パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記 -12ページ目

パパが女(アリッサ)になったとき LA発LGBTトランスジェンダー家族日記

「タイランドのトムクルーズ」とママ友からもてはやされたイケメンパパがある日突然「MTF(トランスジェンダー女性)である」とカミングアウト。苦労や苦悩もあったけど、私たち家族は大丈夫。LAから体験記を発信してきます。

Hello from LA.
 
 
こんにちは。カリフォルニアでトランスジェンダーのパートナーと娘2人の家族4人で楽しく暮らす高山愛です。はじめてのかたはこちらからどうぞ。
 
 
 
はじめてのコスプレコンテスト。左のかたが最優秀賞を受賞しました。歌唱力抜群
 
 
 
「服を縫う女」こと、アリッサ。アリッサの手縫いのドレス。上手にできました。
 
 

「ないなら作る」はわたしの母、高山菊江の座右の銘。昔、高山家が貧乏をしていた頃、わたしや姉がほしがる物を、母は買わずに作ってくれました。不器用な母が作る、ちょっぴり不細工な手作り作品。うれし恥ずかし母の思い出。

 

さて、今回は「服を縫う女事件」の続き。

 

 

44歳にして、コスプレデビューを果たし、数々のコスプレイベントに参加。あげくの果てには初のコスプレコンテストに臨むことを決意したアリッサ。

 

アリッサが参加したのは、わたしたち家族の住むカリフォルニア州トーランス市で開催されたSuper Dimension Convention。これは日本のアニメ、「マクロス」に焦点を置いた、マクロスファンの、マクロスファンによる、マクロスファンのためのコアなアニメイベント。アリッサは「シェリル・ノーム」というキャラに変身することを決めました。

 

完璧主義者のアリッサ。シェリルになりきるためのコスチュームやアクセサリーをすべて揃えたものの、肝心のドレスがどうしても手にはいらない。そこで辿り付いた解決策:「ないなら作る」。

 

 

アリッサが「ドレスを作る」宣言をしたとき、わたしは鼓舞激励しました。我が家にはミシンもあるし、コスト削減になるし、「高山菊江に続け!」の素晴らしいアイデアだと思いました。

 

ところがどっこい、そうは問屋が下ろさない。アリッサが取った行動は、わたしに内緒で、娘たちが通っていた裁縫教室のりか先生にコンタクトを取り、りか先生にドレス作りの手伝いを依頼したこと。

 

 

「『パパからテキストがきて、ドレスを一緒に作ってほしい』ってお願いされましたけど」とりか先生からのテキスト。りか先生が最後にアリッサに会ったのは、カミングアウト以前。アリッサがまだパパだった頃のこと。

 

 

アリッサに「トランスジェンダーのこと、説明したの?」と聞くと「まだしてないけど、どうしよう?」とアリッサ。

 

 

「どうしようじゃないでしょ! 娘たちの気持ちも考えないでまた勝手なことして」と思いました。

 

この時期の娘たちは、アリッサのトランジションを受け入れ、応援してはいるものの、「できるなら自分の周囲の人たちには知らせたくない」。「知られたら恥ずかしい」というのが正直な気持ち。

 

アリッサの無神経さに、一瞬イラッとしたもの、カミングアウトから2年たち、わたしの肝はすっかり座っていました。

 

娘たちに承諾を得た後、りか先生にはわたしから事情をきちんと説明。

 

「だいじょうぶですよ、なんとなく気付いてましたから」とりか先生の優しいお言葉。

 

 

「やっぱり気付いてたんだ。まあ、これで一件落着」。

 

と、思いきや、それだけで事は終わらなかった。

 

 

コスチュームコンテストで競われるのは衣装だけじゃない。衣装以上に舞台でのパフォーマンスがものを言うのです。普段から内気で大人しいアリッサが次に出た行動は、娘たちのダンスの先生に連絡を取り、マクロスの挿入歌に合わせた振り付けの指導を依頼すること。

 

 

裁縫のりか先生とまったく同じパターン。ダンスのみゆき先生だって、アリッサのカミングアウトのことまったく知らない。みゆき先生はアリッサに一度も会った事すらないのに。

 

もう破れかぶれ。またまた娘たちの承諾を得て、ダンスのみゆき先生にも事情を説明。みゆき先生も 快く引き受けてくださり、お忙しいスケジュールの合間を縫って丁寧に指導してくださいました。

 

 

こうして臨んだ初のコスプレコスチュームコンテスト。入賞には至らなかったものの、アリッサは初舞台で堂々とつややかにシェリルになりきることができました。

 

「コスプレって、衣装だけじゃなく、キャラの気持ちになりきれるのが魅力。舞台役者と同じよね」とアリッサ。はい、よかった、よかった。よかったね。

 

 

服を縫う女事件。このストーリーでわたしが学んだ事。

 

1、コスプレはお金がかかる

 

2、コスプレコンテストに参加するのはもっとお金がかかる(衣装代プラス、先生がたへのお礼)

 

3、「ないなら作る」は時としてお金がかかる

 

4、娘たちは案外、アリッサのカミングアウトに対してオープンになりつつあるのかもしれない(「同世代のお友達に知られるのは恥ずかしい。けど、まわりの大人し知られるのはまあ、いっか」みたいな。

 

5、アリッサは能天気。

 

6、彼女にとってやはり、「約束は破るためにあるもの」。だって、カミングアウトしたときの約束、「無駄遣いしません」。すっかり忘れてるし。

 

