アントニオ・ナハーロ舞踊団「ケレンシア」鑑賞 | 野村眞里子のブログ <オラ・デル・テ>

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7月6日(土)、アントニオ・ナハーロ舞踊団のBプログラム「QUERENCIAケレンシア」を拝見するため、17時に渋谷区総合文化センター大和田さくらホールに向かった。ところが、落雷の影響で乗っていた井の頭線が急停車。遅刻かと思ったが、なんとか開演時間ギリギリに会場に到着することができた。

 

 

 

 

 

公演の詳細とプログラム順は下記。

 

『アントニオ・ナハーロ舞踊団2024年日本公演』

Aプログラム「ALENTOアレント」

Bプログラム「QUERENCIAケレンシア」

7/5(金)19:00 Aプログラム さくらホール

7/6(土)13:00 Aプログラム さくらホール

7/6(土)17:00 Bプログラム さくらホール

7/7(日)13:00 Bプログラム さくらホール

7/9(火)17:00 Bプログラム 小田原三の丸ホール大ホール

 

「QUERENCIAケレンシア」

振付:アントニオ・ナハーロ

作曲:モイセス・サンチェス

照明デザイン:パウ・フジャーナ

衣裳デザイン:ヤイサ・ピニージョス

 

出演 

※会場に出演者名を伝えるQRコードがありましたが、ロビーが大混乱で読み取れなかったため、プログラムを参考にさせていただきました。また、「ミュージシャン」とそれ以外の方に分かれていましたが、「ソリスト」の間違いではないかと判断しました。

ソリスト:セリア・ニャクレ、リディア・ゴメス、ダニエル・ラモス

アレハンドラ・デ・カストロ、エバ・ヒメネス、クリスティーナ・カルネロ、マリア・フェルナンデス、アレハンドロ・ララ、ハビエル・モレノ、エタン・ソリアーノ、アルバロ・ブリト、アルバロ・マドリード

 

●情景1

エバ・ヒメネス、マリア・フェルナンデス、セリア・ニャクレ、アレハンドラ・デ・カストロ、ハビエル・モレノ、アレハンドロ・ララ、アルバロ・ブリト、エタン・ソリアーノ

 

●情景2

アルバロ・マドリード、リディア・ゴメス

 

●情景3

アレハンドラ・デ・カストロ、クリスティーナ・カルネロ、エバ・ヒメネス、リディア・ゴメス、マリア・フェルナンデス、エタン・ソリアーノ、アルバロ・ブリト、ハビエル・モレノ、アレハンドロ・ララ、アルバロ・マドリード

 

●情景4

セリア・ニャクレ、ダニエル・ラモス

 

●情景5

クリスティーナ・カルネロ、エバ・ヒメネス、アレハンドラ・デ・カストロ、リディア・ゴメス、マリア・フェルナンデス

 

●情景6

ソリスト:ダニエル・ラモス

エタン・ソリアーノ、アレハンドロ・ララ、アルバロ・ブリト、アルバロ・マドリード

 

●情景7

リディア・ゴメス

 

●情景8

クリスティーナ・カルネロ、セリア・ニャクレ、マリア・フェルナンデス、ハビエル・モレノ、エタン・ソリアーノ、アルバロ・ブリト

 

●情景9

アレハンドラ・デ・カストロ

アルバロ・マドリード、アレハンドロ・ララ

 

●情景10

ダニエル・ラモス

 

●情景11

全員

 

※以下「ネタバレ」しますので、これから公演をご覧になる方はお気をつけください。私の記憶違いがあるかもしれませんので、間違いにお気づきの方はどうぞお知らせください。

 

「ケレンシア」は、生音ではなく、オーケストラによるオリジナル曲だ。赤い緞帳に映し出された「Querencia」の文字とノイズ系の音楽に期待が高まる。

 

情景1。緞帳が上がると、ダンサーが回転を始める。客席に向かって歩き始め、手を差し出す。冒頭のこの動きからして、もうかっこよくて、かっこよくて…ゆったりとしたブラッソ、カスタネット、黒とグレーの衣装、男性ダンサーの細いズボン。フォーメーションも次々変化し、美しくも楽しいシーンだった。

 

情景2。「ドドンドン」という花火あるいはパーカッションの音。光沢のある黒い柄のバタ・デ・コーラ姿の女性ダンサーが後ろ向きに立っている。弦(ハープ)の音色で前を向き、踊り始める。やがて男性ダンサーとのパレハに。古風で、ロマンチックでありながらも、男性ダンサーの回転の美しさや独特なバタの扱いにも圧倒された。

 

情景3。激しい音楽と「ゴボ(ステージに模様を作り出す照明効果)」が印象的なシーン。黄色い衣装の女性ダンサーと黒に黄色の差し色の入った衣装の男性が踊る。パルマの部分では「ゴボ」までも動いて踊るように見えるし、フィエスタのようなノリも加わり、さらにはくっついて一列に並んだ部分の振付もおしゃれだった。

 

情景4。2つの四角い照明の中、スペイン伝統の踊り、エスクエラ・ボレーラをバレエシューズとカスタネットで踊るシーン。ナハーロさんならではの構成・振付に一瞬たりとも目が離せない。跳躍の高さにも圧倒された。

 

