アタローの読書 -26ページ目

アタローの読書

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2016年12月の読書

Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)Rのつく月には気をつけよう (祥伝社文庫)感想
夏美、長江(揚子江)、熊さんの3人は大学時代からの飲み仲間。社会人になって何年も経つが3人は集まって飲んでいる。飲み会のルールは長江のワンルームで行い美味しいお酒とそれに合うツマミを用意すること、そして友人や知り合い同僚など1名をゲストに呼ぶ。楽しいひと時の中でゲストから披露される話からちょっとした謎を解く。その謎を解くのが悪魔的天才的な頭脳を持つ長江。どの短編もお酒とツマミがセットで登場するので楽しめる。タイトルのRのつく月は牡蠣を食べてもいいがそれ以外の月は牡蠣はダメという先人の知恵。
読了日:12月16日 著者:石持浅海
puzzle (祥伝社文庫)puzzle (祥伝社文庫)感想
周囲3キロ高い堤防に囲まれた中にはかつては数千人が住んでいた廃墟があった。無人のその島で死体が3体発見された。事故死とも自殺とも殺人ともつかない死体、謎を解くべく2人の検事が桟橋に降り立った。朽ち果てた廃墟の様子が別世界のようでそこを舞台に推理が繰り広げられる。検事で同期の春と志土の禅問答のような会話に伏線も張られている。廃墟は日常であったもののなれの果て、だから日常的と非日常的とは表裏一体で怪しくも危険なのは実をいうと日常的なものの中にあって気が付かないだけという何とも不条理。
読了日:12月17日 著者:恩田陸
密室蒐集家 (文春文庫)密室蒐集家 (文春文庫)感想
密室ある所に姿を現す密室蒐集家と名乗る謎の人物が真相を解明する短編集。見た目は30歳前後の好青年だが本名も正体も不明で何故か警察の上層部に顔が利き捜査に協力そして1937年の事件から2001年の事件にまで同じ年格好で現れる得体の知れない人物。警察の捜査情報と目撃者の証言を聞いただけで真相を解明してしまう奇妙な味わいがある。ミステリーとしては十分楽しめる作品。
読了日:12月18日 著者:大山誠一郎
古道具 中野商店 (新潮文庫)古道具 中野商店 (新潮文庫)感想
イケてなさそうなのに女を絶やさない店主の中野さん、ゲイジュツカの姉マサヨさん、骨董品店主で色っぽい恋人のサキ子さん、掴み所のないアルバイトのタケオ、一癖も二癖もある人々に囲まれ多少振り回されつつのんびりと日々働く主人公のヒトミ。章のタイトルにもなっている古道具が登場人物に負けないくらいの存在感を放っている。時間が止まったかのような古道具屋の日常がゆるやかに描かれていて不器用でじれったいヒトミとタケオの恋などしんみりと寂しいような気分になる古道具という妙な懐かしさを感じ埃っぽい匂いまで感じられそうな気がした
読了日:12月20日 著者:川上弘美
セイレーンの懺悔セイレーンの懺悔感想
立て続けに不祥事で番組存続の危機に晒されている帝都テレビのニュース番組アフタヌーンJAPAN。社会部の記者多香美とエース記者の里谷は番組の起死回生となるスクープを狙って葛飾区で発生した女子高生誘拐事件の真相を追う。警察を尾行していた多香美は廃工場で死体を発見それは暴行を受け無惨にも誘拐事件の被害者の遺体だった。彼女の同級生への取材からいじめを受けていたという証言を得、主犯格と思われる少女を突き止めるが取り返しのつかない大誤報を発してしまう。⬇︎
読了日:12月20日 著者:中山七里
蓮の数式蓮の数式感想
子供を産めない身体という事で義母や夫から人間として扱われない千穂。唯一の救いは自分がやっている算盤塾。千穂の夫が車で轢き千穂を身代わりにトンズラする、その轢いた相手が透という男。透は数字に弱い障害を持ち千穂が算盤を教える事で2人の関係が繋がっていく。そんな歪で不良品と呼ばれた2人は逃避行する。千穂と透の逃避行とそれを追いかける者の過去と現在。登場人物も皆どこか歪みがあり、そんな人間が交わる物語に夢中に読んだ。悲しいのだがその中に小さな希望が残る物語、心が揺さぶられた。