次回はシリーズ第4弾、「チケットをねだる女事件」。カミングアウト約1年後の暗黒時代のお話です。

 

シェリルさん。シェリルを選んだ理由は「彼女の性格に惹かれたから」。
 
 
能天気の美人さん
 
 
 
別のイベントで、またシェリルに。この衣装は買いました。
 
 
なりきってるし。娘が撮影。
 

いつもブログを読んでくださってありがとうございます。わたしはこのブログを書籍化を目標にして、真剣に書いています。それは、トランスジェンダーの人たちと彼らが関わる人たちすべてに伝えたいメッセージがあるからです。このブログとほぼ同じ内容を下記のサイトにも掲載しています。「読んでよかった」ボタン押していただけたら本当にうれしいです。よろしくお願いします。

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タイの撫子七変化
 
 
 
 
 
 

今回は「女になっていくアリッサ」シリーズ、第3弾、「服を縫う女事件」

 

 

前回の「黒いパラソルの女事件」が起きたのはアリッサがカミングアウトした直後の頃。アリッサは晴れて女になれたことで有頂天。残された家族は、アリッサの変化について行けず、呆然としていた時期。暗く悲しいストーリーでした。

 

 

 

「服を縫う女事件」は2018年の秋のこと。アリッサのカミングアウトから2年の月日が経ち、わたしたち家族がアリッサの変化に順応し、アリッサも落ち着きを見せ、家族の雰囲気がなんとなくイイ感じになってきた頃のお話です。

 

 

 

男時代から、アリッサは熱しやすく冷めやすい人。ギター、淡水魚(と水槽)、プラモデル、車、日本人バンドの追っかけ、などなど、次から次へと新しい趣味を見つける。形から入る人なので、まず物を揃える。しかも最高レベルの物。必要であれば海外からも取り寄せる。しばらく熱中して、ある日突然飽きて投げ出す。その繰り返しでした。

 

カミングアウト後は、化粧とファッション。これは長続きしていて、今でも 毎日飽きずに、 動画や雑誌を見ては切磋琢磨。日々勉学に励んでいます。趣味の領域を超えて、「プロになっちゃうかも?」の勢いです。

 

 

そんなアリッサが去年の秋から夢中になっているのが、ずばりコスプレ。

 

アリッサがコスプレにはまったきっかけは、北米最大規模のアニメイベント、“Anime Expo”。日本人バンドのおっかけ仲間でアリッサのBFF 、(“Best Friend Forver”)のナネちゃんに誘われ、初参加しました。

 

 

アリッサの初コスチュームは漫画、「イニシャルD」に登場する佐藤真子。シルエイティを豪快に運転する普通の女の子。アメリカ人にとっては(日本人にもかな?)レアキャラです。

 

 

真子はストリートレーサー。アリッサも車大好きだから、自分と関わり合いのあるキャラになりたかったそうです。

 

真子のコスチュ−ムは普段着なので、娘たちの感想は「かわいい!」

わたしも「いいんでないの。低コストなとこがさらにいいね」といった感じでした。

 

 

こうして、アニメおたく、コスプレおたくの祭典、”Anime Expo”をきっかけにアリッサはコスプレにはまっていきます。

 

南カリフォルニアはアニメイベントの聖地。毎月どこかで、アニメ、漫画、コミック、コスプレに関するイベントが開催されています。凝り性のアリッサは一般参加者として参加することに満足できず、コスプレコンテストに参加することを決意しました。44歳にして、コスプレコンテストデビュー。

 

アメリカは自由の国。なんだってありよ。がんばって、アリッサ。でもね、コスプレってお金がかかるんだよね。

 

「服を縫う女事件」、続きは次回。

 

イニシャルD。アリッサの漫画コレクション、こっそり売り飛ばそうとしたらバレて怒られました。
 
 
 
佐藤真子だって。
 
\\
 
上の左の子が佐藤真子らしい。「コスプレは自分が楽しむ遊びだから、みんなが佐藤真子を知らなくてもいい」んだって。
誰も知らない超レアキャラ

 

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アリッサは昔、肉大好きでした。美味しそうに豪快に肉を食べる姿が大好きだった。

今はビーガン。ビーガンだけじゃないくて、ありとあらゆるダイエットにチャレンジしたがるから作る側は大変。

 

 

 

 

今晩は、インド風豆カレーと、

 

 

レンコンチップと、

 

子どもたちとわたしのハンバーグ。
 
 
 

1997年にオハイオ州の大学で知り合い、20年近く一緒に過ごしてきたアリッサ。かつてわたしを深く愛してくれた人。夫だった人。娘たちの父親だった人。このアリッサに憎悪に似た感情を抱いたことが3回あります。あの人を捻り潰して、トイレに流してバイバイしたいような憎しみの感情。

 

最初:クレジットカードの借金返済地獄に陥っていることを告白されたとき

2回目:Facebook で「今日から晴れて女になります」宣言したとき

3回目: 娘のサッカーの試合の日に、黒いパラソルで現れたとき

 

 

 

今回は「女になっていくアリッサシリーズ」第2弾、 「黒いパラソルの女事件」について書きます。

 

カミングアウト後、 日増しに女らしくなっていくアリッサ。ホルモン治療を開始後、2度目の思春期を迎え、神経過敏になり、自己主張が激しくなり、自己中心的になっていきます。

 

そんなある日、「黒いパラソルの女事件」は起きたのです。

 

