ある村に3人のお百姓さんが住んでいました。
この3人は、いつも取り越し苦労ばかりしています。
なんでも悪い方へ悪い方へと考えては、愚痴ばかりこぼしているんです。
めんどりがまだらの卵を産めば、これきりもう卵を産まなくなる→悪いことの前触れ→鶏小屋が家事になる→畑を売らねばなるまいて。
牛が蹴った牛乳桶が自分の足に当って怪我をすれば、明日には腫れ上がる→何週間も足をひきずる→何ヶ月も寝たきりになる→畑を売らねばなるまいて。
馬が芥子菜を食べてお腹を下せば、馬は病気になって何週間も寝込む→死んだも同然→百姓仕事はあがったり→畑を売らねばなるまいて。
おかみさんたちは、ばかばかしい、と一笑に付しますが、夫たちがあんまりうじうじしているので、対策を練ろうと三人集まります。
かくなる上は、山を降りて、先生の知恵を拝借しよう。
先生は話を聞くと、こう言いました。
「旦那たちより、もっと懸命に心配するのだ」「向こうが泣いたらもっと激しく泣き、向こうがうめいたらもっと長くうめき、向こうがわめいたらもっと大声でわめいてやるのだ。もしも旦那が恐ろしいことが起こると言うなら、それも信じてやることだ」
三人の奥さんたちは、旦那さんのいうことを真に受けたふりをして、さっそく畑を売りに出します。
畑を買おうと、人々がぞろぞろとやってきました。
旦那さんたちは、「うちの畑は売り物じゃないぞ」とびっくり仰天。
自分たちの取り越し苦労を棚にあげ、「みなさんもよくご存知の通り、おんなというやつはくよくよと取り越し苦労ばかりするもので」「俺たちは畑を売る気などもとよりなかった」と、集まった人たちに帰ってもらいました。
それからは、もうくよくよせず、畑仕事に精を出しているそうです。