情景5。管楽器(オーボエ?)の音色の響く中、シルエットでポーズをとるダンサーたち。明かりが入ると、ブルー、白、えんじ、紫、黄色のマントンを持った白い衣装の女性ダンサーが現れる。キューバ由来の「グアヒーラ」のイメージもあり、洗練された群舞に舞台が華やいだ。

 

情景6。表地が黒、裏生地がオレンジのカパ(マント)を翻して踊る男性ダンサーに釘付けになった。スペイン国立バレエ団でもカパの振付(注:マヌエル・デ・ファリャの「三角帽子」の「ファルーカ」)を何度も見たが、ナハーロさん振付のカパさばきも素晴らしい。途中カパを置いてからは、闘牛士の動き。帽子をかぶった4人の男性ダンサーの動きも素晴らしく、帽子を持って少し斜めに傾いたポーズが往年のフラメンコの男性舞踊手を連想させて、心ときめいた。

 

情景7。前のシーンがいったん暗転となり、再び明かりが入ると5人の男性ダンサーがその中に入る。上手からの「明かりの道」ができると、女性ダンサーが下手から登場。センターに進み、赤い衣装でシリアスなソロをフラメンコ的に踊った。

 

情景8。スペインの民族舞踊のイメージで作られたシーン。男性ダンサーの短めのマント、女性ダンサーの横縞の短いスカートが印象的だ。軽やかな動きが見ていて楽しい。カスタネットが次第に速くなり、最後はポーズで決めた。

 

情景9。鐘の音が響く。男性ダンサー2人がアバニコ、マンティージャ姿の女性ダンサーを担いで登場。前のシーンとは打って変わった荘厳なシーンで、セマナ・サンタ(聖週間)を連想させた。フォーメーションの変化が素晴らしい。最後のポーズも秀逸。

 

情景10。情景6でカパを使った踊りを踊った男性ダンサーのもう一つのソロ。裾の方にひらひらのついたシャツに黒い細身のズボン、動くたびにシャツの裾が揺れる。情景6とは違い、コンテンポラリー的な雰囲気のある振付だ。何度かスペインで拝見したことのあるダンサー。テクニックもさることながら、存在感もあって素晴らしかった。

 

情景11。あまりにも楽しいフィナーレ。フォーメーションの面白さ、躍動感に満ち溢れていて、大いに楽しんだ。

 

大きな拍手とスタンディングオベーション。写真はカーテンコールの1枚。この後、ナハーロさんはマイクを手に取ってお礼の言葉を述べた。

 

 

 

 

 

以前「アレント」は拝見したことがあったので、2022年にマドリードで初演された新生アントニオ・ナハーロ舞踊団の新作「ケレンシア」を拝見することにしたのだが、見終わってすべての点でナハーロさんの思いが詰まった作品だと感じた。

 

スペインの踊りというと、特に海外ではフラメンコを思い浮かべる方が多いかもしれない。でもナハーロさんは、スペイン舞踊には「エスクエラ・ボレーラ(古典舞踊)」「(スペイン各地の)民族舞踊」「フラメンコ」と、それらを融合した「ダンサ・エスティリサーダ」という4つの異なったスタイルがあるとし、「アレント」ではクラシック・バレエのテクニックや現代的なムーブメントなどと融合した、彼自身の真のスタイルであるダンサ・エスティリサーダを見せたかったという。

 

一方「ケレンシア」では、モダンなショーや様々なスタイルをブレンドしたオリジナル作品を作るという作風を一区切りし、スペイン舞踊の伝統と向き合おうとしたそうだ。とはいえ、モダンな照明、衣裳、振付によってショーアップされたものを観客にお見せしたかったという。

 

終演後、小島章司先生や伊藤笑苗さんとロビーでお会いした。小島先生は、「ナハーロの振付は本当にすごいですね。スピード感にあふれていて、僕の若い頃の振付とは全然違う。ソリストの男の子、僕のヘレスの公演にも出てくれたんですよ。上手になったなあ」と、嬉しそうに話していらした。

 

 

 

 

 

スペイン国立バレエ団の芸術監督時代と違い、ナハーロさんもロビーに出ていらしてお客様と歓談したり、いっしょに写真を撮ったりしていらした。私もプレゼント――青い紙袋に入れたジュエリーです!――をお渡してから、ツーショットを撮らせていただいた。お贈りしたスタンド花の前で。お花の写真は大森有起さん撮影。

 

 

 

 

 

 

手元にあるナハーロさんとの2枚をご紹介させてください。最初は、2013年2月6日にオーチャードホールの楽屋で、エルスール財団の機関誌「El Sur」第1号のためのインタビューのさいに撮っていただいたもの。撮影:渡辺亨

 

 

 

 

 

2枚目は、2015年11月21日にオーチャードホールの楽屋へ、お誕生日プレゼント持参でうかがった時のもの。ほかにもいろいろありますが、残念ながらすぐ見つかりませんでした。

 

 

 

 

 

フィギュアスケーター中田璃士(なかたりお)選手への振付のことなど、ナハーロさんにうかがいたいこともいろいろあったが、とにかくナハーロさんとお話ししたい方やいっしょにお写真を撮りたい方でロビーは大混雑だったので、伊藤さんと早々に会場を出た。そしてクリームソーダと生ビールで軽く乾杯。素晴らしかった公演の余韻を味わいながら、家路についた。