 

我が家の娘たちはふたりともサッカーをしています。ふたりとも別のチームに所属しているため、シーズン中の土曜日は試合で忙しくなります。

 

その日は長女の試合が朝8時から、次女の試合が午後1時からありました。長女の集合時間が朝7時30分と早い時間だったので、まずわたしが長女を試合会場まで連れて行き、アリッサと次女が後から合流することになりました。

 

 

前半が終了し、プレイヤーたちが休憩を取っているとき、駐車場から黒いパラソルをさし、超ミニの黒のロリータドレスを着た厚化粧の女が試合会場に向かってなよなよと歩いてくるのが見えました。

 

 

わたしにはすぐにわかりました。休憩していた長女もすぐ気付きました。黒いパラソルの女の正体を。

 

長女の目から、涙がポロポロ落ちました。そして長女は言いました。「アリッサにわたしの近くに来ないように伝えて」。

 

 

 

試合開始の笛がなり、プレイヤーたちはフィールドに戻っていきました。

 

 

黒いパラソルの 女がサッカー会場に到着したとき、周囲に異様な空気が流れました。みなが黒いパラソルの女を凝視します。視線はしばらく凍って固まったように張り付いて、そして彼らは「はっ」と気付くのです。「見つめたらいけない」って。そしてさっと目をそらす。

 

他の親たちや次女の前で口論したくなかったので、わたしはそこでじっとこらえました。服装のことには触れず、「(長女の)タラが今日は近くに来ないでと言ってた」と伝えました。残酷なメッセージ。でも悪いのはアリッサ。

 

 

本当はアリッサを蹴り倒して、こう言いたかった。

 

 

 

「どうして、ドレスを着てるの?ファッションショーじゃなくて、あなたの娘のサッカーの試合なんだよ。他のママ見てごらん。みんなジーンズにTシャツだよ。ロリータドレス着て、歌舞伎役者みたいなメークして、パラソルさして、サッカーの試合見にくる親なんていないよ」

 

「プライベートで友達と遊びに行くなら好きな服着ていいよ。メークもモリモリ盛ったらいいじゃん。でもね、娘のサッカーの試合にどうしてわざわざロリータドレスで来るのさ?頭がおかしいんじゃないの?」

 

「タラのチームメートもチームメートのパパもママも、おじいちゃんもおばあちゃんもみーんないるんだよ。タラの気持ち、考えてみたらどうさ?もし、自分だったら、親が突然そんな格好でサッカーの試合にやってきたらどう思うのさ」

 

 

「家に帰って服着替えて出直してこいや!」と怒鳴りたかった。でもそれを飲み込んだ。

 

 

爆発寸前でしたが、帰りの車で何度も深呼吸して気持ちを落ち着けました。

 

 

帰宅後、アリッサに「前に約束したよね。家族で出掛けるとき、服装は常識をわきまえてって。お友達と遊びに行くときは好きな服を着ていいから、次回からは、ロリータドレス着ないでね。娘たちに恥ずかしい思いをさせたらかわいそうだよ。タラが涙流してたよ」と言いました。

 

 

「友達にテキストして意見を聞いてみる」と不服気なアリッサ。

 

しばらくして、アリッサがわたしのもとに来てこういいました。

 

 

「ママ友に(多分わたしの英語のママ友)に相談したら、『次からは子供たちにその日来ていく服を相談して確認したほうがよいかも』と言われたから、次からはそうする」。

 

アリッサはまだ不満気な顔。

 

 

「次回から行動を改めるなら、それでよし」と思いました。

 

 

が、しかし、話はここで終わらなかった。

 

 

その日の夕食の席でアリッサは「みなで話したいことがある」と言い、こう切り出しました。

 

 

「わたしは、自分の好きな服を好きなときに着る権利があると信じてる。みんなはどう思う?」

 

わたし:「えっ???その話はもう解決したんじゃなかったの?」

 

 

アリッサ:「どうしても納得いかなかったからトランスジェンダーの友達に意見を聞いたら、みんなが『ロリータでもコスプレでも、アリッサが好きなときに好きな服を着るべき』と言っている。自分の親のことを恥ずかしいと思うことが間違い。どんな服装をしていても親のことを尊敬すべき」。

 

 

アリッサは、理想郷に住むプリセンス 。自分の権利ばかり主張して、 みんなが自分の意見 を受け入れるべきだと信じてる、哀れなプリンセス。

 

 

 

娘たちの立場になって物を考えることができなくなったアリッサ。わたしたちはたくさん妥協しているのに、自分はちっとも妥協したくない。親だったら、子供を悲しませないよう、最大限の努力をするべきなのに。

 

「アリッサは一時期、心の穴を埋めるように買い物に狂い、カミングアウトして、心の穴をきれいに埋め、そして今度はわたしや子供たちの心にドリルでガンガン穴を掘って、いい気分に浸ってるんだ」と思いました。悲しみでいっぱいになりました。

 

 

長女が「この話は今はしたくない。アリッサには悪いけど、今日はイヤな思いをした。もうサッカーのときにあんな格好で来ないでほしい」と正直な気持ちを伝えたとき、アリッサはシュンと小さくなりました。

 

 

アリッサの気持ちが今ならわかる。以前に書いたFacebook憤激事件とまったく同じパターン。アリッサは自分のロリータドレスのせいで長女がつらい思いをするとは露ほどにも思わなかった。ただ、新しいドレスに胸を膨らませ、 みなにお披露目したかっただけ。ドレスに身を包んだ自分を「かわいいっ」って褒めてほしかっただけ。

