新藤凉子さんを偲ぶ会@アルカディア市ヶ谷 | 野村眞里子のブログ <オラ・デル・テ>

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昨日は、昨年10月7日に亡くなった詩人、新藤凉子さんを偲ぶ会が「アルカディア市ヶ谷」で行われ、故人を偲んで多くの方が出席された。

 

偲ぶ会は、「歴程」同人である夫で詩人の野村喜和夫が連絡係を務めた。でも、いつも「夢想」していて日常生活も普通には送れていない夫が、会場手配や事務などの作業をきちんとできるはずもない。この1~2ヶ月のあいだ、ハラハラとしながら見守った。

 

4月2日、私は3時間のフラメンコ教室を1時間に縮め、夫の代わりに買物をし、夫の支度を手伝うことにした。そして、すべて整えて出かけたはずの夫が、遺影を忘れてしまった! しかも忘れたことにも気づかないのだから、どうしようもない。あわてて追いかけて手渡し、さらに電車に置き忘れないように念を押し、ようやく送り出した。そして大慌てで自分の支度。フラメンコ教室を休んだにもかかわらず、結局私は10分遅刻してしまった。

 

「アルカディア市ヶ谷」6階「阿蘇」の間、13時開式。献花、野村喜和夫の開会のあいさつ、「歴程」発行人黒岩隆さんの弔辞、「歴程」同人川口晴美さんのスピーチ、思潮社編集部藤井一乃さんのスピーチ、川内村村長遠藤雄幸さんのスピーチ、詩人八木忠栄さんの新藤さんに捧げる俳句を井川博年さんが代読、「日本現代詩人会」会長八木幹夫さんの献杯……と続き、食事&歓談となった。遅れてきた私は献花をしていなかったため、八木さんの献杯の直前に祭壇に飛んで行って献花をさせていただいた。

 

 

 

 

 

 

「歴程」同人でも詩人でもない私が新藤さんの偲ぶ会に出席させていただいたのには、少々わけがある。もともと、学生時代から「歴程祭」には毎年うかがっていて、草野心平さんと手をつないでデュエットをしたこともある――心平さんのお孫さんとはフラメンコの舞踊団で同門だ――私だが、夫の第4回歴程新鋭賞授賞式では新藤さんとの忘れ得ぬ思い出があるのだ。

 

第4回歴程新鋭賞の授賞式は、第31回藤村記念歴程賞の授賞式と同時に行われた。私は受賞者の配偶者ということで、出席させていただくことになった。少し早めに会場に着くと、新藤凉子さんが紅白のリボンを配られていた。藤村記念歴程賞受賞者の岡本太郎さんの関係者の女性と葉紀甫さんの関係者の女性にリボンを手渡しながら、「つけてください」とおっしゃった。お二人は、そう言われるとすぐに胸にリボンをつけられた。

 

最後が私の番だった。やはり「つけてください」の一言だったので、私もお二人の真似をして胸につけた。すると、新藤さんが急に大笑いされて、女性詩人のT・TさんとT・Jさんを手招きして呼び、「ねー、ちょっと見て見て! この人ったら自分でリボンつけちゃったのよ~」

 

こうして「新藤さんの餌食」となりすっかり笑いものにされた私だが、ちょっとばかり言い訳させていただくなら、その年の藤村記念歴程賞の受賞者お二人は故人だったため出席がかなわなかったので、リボンを受け取った方がつけていたという事情があった。つまりそれを見て、私は受け取った人がつけるリボンだと思い込んでしまったのだ。さらに、新藤さんが「このリボンを野村君につけてください」とおっしゃらず省略形でおっしゃったことも「悲劇」を招いた。

 

いずれにしても、3人の詩人の方は大笑いされた。そして私の行動は、その後3~4年新藤さんの笑いのツボとなって、ことあるごとに「自分でリボンをつけちゃった奥さん」と紹介された。

 

でもこのことがあったためか、私は新藤さんにどうやら気に入っていただいたようで、電話で長話しをしたり、世界一周クルージング旅行に行かれた時には、わざわざ絹のパンツスーツをお土産に買って来てくださったりした。そして、エルスール財団記念館での「歴程」の会にはいつもたくさんのワインを差し入れてくださった。写真はお土産のパンツスーツ。

 

 

 

 

 

 

さて、偲ぶ会で私は大勢の方とお話させていただいた。料理もなかなか好評で、私はオードブル、料理、お蕎麦など三皿いただいた。司会進行をつとめた夫は、料理を取りに行くことが出来ないので、チーズと肉料理とワインを少しだけ運んだ。コロナ禍が続きこういう場がなかなか持てなかったが、新藤さんがみなさんを引き合わせてくださったようだ。6階の窓からは、市ヶ谷堀(注:皇居には二重の堀があるが、市ヶ谷堀はその外堀のひとつ)の桜が美しく見えた。

 

 

 

 

 

 

 

初対面での強烈な思い出があり、女性の私から見てもセクシーで、華やかで、さらに「姉御肌」だった新藤さんは、旅立たれてしまった。私の学生時代から続く「歴程」とのかかわりのなか、いつもまん中にいらした新藤さんの偲ぶ会は、とても華やいでいた。

 

新藤さん、どうぞ安らかに。また天国でお会いした時には、ぜひ思い出し笑いをしてください。合掌。