読了日:12月21日 著者:遠田潤子
下鴨アンティーク 雪花の約束 (集英社オレンジ文庫)下鴨アンティーク 雪花の約束 (集英社オレンジ文庫)感想
秋から初冬へ季節にぴったりの京都で鹿乃達の関係も段々と変化しているシリーズ5巻。途切れた赤い糸の意匠、一部だけ残し真っ赤に染め上げる紅葉柄、雪を降らせる着物と、その着物に関係する人達の誤解や後悔を解きほぐしてくれる。そしていわくつきの着物に携わる鹿乃と慧も変化が現れ。2人とも口にはしないが相手への想いがどんどん募っている。2人それぞれの想いが戸惑いながらも大事に温めてきたことも、慧の煮えきれなさも。まさか鹿乃が…。良い意味で次巻が楽しみ。良鷹視点の過去のエピソードも良かった。
読了日:12月22日 著者:白川紺子
謎の毒親謎の毒親感想
以前よく通った書店の壁新聞に打ち明けてみませんかというコーナーがあり幼い頃の親とのあれこれについて相談の手紙を書く。そして書店の文容堂から返事をもらうという形式でこの小説は進んでいく。こんな両親に育てられた子供の痛ましさがやりきれないほどリアルに響く。毒親と親を表現しているがこういう表現が出来るのは大人になってからで子供の頃は自分に落ち度があるのかと自分を責めたにちがいないそれがなお痛ましい。幼い子供にとって親は絶対的な存在。その両親が不可解で理不尽な言動を我が子に対してするのが謎でありミステリーだ。
読了日:12月22日 著者:姫野カオルコ
氷菓 (角川文庫)氷菓 (角川文庫)感想
廃部寸前の古典部に入ることになった何事もやる気が起きずやらなくていいことならやらない折木奉太郎。気楽にのんびり古典部ライフを送るつもりが古典部で千反田えると出会い好奇心旺盛な彼女に振り回されながら日常の謎を解決していく奉太郎。奉太郎の親友・福部里志、腐れ縁の伊原摩耶花も加わり古典部は4人となる。奉太郎が不本意ながら謎を解き明かし個性豊かなキャラクター達の掛け合いや言動ミステリーも楽しめる。
読了日:12月23日 著者:米澤穂信
難民調査官難民調査官感想
入国管理局の難民調査官の如月と高杉は不法滞在で摘発され難民申請を行うクルド人を調査する事に。合法的に入国するが入国方法、国籍を偽りその裏に隠された陰謀と難民調査官の如月に関わってくる。難民問題という定義などを知る事が出来この中に公安までもが関わってくる。誰が味方で敵なのか?難民の受け入れというのも非常に難しく。時事問題を取り入れながらの難民問題とても勉強になる1冊でもあり最後までぐいぐい読ませる作品でもあった。
読了日:12月24日 著者:下村敦史
X’mas Stories: 一年でいちばん奇跡が起きる日 (新潮文庫)X’mas Stories: 一年でいちばん奇跡が起きる日 (新潮文庫)感想
一年でいちばん奇跡が起きる日、6人の作家によるクリスマス・アンソロジー。朝井リョウさんの「逆算」はビジネスの話と出生とクリスマスの関係で「何者」の澤先輩の話でもあり面白かった。伊坂幸太郎さんの「一人では無理がある」はサンタさんと物流、そしてある間違いが幸いとなるのが面白い。三浦しをんさんの華やいだ東京の街にタイムスリップしてしまった武士というのも頼もしい。クリスマス気分を味わえてひねりの効いた話やほっこりする話と素敵だった。
読了日:12月24日 著者:朝井リョウ,あさのあつこ,伊坂幸太郎,恩田陸,白河三兎,三浦しをん
働く男 (文春文庫)働く男 (文春文庫)感想
雑誌連載していた映画やエッセイや自作曲解説そして又吉直樹氏との対談など。星野源の仕事が集められた一冊。複数の仕事をこなして働き続けていた頃の話が収録されていることもあり映画コラムのエッセイでは90歳でポックリ死ぬまでの完全な健康が欲しいと言っている。職業の枠に捕らわれず各方面で活躍している星野源だから言えるのかもしれないが私もやりたい事に何でも手を出してみたいと思った。どれも率直で笑いが散りばめられ楽しみながら読めた。
読了日:12月25日 著者:星野源
