「はい」

 あっさり返ってきた答え。少し意外にも感じながら、俺はゆっくりとドアを開けた。

「何か、うなされてたみたいだったけど、大丈夫か?」

 入ってみれば、汗に濡れ、恐怖している表情。見覚えがある。

 そんなことを考えたが、それは姫の言葉で遮られた。

「大丈夫。嫌な夢を見ただけだから」
「そうか」

 だが、理由は聞かない。それが、俺達のルールだから。

 普通だったら、どんな夢か、と聞くところだろうが、そうしない。内容など、おおよそ見当はつく。

「って、私の声に気付いたんなら、王子、まだ起きてたの?」

 時計を指して聞く姫に、俺は、頷いてみせる。

 もう、深夜と呼べる時間帯だ。

「読書もたいがいにしないと、体壊すよ?」
「ははっ、姫にはバレバレか。もし俺が倒れたら、君の優しい看病を期待するよ」

 冗談だか、本気だかつかない言葉。

 それに、いちいち姫が翻弄されていることを、知っているくせに。

「看病はするけど、王子が倒れたら、私、嬉しくない…」

 憎まれ口なのか、心配しているのか。

 本当は後者なんだろうが、それは言ってやらずに、俺は声をたてて笑った。

「以後、気をつけますよ、お姫様」

 まるで、本当の姫にするように恭しく礼をしてみせる俺に、姫は気恥ずかしそうに顔を背ける。

「じゃあ、おやすみ、姫」
「おやすみなさい。本当に休んでね?」
「わかってるよ」

 俺の声の明るさに、安堵したように笑う姫。

 夢は、楽しい方が良い。
 それに、いつかピリオドが打たれるなら。