 

それなのに、パートナーには説教されて、娘には拒絶されて、ショックだったんだね。意地張って、引っ込みつかなくなって、トランスジェンダーの仲間を身方につけて、反論したかったんだね。

 

 

今だったら、わたしは絶対平気だよ。アリッサがビキニでサッカーの試合に登場しても、「かわいいね、似合うよ」って褒めてあげられる自信がある。

 

でもね、FB憤激事件と同じ。あのときは、アリッサの気持ちをくんであげるだけの余裕がなく、ただただ腹立たしく悲しかった。

 

 

次回は「女になっていくアリッサシリーズ」、第三弾。「服を縫う女事件」。

 

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付け睫毛の練習に励んでたころ。今ではすっかりこなれたもの。
 
 
 

ガーリーなファッションが好きなんです。ずっと女になりたかったんだもんね、しょうがないね。

 

アメリカでは「ティーンエイジャーになると反抗期がやってくる」と言われます。

ティーンエイジャーとはティーンがつく年齢。つまり13歳(サーティーン)から19歳(ナインティーン)まで 。

 

 

ホルモン治療をはじめて、ホルモンのバランスが崩れたせいか、カミングアウト後の開放感のせいか、アリッサにも2度目の思春期と反抗期が訪れました。

 

(当時)42歳で迎える思春期と反抗期。優しく、控えめでおっとり。わたしの言うことを素直に聞いて、娘たちのことを第一に考えていた夫であり、父親であった人が少しずつ違う人間になっていく。初潮を迎えたティーンエイジャーのように変わっていくのです。わたしたち家族にとって、それは思い起こすと背筋が凍る「トワイライトゾーン体験」、もしくは「あなたの知らない世界体験」でした。

 

 

当時のわたしの目から見たアリッサの変化はこんな感じ。

1、涙もろく泣き虫になった

2、感情の揺れが激しく、すぐ悲しんだり落ち込んだり、怒ったりする

3、自己主張するようになった

4、自己中心的になった

5、一層頑固になった

6、理想郷に住むプリンセスになった (これは次回に説明します)

 

 

「家族の気持ちを顧みず、多くを犠牲にして、望んでカミングアウトして、好きなことしているのに、どうして、いつも浮かない顔をして、泣いたり怒ったりしてるのかな」とわたしはアリッサのことを理解できませんでした。今思い返すと、あれはホルモン治療の影響だったのだと思います。

 

 

カミングアウト直後に交わしたアリッサとの約束の1つは、「服装常識を考えて。家族に迷惑かけません」。

 

 

約束は破るためにあるとはよく言ったものですね。アリッサはわたしたちの交わした約束などすっかり忘れてしまったかのように、キュートでセクシーな服装選びに夢中になりました。

 

スキンケア、化粧、ヘア、服選びと、朝の準備にかける時間は2時間以上。娘たちと一緒に朝食を食べる時間を削ってまでも、「完璧な外観」を目指していました。

 

「仕事の邪魔になるから、職場ではスカートをはかない」と宣言していたくせに、スカートの丈はどんどん短くなり、ハイヒールのヒールはどんどん高くなり、度肝を抜くような濃い化粧をするようになりました。

 

娘のサッカーの試合の最中に、髪の毛をブラシでとかしたり、ペディキュアをしたり、メークをしたり、と大人の女性の常識から外れたことを平気な顔でするようになりました。これはまさしく、 はじめてボーイフレンドができて、化粧を覚えたばかりのティーンエイジャーの行動ですね。

 

あの頃のわたしは、悲しみに打ちひしがれ、どん底をさまよっていたので、約束破りのアリッサの行動に腹を立てる気力もなかった。変わっていくアリッさを傍観者のごとく、ただ呆然と見ていました。

 

 

そんな腑抜けになったわたしを奮い立たせる、ある怒りの事件が起りました。

 

忘れもしないあの事件、それをわたしは「黒いパラソルの女事件」と呼ぶ。

次回は「黒いパラソルの女事件」。身の毛もよだつ恐怖体験です。

 

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毎日たくさん薬とサプリメントを服薬。副作用が心配。
 

 

 

前回に引き続き、アリッさのホルモン治療のお話。

 

トランスジェンダーの人はホルモン治療を受けて、人生で2度目の思春期を迎える。

 

 

 

思春期を迎えるということは、体と心が子供を生み育てられるように変化していくということ。MTF(男性から女性へのトランスジェンダー)の場合、体は子供を作るための器官が発達し、女性らしく丸みを帯びていく。そして変化は外観だけでなく、心の状態にも現れます。

 

ホルモン治療の薬を取ることで、女性らしさを追求するアリッサにどんな変化が起きたのでしょうか?

