なぜを五回繰り返せ | 境目研究家@ありさん。

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【今日の良い言葉 982 (251)】
 

おはようございます。
今日も岡山、倉敷からの配信です。
 
 
昨日届いていた雑誌『致知』10月号を
読みました。
創刊記念号なので今回も読み応えが
ありました。
 
 
巻頭の対談が、
トヨタ自動車の張会長と
アサヒビールの福地相談役のもので
氣づきに溢れた素晴らしい対談でした。
 
 
今日の良い言葉は
その対談のシェアです。
 
大野耐一氏の「トヨタ生産方式」
何度も読み返しましたが、
実際の薫陶を受けた方のお話に
触れることができ、
『致知』に感謝致します。
 
 
それでは今日も一日、
愛と光と忍耐で
喜びに満ちた日となりますよう
お祈り申し上げます。
 
 
コメント楽しみにしております。
  

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なぜを五回繰り返せ
 
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【福地】 
張さんはお若い頃、どういう思いで
仕事に向き合っておられましたか。

【張】 
私は学生時代に剣道ばかりで
あまり勉強をしていなかったものですから
何事も経験と考えて、人が嫌がる仕事でも
進んで引き受けることを心掛けていました。
 
 
そうすると、どんどん自分のところに
仕事が集まってくるようになるんですね。
 
 
会社も急成長を遂げていましたから、
やることはいくらでもあって、
非常にやりがいがありました。
 
 
入社してからずっと総務や生産管理の
仕事を手掛けていたんですが、
七年くらい経って現場の改善部門に
異動することになりました。
 
 
大野耐一(たいいち)さんという常務が
「あいつを入れろ」と言ったらしいんです。
 
 
【福地】 
大野耐一さんといえば、
トヨタ生産方式を確立された有名な方ですね。
 
 
【張】 
はい。事務屋の私がそういう人の下で
現場の改善などできるわけない
と思いまして、
上司に断ってもらおうとしたんですが、
大野さんは「そんなことは関係ない」と
全然相手にしてくれなかったそうです。
 
 
結局それから十五年、
大野さんの下で仕事をしたわけですが、
いま考えると本当に掛け替えのない勉強を
させてもらったと感謝しています。
 
 
【福地】 
大野さんの下での仕事はいかがでしたか。
 
 
【張】 
あの時代の人というのは、
懇切丁寧に教えてくれませんからね。
 
 
「寝る間も惜しんで考えろ」
「必死になれば知恵は出る」
 
 
などと怒鳴られながら、
一所懸命自分で仕事を覚えるしか
ありませんでした。
 
 
そのうち、問題点を見つけるのは
事務屋も技術屋も関係ないことが
分かってきました。
 
 
実際に直す時には専門家を呼んで
やってもらえばいいわけですしね。
 
 
大野さんは随分怖がられていましたから、
周囲から
「よくあんなところで我慢できますね」と
言われたものです。
 
 
しかし大声で怒鳴られて
羽目板に突き飛ばされる剣道に比べれば、
会社では怒鳴られるだけで、
叩かれることも突き飛ばされることもないから、
大したことはないんです(笑)。
 
 
そんなことよりも、
トヨタ生産方式とも称される
多品種少量生産のものづくりを確立した
偉大な人の傍で仕事ができるというのは
何物にも替え難い貴重な機会でした。
 
 
大野さんがつくり上げられたのは、
産業革命で欧米が確立した
大量高速生産方式以来の画期的な
システムであって、
ノーベル賞にも値する業績だと言われる
学者の方もいらっしゃいます。
 
 
【福地】 
日本が世界に誇る生産システムですね。
 
 
【張】 
大野さんは豊田喜一郎さんの、
ジャスト・イン・タイムのものづくりを
開発せよ、三年でビッグ3に
追い付き追い越せという号令を受け、
最初はこんな理屈に合わないバカなことを
と総すかんを食らいながら、
歯を食いしばって己の信ずるところを
一つひとつ積み上げてきたわけです。
 
 
その生き方がすごく心に響くんですね。
 
 
私はその背中を見ては、
自分も負けちゃいかんなと
心を奮い立たせてきました。
 
 
【福地】 
大野さんの言葉で
特に印象に残っているものはありますか。

【張】 
最初に教わった
「なぜを五回繰り返せ」という言葉は、
私のビジネス人生を貫く指針となりました。
 
 
なぜこうなっているのかと
常に疑問を持て。
しかし一回の「なぜ」だけでは
中途半端になる。
 
 
なぜそうなったのかと
五回繰り返せば本当の原因が分かるぞと。
 
 
例えば、油圧不足で部品が不良になった。
 
 
その理由はネジが緩んで
油が漏れたためだとすると、
普通はネジを締めて終わりだと思うんですね。
 
 
ところが大野さんは
決してそこで終わらずに、
なぜ緩んだんだと。
 
 
機械が振動しているからですと言うと、
なぜ機械が振動するのだと
追求していくんです。
 
 
現象の裏には原因がある、
その原因の後ろに真因がある。
 
 
だから真因に辿(たど)り着くには
最低五回くらいのなぜを
繰り返さなければならないというわけです。
 
 
これは私が社長になってからも、
うるさいくらいに繰り返してきました。
 
 
製造現場の人間ばかりでなく、
全社員にそうやって
ものを考える癖を身につけさせたいと
考えたからです。
 
 
アメリカではトヨタの5Wは
全部「WHY?」だと言いました。
 
 
福地茂雄(アサヒビールホールディングス相談役)
張富士夫(トヨタ自動車名誉会長)
 
 
(月刊『致知』2014年10月号 特集「夢に挑む」より)