青の炎 (角川文庫)青の炎 (角川文庫)感想
高校1年の主人公の平和な我が家に突然乱入してきた母の前夫。彼のあまりに傍若無人なる振る舞いに母と妹を守る為完全犯罪による殺害を決意する。極限の心理状態の中でひたすら感情を押し殺し理性的に行動しようとする心境。大切に思っている人が傷つけられた時、殺人以外の方法でしか解決出来ないという彼の事を非難出来ない。主人公の一人称で語られ冷静にならうとしながら徐々に周りが見えなくなっていく。完全犯罪を企む主人公を描いた内容、湘南から鎌倉の情景の美しさが悲しさを際立たせているのが印象的だった。
読了日:12月26日 著者:貴志祐介
水晶の鼓動 警視庁殺人分析班 (講談社文庫)水晶の鼓動 警視庁殺人分析班 (講談社文庫)感想
真っ赤に彩られた殺害現場、犯人は何の為に部屋を赤く染め上げたのか。そして同じ頃起きた爆破事件、近くにいた塔子たちは現場へと急行する。爆発に遭遇した塔子は平常心を保てなくなる。強い人間でも拠り所を失ってしまうと弱くなる、それは犯人にも共通していたのかも。信じていた存在辛い状況でも手を差し伸べてくれる温かな存在それがすべて嘘だったら…。塔子がラストに語りかける言葉が犯人にも届けばと思う。再読だがまた新たな塔子の成長を感じることがら出来た。
読了日:12月27日 著者:麻見和史
愚者の毒 (祥伝社文庫)愚者の毒 (祥伝社文庫)感想
2015年の現代と30年前50年前とが交錯し物語は展開する。武蔵野の穏やかな暮らしと陰惨な事件。殺人という重大な犯罪を描いたミステリーだが2人の女性の心理描写のリアルさが凄い。障害を持ち意思疎通すらままならない幼子を抱えた葉子の辛さ、その甥を自分の手で育てるべきか手放すべきかと悩む心の揺れ。どうやっても這い上がれない希美の過去は辛く犯罪の動機には納得してしまう。閉じられた炭鉱とそこで働いていた人達の暮らしのどん底の悲惨さは高度成長期の日本の闇を容赦なく抉り出されている。⬇︎
読了日:12月27日 著者:宇佐美まこと
金雀枝荘の殺人 (講談社文庫)金雀枝荘の殺人 (講談社文庫)感想
完璧に封印された館で発見された不条理極まる6人の死、事件から1年近く経ち新たな男女6人が訪れる。登場する人物の名前がドイツ人の血を引いていることから当て字が多くてそれにはそれなりの訳があり重大なヒントになっている。そして時代背景が1990年後半の話で携帯電話もなく。密室の謎というのが焦点なのだが窓に内側から釘を打ち付けた館から犯人はどうやって脱出したのか。グリム童話に謎られた犯行。昔の作品だがホラー要素もあり意外な人物の謎解きと面白かった。
読了日:12月28日 著者:今邑彩
永い言い訳 (文春文庫)永い言い訳 (文春文庫)感想
TVにも登場する人気作家だが食べられない時代を支えてくれた美容師の妻との関係は冷め切っていて同居人のような状態。突然のバス事故により妻を亡くした小説家は人が期待するような「愛する人を亡くした夫」を演じる事を強いられるが本心を吐露する訳にもいかずにいる。同じ事故で命を落とした妻の親友の夫と遺児2人に出会い衝動的に子守を買ってでる。子供を持たなかった小説家は小学生と幼稚園児2人の世話を通し人の為に自分を犠牲にする事を体験し大変さや喜びを感じ思うようにならない事態に失望したりする。⬇︎
読了日:12月29日 著者:西川美和
収穫祭収穫祭感想
1982年首尾木村で大量殺人が発生、生き延びたのは中学3年の少年少女3人と分校の教諭1人、犯人は逃走後事故死。そして9年後ひとりのライターが生き残った者達への取材を開始するや再び殺人事件が起きる。閉ざされた村を舞台でのサイコスリラー。ただひたすら翻弄され続け無力な犠牲者でしかない少年少女。推理によって事件が整理され逃げ場の無さが浮き彫りになっていく。重要なのは関係者のその後。猟奇殺人の動機に対しては共感するとこが多くスケールの大きな作品だった。
読了日:12月30日 著者:西澤保彦

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