 

 

1 胸が膨らむ。

個人差がありますが、胸のふくらみはまさしく思春期を迎えた女子のサイズ。2年ほどかけてゆっくり膨らむそうです。ただ、つぼみ止まりで、つぼみが開花するにはいたらない。もっと大きいおっぱいを望む人は豊胸手術を受ける。

乳がん早期発見のため、マモグラムテストを受けるようすすめる声もあるようですが、アリッサは専門医から「ホルモン治療開始後、2年たって胸がそれほど膨らまなければ、マモグラムテストを受ける必要なし」と言われています。

 

 

2 体毛が薄くなる

女性ホルモン、エストロゲンを増やす薬を飲むことで、顔以外の体毛が薄くなる。個人差はありますが、ひげは生え続けるため、永久脱毛する人もいるそう。アリッサは毎朝ひげ剃りをしていますが、ホルモン治療開始して2年以上経った今は、ひげがあまり生えなくなったと言います。

 

3 体が丸くなる

おしりや太ももなど、腰回りに脂肪がついて丸みをおびる。筋肉の量が減り、さらにがんばって運動しても筋肉がつきにくくなる。

 

 

4 性欲の減少

性欲が減るだけでなく、勃起すると痛みを感じる。勃起したときのサイズがホルモン治療の前より約半分になる(とアリッサが言ってます)

 

5 美肌効果

アリッサは男性時代から、スキンケアに余念がなく、ママ友から絶賛の声を浴びるほどの美しい肌の持ち主でしたが、ホルモン治療でさらに、つるつるのやわ肌を手にいれました。女性でも美肌効果を期待して、ホルモン治療を受ける人いますね。

 

ちなみに、ホルモン治療をしても声の高さは変わらない。なので、ボイストレーニングをして声を女らしくする訓練をする人も少なくないそうです。

 

上記の変化に加え、心にも変化が現れます。情緒不安定になって、怒りや悲しみの感情のコントロールができない。感受性が高くなる。反抗する、などなど。アリッサも情緒不安定でちょっとしたことで、ボロボロ泣いてました。

 

いろんなショックから立ち直れていなくて、わたしだってつらくて泣きたい気持ちでいっぱいだったのに、ホルモン治療開始後しばらくは、いつもアリッさの慰め係をしていたなあ。

 

今でもアリッサはホルモン治療を続けていますが、感情のコントロールができるようになって、だいぶ落ち着きました。

 

次回はホルモン治療の影響なのか、カミングアウトして開放感に浸っていたせいか、未だになぞだらけのアリッサの珍事件をシリーズで書いていきます。あのときはほんと、わけわからなかったなあ。つらかったなあ。でも、今ではよい思い出。

 


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今日は家族でハイキングに行きました。サンタモニカの近くにあるTemescal Canyonというとこです。
 
娘たち、ハイキングに行こうと誘うと最初はめんどくさがるんです。でも、いったん歩き出すと、大はしゃぎ。
 
 
 
 

 

お母ちゃんこと、高山愛もおおはしゃぎ。実は空を飛べるんです、あたし。

 

 

 

ヨガは好きだけど、ハイキング嫌いなアリッサ。日傘を持ってハイキングする人はアメリカではアリッサだけ。

 

 

今回はアリッサのホルモン治療について。

 

 

心は女性、体は男性だったアリッサ。カミングアウト直後から、外観を女らしくするための涙ぐましい努力の日々がはじまります。

 

極度の痛み恐怖症のアリッサは、性別適合手術を受ける予定は今のところありません。採血されただけで気を失ってしまうほどの怖がりであり、タイで整形外科医をしている父親から、手術のプロセスと危険性、手術後の痛みについての細かく説明を受けて以来 、手術をあきらめたようです。

 

アリッサのホルモン治療

まず、ホルモン治療を受けるには、トランスジェンダー専門のセラピストから「性同一性障害である」という診断書をもらう必要があります。

 

そして専門医選び。

 

アリッサはセラピストのケーシーのすすめに従って専門医を選びました。

 

ホルモン治療専門の医師には年に2回会いに行きます。処方箋をもらうのと、血液検査でホルモンのバランスを検査してもらうのが目的です。

 

医療費をカットするため、オンラインでホルモン剤を購入する人も多いそうですが、慎重派のアリッサは信頼できる専門医から定期診断をうけて、安心してホルモン治療をすすめていきたいようです。

 

ホルモ剤の取り方は、服薬、注射、パッチ、インプラントといろいろありますが、アリッサは一番ラクな服薬を選びました。

 

現在アリッサが服薬している薬は3種類。毎日たくさんのお薬飲んでます。

1.      女性ホルモン(エストロゲン)を増やすための薬

2.      男性ホルモン(テストステロン)の分泌を押さえる薬

3.      胸の発育を促進する薬

 

男性ホルモンの分泌を押さえる薬の副作用は内臓脂肪の増加。胸を大きくする薬の副作用は体重増加。薬の副作用で太ったアリッサは、服薬をはじめて半年後に医師と相談して、薬の料を半分にカットしました。

 

 

ホルモン治療を受けるということは2回目の思春期を迎えるということ。

 

次回はホルモン治療により起きたアリッサの体の変化についえ書きます。

 

娘たちよ。あなたたちだったら、太陽だって手にはいるよ。
 

 

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ばんこんは。
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今夜の9時30分。日曜日は終日お仕事で、帰宅してから、あれこれ家のことして、バタンキュー。
ブログ書く前に10分間居眠りしたので、今は元気いっぱい。
 
さてさて、今日はアリッサの性的指向について。難しいお題で文章にまとまりがないけど、堪忍ね。
 

"TRANSGENDER 101"

トランスジェンダーについて、何も知識がない人のためにわかりやすく説明した英語の本。この本読んで勉強してます。2年前はトランスジェンダーという言葉を聞くだけで、身震いして拒絶してたから、わたしも随分、あれだね。大人になったね。

 

 

 
 

アリッサとお友達のナネちゃん。アリッサもかわいいけど、ナネちゃんのかわいさは半端ないっす。
ナネちゃんはアリッサがトランスジェンダーだって知ってます。アリッサのごっつい手をみてすぐにわかったんだって。
 

 

 

アリッサがカミングアウトした後、よく聞かれた(今でも聞かれる)質問。

 

No. 1「子供たちはどういう反応したの」?

