悲壮感漂うヒキガエル | 爬虫類ブレイク

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前回の三つ巴の風呂の続きである。

この小さいプラスチック容器の風呂を新調しようというところで終わっていた。

 

今回はサボらず、きちんと改装した。

タッパーは百均で購入した二個セットのものである。

私は使命を果たし、満足気にベッドへ向かったのだった。

何かを忘れているような気もしたが、特に気にしなかった。

 

【翌日】

朝起きて生き物部屋へ様子を見に行くと、風呂はひっくり返ってはいなかったが、キッチンペーパーがボロボロにされていた。

そう、私は風呂を新調したところで満足してしまい、保温の件を忘れていたのだった。

前回の記事では、保温も課題の一つとして挙げていたのだが、たった一日で綺麗に記憶から抜け落ちていた。

 

ヒキガエルは気温が寒くなると、床材に潜り込もうとする為、写真のようにボロボロになってしまうのである。

そして、何故か隅っこでうずくまる。

これは、人間でも同じ行動に出るかもしれない。

 

右の茶色いカエルが、ミヤコヒキガエルのマグマ、左が二ホンヒキガエルの冬将軍、上の方でタッパーに入っているのはヤマヒキガエルの蘇芳(スオウ)である。

 

冬の日本海を眺めているような、悲壮感漂う二匹であった。

ボロボロになったキッチンペーパーが雪を彷彿とさせる。

恒温動物の人間にとっては快適な温度でも、変温動物の彼らにとっては寒いのだろう。

 

ただ、申し訳ないが、これから私は出勤せねばならない。

日本原産のカエルなのだから、この程度の寒さ(室温約20度)で死ぬことはなかろう。

「んじゃ、行ってくるぜ」と声を掛け、私は部屋を出た。

 

【帰宅・夜】

残業を程ほどにして切り上げ、帰り道にほっともっとへ寄り、弁当を購入した。

テンションが上がるステーキ重を片手に、ウキウキしながら帰路についたのであった。

帰宅し、生き物部屋へ様子を見に行くと、今朝うずくまっていた冬将軍とマグマは復活し、風呂へ入っていた。

かえって水の中の方が温かいこともあるのかもしれない。

そして、またしてもマグマは冬将軍に踏まれているようだ。

マグマには「踏み台キング」の称号を与えよう。

 

ところで、蘇芳の姿が見えないが、どこにいるのだろうか。

 

彼女は隅っこで息絶えていた。

「・・って、おい!」

私は、ガラス面をコンコンとまあまあ激し目にノックした。

 

彼女は、ハッと目を開けた。

縁起でもないが、「おい!眠るんじゃない!眠ると死ぬぞ!!」と言う風な、よくあるシーンを彷彿とさせた。

寒いのか空腹なのか、よく分からないが、何かしらのダメージを負っているようだ。

 

しかし、私はこれから、ほっともっとで購入した弁当を食べて、シャワーを浴びなくてはならなかった。

寒そうなカエル達に合掌し、私は生き物部屋を後にしたのだった。

 

【入浴後】

風呂から戻ると、いつもの場所に、マグマがうずくまっていた。

吹き出してしまいそうな滑稽な後ろ姿だが、哀愁が漂っていた。

 

・・・・。

 

潤んだ瞳で、切なげに、しかし恨みを込めたような視線を私に向けていた。

ふるふるふるふる・・と言う擬音が聴こえそうなカットである。

今月いっぱいくらいは、無保温で過ごしたかったが、カエル達の圧に負けた。

仕方ない、パネルヒーターを起動させよう。

しかし、床に敷くと以前のように火傷をする可能性がある。

 

考えた結果、床ではなく天井にパネルヒーターを置いてみた。

過去の記事で、パネルヒーターは密着させなくても、ある程度の効果を発揮することを書いた。

このように、天井に敷くだけでも、ケージ内は温かくなるはずだ。

 

カエル達の視点だと、このように映る。

果たして効果はあるだろうか。

ケージ内に温度計を設置し、検証してみようと思う。

 

何故か、整列している三匹。

コミカルながら、どこかシュールな光景である。

 

「寒いんや」

「外は冬かいな」

「エアコン点けへんのかいな」

「電気代ケチってるやんけ」

「両生類は温かいものが食べられへんねん、体温上がらへん」

「旦那は阿呆かいな」

 

このように、会話でもしているのだろうか。

取り敢えず、このまま数日様子を見よう。