アタローの読書

アタローの読書

ブログの説明を入力します。

Amebaでブログを始めよう!
1月の読書メーター



黒い仏 (講談社ノベルス)黒い仏 (講談社ノベルス)感想
遣唐使の時代、日本に帰国しようとしている僧の円載。何かを持って日本に戻って来ようとしているモノローグの後現代へ。探偵の石動はあるベンチャー企業の社長から依頼を受け福岡の安蘭寺という寺に隠されているという秘宝を探しに助手のアントニオ(中国人)と九州へ行く。行った先の安蘭寺には顔のない黒い仏そして同時期に福岡では殺人事件が発生。探偵の石動とアントニオが依頼を受けて調べていく部分と殺人事件の捜査を刑事が行っていく部分と分かれて展開する。だが途中アントニオの正体が判明するあたりから⬇︎
読了日:01月14日 著者:殊能 将之
ミスター・メルセデス 上ミスター・メルセデス 上感想
霧が煙る早朝市民センターで催される就職フェアの開場を待っていた行列にメルセデスベンツが突っ込み8人の死亡者と多数の負傷者を出す事件が起こった。担当刑事だったホッジスは定年退職し事件は迷宮入りとなっていた。ある日ホッジスのもとにメルセデス・キラーと名乗る男から挑戦状ともとれる手紙が届く。ホッジスは定年退職してから妻と離婚し娘が出ていった家で独り暮らし自殺願望もある状況、だが俄然生きる張り合いが出来た。このまま下巻に。
読了日:01月23日 著者:スティーヴン・キング
ミスター・メルセデス 下ミスター・メルセデス 下感想
謎解きメインではないので犯人は早々に登場する。ホッジスと犯人の視点を交互に展開し上巻ではややスローペース。一定の間合いを保った互いの距離感、水面下での主導権争いにゾクゾクしながら徐々に引き込まれる。自殺願望を抱えた元刑事ホッジス。サイコキラーに加えてイタさも半端ではない犯人。この両者の歪んだ心理状態にリアルさを感じ中盤から登場する強烈なキャラも含めて人物造形は巧い。登場人物の背景を描いて読み手の心情をさらりと抉る。頭脳戦と並行して描かれるのが崩壊と再生の物語。⬇︎
読了日:01月23日 著者:スティーヴン・キング
ファインダーズ・キーパーズ 上ファインダーズ・キーパーズ 上感想
1978年田舎町の畑の真ん中の家に 3人の強盗が押し入る。家に住むのは引退して久しい伝説的な作家ロススティーン。強盗の主犯格はモリスはロススティーンの書いたジミー・ゴールド三部作の熱狂的なファン。モリスは三部作の主人公ジミーに心酔しきっていたが結末でのジミーの扱いに強い不満を抱いていた。ロススティーンと口論になり彼を射殺し金庫から現金を奪うが本当の狙いは金ではなく金庫にあったノートの束だった。ノートにはロススティーンの未発表作品が含まれ更に完結したはずのジミー・ゴールド三部作の続編が。⬇︎
読了日:01月23日 著者:スティーヴン・キング
ファインダーズ・キーパーズ 下ファインダーズ・キーパーズ 下感想
トランクを見つけたピートという高校生は奇しくもモリスが住んでいた家に引っ越して偶然にトランクを発見。不況に喘ぐ家族の為に現金を使い更にノートを読むうちにロススティーンの未発表の原稿であることを知る。ロススティーンについて調べていくうちに魅了されるピート。家族の為にノートの一部を売却するそれは彼の人生最大の過ちだった。面白いのはピートとモリスの対比。2人とも同じ家に住んでいた、家の裏の森は共通の遊び場でもあったのでピートはモリスが隠したトランクを発見出来た。そして2人ともロススティーンの小説に魅了されピート
読了日:01月23日 著者:スティーヴン・キング
たゆたえども沈まずたゆたえども沈まず感想
1886年重吉がパリに降り立つ。既にパリで美術商として活動をしている忠正の店で働くため。2人は東大の前身である東京開成高校で出会いともにパリに魅せられフランス語に熱中した先輩後輩だった。やがて2人は吸い寄せられるようにヴィンセント・ゴッホの弟テオドール(テオ)と出会い重吉は特に親しくなり生涯の友となる。テオは欧州最大といわれた美術商社のパリ支店の責任者だった。そして2人の日本人はテオとの繋がりからヴィンセントとも会うようになる。その当時の絵画の世界はようやく印象派の一部がかろうじて認知され始めたという⬇︎
読了日:01月24日 著者:原田 マハ