No.2「離婚はいつするの」?

No.3「アリッサにはボーイフレンドはいるの?」

 

以前も触れましたが、アリッサにはボーイフレンドはいません。アリッサは昔も今も男性にはまったく興味がないそうです。

 

「男性といると落ち着かない。昔から、男友達といてもそれほど楽しいと思わず、自分が浮いている気がして居心地悪かった。女友達とは、話が盛り上がって、一緒にいるのが楽しくて、いつまでも話をしていたかった」とアリッサ。

 

そういえば、ファミリードクター、歯医者さん、ヨガの先生、ヘアスタイリスト、などなど、アリッサは必ず女性を選んでいました。女性のほうが安心できるんだって。

 

 

(適合手術は受けていないものの)女になったアリッサの性的指向はレズビアン。「それじゃあアリッサと愛はレズビアンカップル?」と聞かれると答えはそうではないのです。

 

だってわたしは女性に興味ないもの。わたしはレズビアンじゃないし。

 

カミングアウトしたパートナーの性的指向に合わせて奥さん(またはガールフレンド)がレズビアンになるカップルもたくさんいるそうです。

 

でもわたしは同性愛者じゃない。男性にしか興味がない。

 

わたしたちの今の関係は中途半端。恋愛感情は、たぶんお互いもうないねえ。好きか嫌いかって言ったら、好きだなあ。法的には夫婦で、ふたりで一緒に子供たちを育てようと約束した仲良しの同居人って感じかなあ。

 

 

カミングアウトの前後から、アリッサはたくさんの女友達を作りました。ヨガを通して知り合った友達、コスプレフレンズ、ポールダンスの友達、好きなバンドのグルーピー。女友達とお出掛けしても嫉妬心はまったく感じません。「キャピキャピしててかわいいなあ」って思います。

 

 

アリッサは男性に興味がないと言うけど、ほんとかな?

 

だって、露出度満点の服を着て、プッシュアップのブラのなかにさらにシリコンブラして、すいカップ状態だし。「男性の視線を意識しているんじゃないの?」って意地悪く思うこともあります。

 

車をいじるのが趣味で(昔の話)、今でも、昔改造した男らしい車を乗ってるので、よく男性から声かけられるみたいだし。

 

 

将来、アリッサに好きな人ができたら、それでもよし。それが女性でも男性でも「お付き合いしてみたらいいんじゃない?」と思うのです。幸せになる選択をしてほしい。

 

でも、そういう話をまだアリッサにはしてません。そんなこと言ったら、アリッサを傷付けてしまう気がして。微妙な関係のわたしとアリッサ。

 

 

今日のブログはまとまりないなあ。

次回はアリッサのお薬について。女性ホルモンを増やすお薬を毎日飲んでます。

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アリッサの友達。じゃなくてかつら。
 
 

ギラギラしたメークが好きみたい。ナイトクラブ系だって。
 
 

アリッサのカミングアウトに対する周囲の反応を書いてきましたが、今日は最終編、ずばり「その他大勢の反応」。

 

ご近所さん

毎日顔を会わせるお隣のフィリピン系アメリカ人の奥さんにだけ、カミングアウトの3ヶ月後くらいに直接話しをしました。奥さんは「愛がかわいそう」と言って泣きました。わたしが一番嫌いなタイプの反応。

 

その日から、今までほとんど口をきいたことのなかった彼女のご主人が、顔を合わせるたびに話かけてくるようになりました。親切心からがんばって話かけてくれるのがわかったけれど「うざい、ほっといてくれ」と思いました。同情されてひねくれるダメ人間のわたし。

 

 

娘の学校の校長先生と担任の先生

「何かあったときに備えて」娘たちの新学期の最初の日にアリッサが校長先生に直接報告 。校長先生は「この学校にはレズビアンカップルもゲイカップルも何組かいるから心配する必要なし。ヘルプが必要なときはいつでも気軽に声をかけて」と言いました。

 

娘たちの担任の先生には、教師と親の個別面談のときに話をしました。本当のことを言うと、面談のときにアリッサに来てほしくなかった。面談の日程を隠しておいて、1人で面談に行こうと思っていたのに、アリッサにばれてしまい結局三者面談に。

 

 

お互い仕事があったので、教室で待ち合わせしたら、アリッサったら、めちゃくちゃ濃いメーク。普段よりさらに女っぽい格好で出現。先生も「ぎょっ」とするくらいの濃いメーク。わたしはその場から逃げ出してしまいたかった。新しい担任の先生に自己紹介するときに、アリッサのことをなんと言って紹介したらよいかわからなかった。校長先生からすでに担任の先生には話が伝わっていたのかな。

 

わたし:「タラの母親の愛です」

 

担任の先生:「この人はどなた?」

 

アリッサは嬉々として、自分が数ヶ月前にカミングアウトしたトランスジェンダーであること、こどもたちはうまく適応して、父親のトランジションを祝福し、サポートしていることを説明。

 

