私は家賃がそこそこ安いマンションに住んでいる。
埼玉県の田舎なので、安い割には部屋は広い。
そのマンションの一室を生き物部屋とし、私の生活空間と区別しているが、たまに生き物部屋に布団を敷き寝ることがある。
四月に入って間もない頃、生き物部屋で寝ていると、何やらガリガリと音がした。
ヒキガエルが発する物音は、キュッキュッか、バチャンなので、何かを擦る音は別の何かが発していることになる。
私は、「うるせーな」と呟き、部屋の電気を点けると、ヒョウモントカゲモドキのアルテミスが、ケージの扉によじ登っていた。
彼女は夜行性なので、夜は活発に動き回る。
「お前、何やってんの」と問うても、何も返答は無かったが、何となく気まずい空気になった。
子供が夜にいたずらをしているのを目撃した親の気分になった。
下方を見ると、後ろ足の爪と、太い尻尾でバランスを取っているようだった。
ガリガリと言う物音は、この爪から発せられているようである。
運動神経ゼロのアルテミスだが、夜は運動能力が向上するようだ。
その後、彼女はストンと床へ落ちると、何事も無かったかのように、家へ帰って行った。
普段は交わらない昼行性と夜行性の対面であった。
何とも言えない気分になったが、私も消灯し、布団へ戻った。
この記事を書いている今日は、令和初日である。
初日から爬虫類の記事を書いている私は、やはり変人であろう。