ずいぶん前に勤めていた職場でのこと。ある人の机の下に段ボール箱があり、その中にはボロボロになった文法書と語彙集が何冊か入っていた。特に語彙集には何色ものマーカで印が付けられており鉛筆で印をつけたり付箋をつけたりして、紙がふわふわになるまで何度も勉強していたのは誰の目にも明らかだった。私はその人が結構流暢な英語を話し、時折ジョークなども交えて外国人スタッフと歓談しているのをそれまでによく目にしていた。

 

ただ、ある時外国人講師が数人集まって、その彼の英語について話をしているのを耳にした。「彼の使うフレーズは結構昔のもので今は使われていないものも多い」とか、「彼の使うフレーズは、英語のネイティブ・スピーカーが使うのであればおかしくないが、外国人が使うには適していない」というようなことだったと思う。日本人から見れば、いかにも英語はできる!という風に写っていた彼も、英語のネイティブ・スピーカーにすれば、彼の使う英語はテキストで覚えたテキスト英語であったということ。

 

そこで大切なのは、フレーズをたくさん覚えてジョークを言うからと言って決して格好いい英語、流暢な英語という訳ではないということだ。そして、外国人の私たちにあった言葉を使うことが大切だということだ。もちろん、海外に10年も20年も住んでいた人は、「外国人」というよりはほぼネイティブに近い英語を使える人も多いので、この限りではない。

 

ここで私のおすすめは、生きた教材で学ぶことです。「生きた教材」とは、映画、YouTube、TED TalksやClubhouseのような、今英語を実際に使っているところのこと。そのような場所で英語を使いながら習得することが大切だ。もちろん、知識を入れる上では本も語彙の習得に適しているが。コミュニケーションのための英語を習得するときは、その本が何年に書かれたものか、どういう内容かによっては今の時代に適していない英語を習得してしまうかもしれない。

 

そして、もう一つ大切なことは、自分の身の丈にあった英語レベルを目指すこと。ネイティブが使うような語彙をいっぱい知ってそれらを会話の中で使ったとしても、違和感を持たれるのであれば、一層のこと語彙レベルはあまり高くなくても、知っている言葉を使って自分の言いたいことを表現する力をつける方が周囲のネイティブ・スピーカー達からは違和感を持たれないのかもしれない。それが、自分らしい本当に身についた英語と言えるのかもしれない。

 

とにかく、たくさん話す機会を持って、たくさん英語を聞こう。そして、相手から英語を学び、自分で使うことで流暢さを磨いていこう。決して語彙を丸暗記しても、流暢な英語とは言えないということを覚えていただければと思う。

 

オーストラリア ブルーマウンテンズ国立公園内で見つけた滝と虹

 

鈴木カオル