なにごともなかったかのように面談が終わり、アリッサに続き、部屋を出ようとするわたしに担任の先生が「愛、あなたはだいじょうぶ?」。

ここでわたしは泣く。涙が滝のように溢れて、気違いみたいに泣きました。同情なんかいらないのに、また同情された。わたしはひねくれ者のいじけ虫、またくやし泣き。

 

 

マッサージのクライエント

わたしの職業はマッサージセラピストです。スポーツジムのなかにあるスパでマッサージをしています。マッサージの最中は心がほどけて、する側もされる側もお互いオープンになることが多々あります。 日本語を話さないし、共通の知り合いもいない。だからなおさら話しやすい。わたしがアリッサの話をすると、相手も、自分の秘密を打ち明けてくれる。「夫がDV」だとか、「アル中」だとか。「夫に内緒でたくさんの男性とデートしている」などなど。胸の内をお互いさらけだして、クライエントとはさらに深いレベルで繋がれるようになりました。

 

 

次回はアリッサの性的指向について。アリッサがカミングアウトした後、一番良く聞かれた質問。「アリッサにはボーイフレンドがいるの?」

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こんにちは。カリフォルニアでトランスジェンダーのパートナーと娘ふたりと、家族4人で楽しく暮らす高山愛です。はじめてのかたはこちらをどうぞ。
 
 
 
例えば、娘が成長して「自分はレズビアンだ」とか、「トランスジェンダーだ」とカミングアウトしても、あたしはビクともしないよ。アリッサのお父さんのように「あなたの人生だから、あなたの好きなように生きなさい」って言うと思う。
 
 

 

 

 

アリッサのカミングアウトに双方の親はどんな反応を見せたのでしょう。

 

実を言うとわたしの両親にはまだ伝えていません。高齢の両親に余計な心配をさせたくなかったので、「あえて伝える必要はなし」と独断で決めました。

 

2歳年上の姉にはカミングアウトのその日に電話で伝えました。

姉は「ドラマみたいだね」と言っただけで、それほど驚いた様子を見せませんでした。

 

 

家族揃って日本へ帰国したのは2017年の4月。カミングアウトの約1年後のことでした。アリッサには「両親に会う日だけはノーメーク&ジーンズで」と懇願し、なんとかやり過ごしました。

 

猫アレルギー持ちのアリッサ。栃木の実家で猫を飼っているため、帰国の際は群馬の姉家族宅に世話になり、両親は栃木から姉宅に合流します。

 

母:「エイタスさん、なんか変わったね」

 

わたし:「ヨガ、がんばってるからね」

 

母は納得いかない顔をしていました。でも知らないほうが幸せなこともある。

 

 

今、アリッサの外観は完全に女性で、本人も中性的な格好は絶対したくないと思います。なので、今度日本に帰国するときは、事前に両親に伝えなければと覚悟を決めています。

 

でも、うちの両親は受け入れてくれるはず 。

 

きっと「愛さえ、だいじょうぶなら、それでいいんじゃない」。そんなふうに軽く流して(ほんとうは、こころの中でわたしのことを心配すると思うけど)、わたしたち家族を応援してくれると思うのです。

 

 

問題は義理の両親。

 

以前にも書きましたが、義理の両親はわたしたちの結婚に大反対でした。特にお義母さんが。長男にタイの良家のお嬢様と結婚してほしかったのです。

 

結婚後しばらく氷河期が続きますが、長女が生まれた頃から、わたしたちの関係は雪解け期にはいります。お互い歩みよるようになり、「両親が日本とタイに2組いるのはありがたいな」と思えるようになっていたのに、まさかのカミングアウト。

 

義理の両親は年に2回、かわいい孫とかわいい息子に会いにタイからはるばるやってきます。

 

カミングアウトから約4ヶ月後の9月、タイから義理の両親が到着したその日に、アリッサが事実を伝えました。

 

 

アリッサは母親との絆が強く、厳格な父親に対しては畏怖の念を抱いていました。

母は自分を温かく受け入れて、父親が拒絶すると予想していたようです。

 

 

実際はその逆でした。

 

義理の父は「自分の人生なのだから、自分が好きなように生きなさい。あなたの決意がなにであったとしても、父親だから、あなたをいつでもサポートする。ただし家族につらい思いをさせてはいけない」と言ったそうです。

 

 

あのときの義理の母のことを想うと今でも胸が痛みます。義理の母はアリッサを溺愛していました。

 

義理の母はアリッサの言いぶんをはなから受け付けず、「カウンセラーに入れ知恵されただけだ」と言い張りました。義理の母の顔は怒りで燃えあがり、真っ赤になったあと、今度は青白くかわり、そして彼女はさめざめと泣きました。わたしは義理の母の気持ちが痛いほどわかりました。信じたくなかったのです。

 

その夜、義理の母はわたしにこう言いました。

「エイタス(アリッサ)が女性のような格好をしたら、『そんな格好をするなら離婚する』と言って脅かしなさい」。

 

義理の母を不憫に思いました。

 

義理の両親の滞在期間は男性のような格好をしていたけど 、その頃、アリッサはすでに、家にいても、仕事へ行くときも、お出かけのときも超ミニスカートをはいて、ロングブーツはいて、ばっちり化粧していました。何も知らないかわいそうな義理の母。

 
 

義理の両親がタイに帰った数週間後のこと。アリッサのFBを見たミシガン州に住むいとこが、アリッサのカミングアウトの件を彼の母親に伝えてしまい、噂は親戚中に広まってしまいます。義理の母は隠しておきたかったはず。

