こみあげるおもいが透明のなみだになって


知らずこぼれおちていく


あふれるなみだは


ほおとこころの扉をやさしくたたきながら


うすよごれてくすんだ


ときの魔法を洗い流す


はじめからおわりまで


いつの日もいつまでも


絶えることなく溢れでる愛に気付いたこころは


なみだのしらせで


ゆたかにうるおっていく


うるおいみちたこころは


枯れることなくひるむことなく


なみだの川をとびこえて


あたらしいいのちの流れをつくりはじめる














まどろんだひるさがり


ちいさなこえがきこえてきたよ


かなしみにしずんだ


みずいろのこころにとどくよう


くりかえしくりかえし


ささやくこえがきこえてきたよ


メロディーにのったそのこえは


ちいさなうたになって


わたしのこころにおくられてきたよ


めざめをさかいに


はかなくきえていくさだめのちいさなうたは


みらいのわたしからのおうえんか


ゆめうつつにいる


ちいさなわたしがわすれてしまわぬように


おおきなわたしがメロディとともにわたしてくれた


いのちの賛歌





















おとうちゃん荷物、届いたよ


思ったとおり、朝一番に


ふふふ


昨日の電話で聞いていたから、ちっともワクワクしなかったよ


中身はとっくに知っているんだから


ダンボールのなかは、ふるさとの空気とぷーんと新聞紙のにおい


きっちりぎっちりと詰められて


長い時間をかけてともに旅したお方は


今年のお米にコショウの親玉、みかんにかぼちゃ


あれれ、週末に買おうと思っていたじゃがいもに人参も


おとうちゃん、こっそりどこかでのぞき見してたのかな


そうそう


カラスに奪われないようにとった庭の柿の実って


もしかしてこの小さな包みかな


そっと新聞紙をひらくと、コロンとかたい柿の実ひとつ


あっちにも、こっちにも


つぶれないように荷物の隙間にちょんちょんちょん


新聞紙を半分に切って、ひとつひとつ丁寧に包まれた柿の実5つ


小さくていびつな、けれど懐かしい我が家の秋の色




おとうちゃん、言ってた柿の実とどいたよ


おとうちゃんの心と一緒にとどいたよ


ふるさとの新聞紙にくるまれて、遠くここまでとといたよ

師走半ばの日曜のおひるどき


ひとけない静かな通りに


鈴をふるようなさえずりが響き渡る


ふと見上げれば


すっかり葉を落とし裸のままに天に向かった桜の木で


ころころとした丸いすずめが


楽しそうに語らっている


ほんの束の間の暖かい日差しを求めて


ここへあそこへ


居心地のいい場所に移動しては


細い枝を小さくゆらして


小春日和のひとときに寛いでいる


裸ん坊の桜の木になる、すずなりのふくらすずめ


かみさまを賛美する小さなツリー


















雪どけ残る朝の道


垂れ込めた雲にせかされながら


赤いポストに一枚のこころをおくりだす


空っぽの手で逆向きの風景をすすんでいくと


暖かい家は、もうすぐそこ


さあ、冷えたからだを温めましょうか


湯気の立つあまいミルクがぽわっと浮かぶ


熱々のミルクに百花蜜をたらし


スプーンでくるくる回してできあがり


あのころのかあさんの味と違うのは


つんと匂うれんげの蜂蜜じゃないせいね


心と体を温めてくれるホットミルク


思い出の、ホットミルク


大好きなかあさんの味