あるところに、こめんぶくという女の子がいました。
新しい母さんは、あわんぶくばかりかわいがります。
そのうち父さんも亡くなりました。
新しい母さんが、どんなにこめんぶくをぞんざいに扱ったか、ご想像の通り。
こめんぶくとあわんぶくは「山で栗を拾って来い」と母さんに言いつけられます。
こめんぶくの袋には、わざと穴が開けてありました。
拾った栗は、みんな穴から落ちてします。
あわんぶくは、それを拾って、袋をいっぱいにすると、ひとりでさっさと帰ってしまいました。
道に迷ったこめんぶくは、山んばの家に着き、一晩泊めてもらうことにします。
山んばに言われるままに、こめんぶくは、山んばの頭のしらみを取ってやりました。
しらみだけでなく、蛇やむかでも、頭の中にいましたが、こめんぶくは全部すっかり取ってやりました。
感心した山んばは、こめんぶくに宝の小箱をくれました。
開けて、山んばの名前を呼ぶと、願い事がかなうそうです。
やがてお祭りの日がきました。
母さんとあわんぶくは、いい着物をきて、出かけていきます。
取り残されたあわんぶくは、宝の小箱を開けて「山んばさま、いいきもの くろ」と唱えます。
すると目の覚めるような美しい着物が出てくるではありませんか。
そこへ山んばもやってきて、みずから黒塗りの漆の下駄をはかせてくれました。
お祭りへ行くと、こめんぶくのあまりの美しさに、みなうっとり。
「どこの ひめさまだ」と話題をさらいます。
長者さまのわこさまも、こめんぶくの虜になり、桟敷に上がらせると、酒や果物を振る舞うのでした。
祭りの終わる時間が迫ってきました。
母さんより早く帰らねば、とこめんぶくは馬に飛び乗るや、風のように家へ走り去ります。
そのとき、ほろりと落ちた下駄。
まさかこの下駄に合う足の人を探して、お嫁さんにするんじゃないよね? と思ったら、そのまさかなのでした。
和製シンデレラのお話。
しかし、こめんぶくとあわんぶくが、人の名前だって、思いつきました?