死の泉 (ハヤカワ文庫JA)死の泉 (ハヤカワ文庫JA)感想
1943年ナチスが人類浄化政策の一環として設立した私生児出産施設レーベンスボルンで男児を出産したマルガレーテは医師のクラウスから求婚される。クラウスはレーベンスホルンにいる少年エーリヒの歌声に魅せられ彼をカストラート(去勢歌手)にする為にエーリヒと彼が懐いているフランツを養子として引き取る。表面上は仲睦まじい家族だったが戦争によって保たれていた危うい均衡は崩された。混乱の中で散り散りになる一家。そして終戦後の平和の影で小さな心に植え付けられた憎悪の種はゆっくりと芽を吹き復讐という名の実をつける。⬇︎
読了日:01月25日 著者:皆川 博子
婚活中毒婚活中毒感想
婚活をテーマにした4編の短編集。結婚相談所で紹介された自分にとっては理想の男性。どうしてこんな素敵な人が独身なの?2人は急接近したが女性の方はこの疑問が気になり男性の過去を調べると彼の周りでは何人もの女性が亡くなっていた。彼は連続殺人犯なの?婚活の陰にミステリー思わず血の気が引くラスト。幸福という幻を追い求める人間の悲哀をシニカルに描かれた短編集。
読了日:01月26日 著者:秋吉 理香子
角の生えた帽子角の生えた帽子感想
「悪魔の帽子」殺しの悪夢にうなされる男が自身の出自の謎を知ることで邪な変貌を遂げる。エロティシズムとグロテスクを交えた悪夢の描写から一転して悪夢と現実世界との繋がりが明かされた後主人公の身内に当たる人物が口にした真実によって妄想が一気に怪異へと変転するのが素晴らしい。全9編の短編どれもが面白く怪談の技法を巧く活かしている。怪異とミステリーを楽しめる満足の一冊。
読了日:01月26日 著者:宇佐美まこと
ミ・ト・ン (MOE BOOKS)ミ・ト・ン (MOE BOOKS)感想
舞台はバルト三国の一つラトビア共和国、物語の中ではルップマイゼ共和国となっている。ルップマイゼでは全ての物には神や精霊が宿ると信じられている。昔ながらの伝統と自然を守り慎ましく人々は暮らしている。そんな小国にありながら温かい家庭に生まれたマリカという女性の一生を綴った物語。彼女の側にはいつも神様の宿る美しいミトンがあった。彼女の初恋の人で良き伴侶となるヤーニス彼は養蜂家として愛するマリカを支えるが結婚後数年して氷の国に連行され消息が不明になる。占領下の苦しい日々に耐えながらもヤーニスとの楽しい日々の⬇︎
読了日:01月27日 著者:小川 糸,平澤 まりこ
惑いの森 (文春文庫)惑いの森 (文春文庫)感想
50編の短編。「タクシードライバー」時間にがんじがらめにされた人が登場する。自分のタイムスケジュールを予め引いてそれに沿って粛々と生きていかねば不安になってしまう人、時間を守らねばという強迫観念、時間じゃなくてもいいんだすがるものがあれば何でもいいんだ、その人にとっては時間だっただけで。この本の物語は偶然の出会いが多いような気がする。見知らぬ他者の人生が一瞬だけ交わる瞬間を描いている。私はそれにとても勇気づけられた、この本でも書かれているような細やかな出会いもあるのではないかと。
読了日:01月28日 著者:中村 文則
仮面の君に告ぐ仮面の君に告ぐ感想
病院で目覚めたら知らない女性の体に。一年前に殺され犯人もまだ捕まってなく迷宮入りしかけていた。先がどうなるのか気になり頁をめくる手が止まらない。特に和沙が部活の後輩として自分の両親に会うところは涙なくしては読めなかった。表紙すぐ見返しに同じ女性の涙を流した絵があるが全てを読み終えた後そういうことなのかと分かる。明らかになる真犯人のゲスとしか思えない殺人の動機こんな結末じゃ彼女だって泣きたくなる。だが千鶴と潤の姉弟には明るい未来が待っていそうで良かった。
読了日:01月30日 著者:横関 大
風神の手風神の手感想
3つの中編とエピローグから構成されていてラスト物語が一つに収集する。遺影専門の写真館である鏡影館を訪れる人々を巡る小さな町の叙事詩。市井の人々がついた悪意のない又は善意からの嘘。そのことで人々の運命を変えていく。読み終えるにつれ大長編を読んだような満足感。人生のあらゆる選択と偶然の末に今の自分がいるという奇跡的な因果を愛おしく思える大満足の一冊。
読了日:01月31日 著者:道尾秀介

読書メーター