前回、イギリスに短期留学した時の思い出について書きました。

 

 

今回はその後再びイギリスに長期留学した時のことを書こうと思います。

 

20代後半になり、一度社会に出て働いて留学資金を貯めてから、再度イギリスに渡りました。この時はイギリスで3年半過ごしましたが、最初の半年は、ブライトンというイングランド南東部にある海辺の町で、公立カレッジの英語コースに通いました。

 

ブライトンを選んだ理由は、日本で留学先を考えていた時にイギリスのガイドブックで見たブライトンの町の写真に魅かれたからでした。イギリス最大のリゾート地で海辺を中心にたくさんのカフェやシアターがある他、桟橋には水族館や遊園地などの娯楽施設もあり、夏には多くの人々がイギリス国内外から訪れます。また、大学や語学学校もたくさんあるので世界中から人が訪れるコスモポリタンな町というイメージで、以前短期留学で行っていたコルチェスターとも、ロンドンとも違う雰囲気を感じ、この町に住んでみたいと思いました。ブライトンの中心部には1800年代に王室の住居として建築されたインド風のロイヤル・パビリオンという建物もあり、古いものと新しいものが融合している面白い魅力を持った町でした。

 

そのブライトンで、イギリス人家庭でホームステイをして過ごしました。その理由は、学校では先生以外、クラスメートは各国から来た留学生ばかりになるため、イギリスの一般家庭での生活を体験したいと思ったからです。ホームステイ先の家族は、リタイアしたおじいさんとおばあさんの二人暮らしでした。

私が、半年間のホームステイを通して学んだことを共有します。

 

■伝えたいことは最初に言おう!

ホームステイ先に到着した日に、ホストマザーが私を見るなり言いました。

「あなたは痩せているから私の料理で栄養をつけてあげる!それがあなたがこの家にいる間の私の目標よ!」

その言葉に“Thank you”とお礼を言ったが最後、料理の得意な彼女は、翌日から毎日、朝早くから私の夕飯の仕込みを始めたのです。

 

確かに、ホストマザーが作ってくれる夕食はとてもおいしかったし、イギリスの料理はおいしくない!なんて世間で言われている先入観は消えてしまうほどでした。でも、とにかく量が多いのです!ある日の夕飯の一例を紹介します。

 

・前菜:マヨネーズシュリンプ

・メイン:特大のポークステーキ+付け合わせに大量のマッシュポテト+大量のグリーンピース+大量の茹でた人参

・デザート:フルーツポンチ+ホールケーキの半分!+アイスクリーム

・飲み物:ギネスビールorワイン+オレンジジュース

 

毎日、ここはレストランか?と思うほど前菜からデザートまで出てきます。完食するのはいくら食べることが大好きな私でもさすがに無理!時々休憩しながら食べても食べきれない日がほとんどでした。

 

でも、私が失敗したと感じたのは最初にホストマザーからの提案に返した私の言葉でした。「これくらい食べられる?」と聞いてきた彼女に、「食べられます!」と言ってしまったのです。そして、初日からせっかく作ってくれた料理を残したら悪いと思い、頑張って完食したのです。その結果、私の適量がその量だと判断したホストマザーが毎晩大量の夕食を準備してくれるようになってしまいました。後日、「実はこの量は多すぎる、もう少し減らしてほしい」と何度か訴えてみたものの、「最初の頃は食べていたでしょ?少し休憩してからまた食べなさい」と言われてしまい、なかなか減らしてもらえませんでした。そして、私は毎晩のように胃痛に苦しむことになりました。

 

この経験から私は学びました。相手に悪いからとか、好意を無下にしたら申し訳ないとか思わずに、伝えたいことは遠慮せずに最初にはっきり言うべきだったということを。

 

■自分からどんどん話そう!

最初の頃は自分の英語に自信がなく、ホストファミリーの二人に聞かれたことに答えるのが精一杯でした。でも、それではなかなか会話が続きません。夕食の後で、いつも一緒にテレビを観るのが日課でしたが、ある時から私はこの時間に、その日の授業で学んだことや、クラスメートのこと、日本の家族のことなど、あらかじめ自分でトピックを決めておいて、それについて話すようにしました。

 

私が自分から話しかけることを二人は喜んでくれて、私が話し出すとテレビのボリュームを小さくして一生懸命耳を傾けて聴いてくれました。しかも、二人は私に毎日色々な単語や表現を教えてくれたので、新しい単語も生活の中で使いながらどんどん覚えることができました。自分から持ち掛けた話題だと会話も盛り上がり、この時間は英語の間違いを恐れずに話せる時間になり、それが町での買い物やカフェなどでも英語で話す時の自信につながったと思います。

 

夕飯の量が多かったことには苦しみましたが、それ以外は何の不満も悩みもなく、本当の孫のように接してくれて、イギリスのおじいちゃん、おばあちゃんができたことがとても嬉しかったです。この後、ロンドンに引っ越しますが、ブライトンに帰れば大好きなホストファザーとマザーがいるということは、ロンドンで生活する時にも私の心の支えとなりました。ホームステイ先の家族とどう過ごすか、その時間を楽しい時間にできるか、それとも苦痛な時間にしてしまうかはすべて自分の気持ちと行動によって変わる!ということを身をもって経験した半年間でした。

 

次回はロンドンでのアルバイト体験について共有したいと思います。

 

ブライトンのロイヤル・パビリオン前にて

 

島根大学 英語コミュニケーション講座講師 Cathy