 

年に2回は必ず遊びに来ていた義理の両親ですが、去年は一度もわたしたちに会いに来ませんでした。

 

義理の母との関係をどう修復していくかは、わたしたち家族の今後の課題のひとつです。

 

次回はその他大勢の反応

 

おまけ…
 

邦題は「メタルヘッド」。2011年の作品で、妻(母)を交通事故で亡くした父親と息子の悲しみを描いた映画です。
ブラックコメディーと言われてるけど、コメディーじゃないと思う。最後のほうにジョセフ・ゴードン・レブィット扮するヘッシャーがこう言うんです。
 
「俺は昔、事故でたまきんをひとつ失った。たまきんを失って、怒りで狂ったように大暴れした。でも気がついたんだ。もう片方のたまきんがあるし、棒だってちゃんとある。たまきんひとつしかなくてもちゃんとセックスできるんだ。おまえたちは母ちゃん
が死んで、壊れちゃって、でくの棒みたいなダメ人間になったけど、母ちゃんいなくても、家族がいるだろう。ふたりでなんとかやってけるだろう」(高山愛のはちゃめちゃ訳)。我が家はね、たまきん父ちゃんがいなくなったけど、アリッサがいるし。なんとかやっていける。ちなみに、Hesherって、80年代の音楽(ロック、ヘビメタ)とかファッションにこだわるロングヘアーの男性の通称なんですって。
 

Hello from LA

 
こんにちは。南カリフォルニアでトランスジェンダーのパートナーと娘ふたりの家族4人で楽しく暮らしてる高山愛です。
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20年前、新婚時代。幸せ太りですね、左のひと。ずっとこの人が親友だった。
 
 
同じく新婚時代、共通のおともだちと。
 
 

今日は周囲の反応、友人編

 

幼い頃からわたしは1人で行動がするのが好きで、1人でいてもあまり寂しいと思ったことがあまりなかった。

 

天然ボケ、本物ボケ、宇宙人、電波系、不思議ちゃん、KYとまわりからよばれ、そう呼ばれるのが非常に不快だった時代もあるのですが、もがいてがんばっても、やっぱりそう呼ばれるので、自分は他のみんなとちょっと違うのだなと受け入れるようになりました。受け入れたらラクチンになって、友達をがんばって作る努力をしなくなりました。できればよし、できなくても全然オッケーみたいな。

 

オハイオ州の大学時代にアリッサと出会ってからは、アリッサが恋人/親友で、アリッサに思っていることすべてを打ち明けて、どんなにわたしが悪くても、受け止めてくれるから、安心してなんでも話すことができて、アリッサといると心地よくて、「アリッサさえいれば友達とか別にいらねーや」って思っていました。

 

2人目が生まれて夫婦仲は冷めていき、アリッサの口数はどんどん減っていったけど、それでもわたしは自分の抱えることはすべてアリッサに相談していました。女子会と称して友人と会って楽しい時間を過ごしても、家に帰ってアリッサと話をするとすごくホっとしました。

 

 

アリッサがカミングアウトしたときにわかったことがあります。それは「究極の窮地に落ちいったとき、自分の胸の内を吐き出してしまえる人。それがわたしの友人」だということ。

 

少ないながらも、わたしにも友人がいて、カミングアウトの後、アリッサのことを 打ち明けました。遠くに住んでる友人にはメールやテキストで。近くの友人には直接会って。友人の胸をかりて、子供みたいに号泣しました。

 

友人に愚痴を吐き、不平不満を言って 、怒りをぶつけ、心のなかのドロドロを全部さらけ出し「よしよし」って背中をさすって欲しかったのです 。

 

 

そのとき友人からもらったアドバイス。

 

 

友人A: 「まずは愛がトランスジェンダーについて本を読み、徹底的にリサーチして、知識を得ること」

 

友人B: 「子供たちがいじめられたり、鬱になったりする前に事前対策として、まず、愛がファミリーカウンセラーを見つけて、子供たちをどうやって守っていくか相談するべき。 愛がまずカウンセリングを受け、その後、子供たちも一緒にカウンセリングを受けるべき」

 

友人C(アリッサと共通の友人):「女になったアリッサを受け入れてあげること。愛がしっかりと受け止めてあげたら、子供たちも強くなれる」。

 

 

的を獲ていている。筋が通っている。すごいいいアドバイス。

 

ただ、あの時、わたしは壊れていて機能不全だったので、どのアドバイスも耳にはいりませんでした。すべきことがわかっていたのに、心も体もついていかなかった。

 

 

カミングアウトから約2年たち、なんとか立ち直ったときにやっと友人のアドバイスの重要さを痛感しました。あのときもっと早く友人のアドバイス通り行動しておけばよかった。そしたらもっと早く暗闇から脱出できて、家族を幸せにできてたかもしれないのにね。

 

号泣してダメになったわたしを、何も言わずに見守ってくれた友人のみなさん、あのときはありがとね。

 

わたしの立場で考えて、賢者のアドバイスをくれた友人のみなさん、あのときはありがとうございます。

 

まさしく「持つべきものは友」。「友達いなくてもへっちゃら」なんて、独りよがりにもほどがある。友に感謝。

 

 

次回は両親の反応です。

 

 
 
ブログの内容とまったく関係ないのですが、近所の韓国マーケットで韓流黒豆納豆があったので、初挑戦。臭みがまったくなく、黒豆の歯ごたえ抜群。これはいける。