天上の葦 上の感想10月半ば東京渋谷のスクランブル交差点の真ん中で正光が空の一点を指差した後昏倒し亡くなる。鑓水と修司は政府与党の元重鎮・磯辺の秘書から正光が最後に何を指差していたのか突き止めてほしいという依頼を受ける。宿敵である磯辺の依頼など断りたいのだが興信所が経営難な為引き受けざるを得ない。一方深大署の刑事課から交通課に左遷され停職中の相馬は本庁公安の前島からここ数日所在が解らなくなっている部下の山波の追跡調査を依頼される。下巻に続く。
読了日:4月16日 著者:太田愛
天上の葦 下の感想最初は違う事件だと思われたがそれぞれの事件が早い時点で同じだと解り3人は絶妙のチームワークで核心に突き進んでいく。そして舞台は瀬戸内海の島に移り閉鎖状況の中で3人の奮闘ぶりが描かれ島民の信頼を勝ち得ていくのも読み応えがある。正光は何故あんな死に方を選んだのか彼の人生を知らなければ突き止める事は出来ず彼が戦争中に携わっていた仕事や交友関係と調査は行きつく。第二次世界大戦中の秘められた過去や戦争悲劇は山波の失踪の背後にうごめく巨大な陰謀をも逆照射する。⬇︎
読了日:4月17日 著者:太田愛
暗いところで待ち合わせ (幻冬舎文庫)の感想印刷会社に勤めているが先輩のいびりや同僚達からの疎外感を耐え続けたアキヒロはある朝殺意を持ってホームで先輩のトシオの背後に立つ。逃げ込んだのは線路の側にある一人暮らしの盲目の女性ミチルの家。最初はアキヒロに気づかないミチルは家の中の気配で誰かの存在に気づき始めお互いに素知らぬふりをする奇妙な同居生活が始まる。ミチルもアキヒロも孤独な人生を歩んできた者同士だからこそお互いに干渉しあわない。言葉すら交わさないのにどこか信頼しているという2人の関係が素晴らしくより物語に惹き込まれた。心温まる良作だと思う。
読了日:4月18日 著者:乙一
夜は短し歩けよ乙女 (角川文庫)の感想黒髮の乙女で純粋で無垢な彼女に恋をした先輩。先輩は純情で硬派な大学生、密かに想いを寄せている彼女にアプローチすることが出来ず色々模索したり顔を合わす機会を伺うが空回りその想いは微塵も伝わらない。そんな2人を中心に様々な人物が登場する。李白氏と黒髮の乙女の偽電気ブランの飲み比べ対決で花の香りで飲んだ後さらにお腹の中がポッと温かく花畑になるようなという表現も素敵だった。ラストの一気に盛り上がる展開で黒髮の乙女の可愛さ読後の幸福感が魅力の作品。ほのぼのしたり微笑ましい2人はお似合いのカップルになれるだろう。
読了日:4月20日 著者:森見登美彦
乙女の読書道の感想本書を読み池澤春菜さんを初めて知ると同時に祖父が作家の福永武彦さん父が池澤夏樹さん。SFからジーヴスやハーレクインと沢山の本が紹介されている。そして池澤春菜さんの小学生の頃からの活字好きで図書館の本は全部読んでしまったというくらい。年間300冊、1日に2冊は今でも読んでいる。本の表紙写真の本棚も著者の本棚という綺麗に飾られている大量の本ほんとに本が好きなんだと伝わってくる。
読了日:4月20日 著者:池澤春菜
名もなき毒 (文春文庫)の感想世間を騒がす連続無差別毒殺事件、トラブルメーカーのアルバイト原田いずみを巡るいざこざ。杉村が関わった二つの一見別々の出来事。一つは青酸カリという毒、もう一つは人間の心を蝕む毒。いずみという人物は仕事が出来ないのに言い訳ばかりし嘘で自分を飾り見栄っ張りという恐ろしい人物。老人を毒死させた真犯人の動機。人の心に巣食う闇、飢えているその飢えが本人の魂を食い破る。この2人の人物の心に巣食う毒が暗い影を落としていた。心や体を蝕む色々な毒、それを浄めるのも人の心しだいだと。
読了日:4月21日 著者:宮部みゆき
ミステリー・アリーナ (ミステリー・リーグ)の感想年末の恒例行事になった推理当てテレビ番組ミステリー・アリーナ正解すれば多額の賞金が得られる。問題となる事件が提示されミステリーマニアの面々は犯人と理由を推理する。問題となる事件は典型的なクローズドサークル嵐で閉ざされた館で密室殺人が起きダイイングメッセージまである。この事件の犯人を回答者が一人一人答えていくのだが事件の全容が解っていない段階で推理が披露されていく。性別誤認、二人一役、人物隠蔽と叙述トリックがメインでほんの些末な事から推理を展開細かいところまでよく考えていると脱帽した。⬇︎
読了日:4月22日 著者:深水黎一郎
オーデュボンの祈り (新潮文庫)の感想目を覚ますとそこは見知らぬ島だった。地図にも載ってない150年もの間外部と交流を絶っている島「荻島」そこには少々風変わりな人々が生活していた。反対の言葉しか口にしない画家、身動きが取れないほど太り同じ場所に座り続けている女性、いつも道に寝そべり地面に耳を押し当てている少女、秩序として人を殺すことを許されている男、そして未来を予知し人語を操る事の出来るカカシ。ある夜島で殺人事件が起こる。カカシの優午は何故自らの危機を回避出来なかったのか?⬇︎
読了日:4月23日 著者:伊坂幸太郎
血縁の感想7編の短編集。「血縁」幼い頃から姉のいいなりになってきた妹やがて同じ介護施設で働くようになるが、ある日担当する老女の自宅で誤ってベランダから鉢植えを落とし老女を死なせてしまった妹。偶然やって来た姉は強盗の仕業に見せかけようとする…。短編でも独特なおさえた暗い語り口。短い話の中に次々に情報が盛り込まれていてどう繋がっていくのか推理しながら読むことができ面白かった。
読了日:4月24日 著者:長岡弘樹
秋山善吉工務店の感想家を焼け出され夫の実家で同居することになった秋山一家。小学生の弟太一はいじめっ子に目をつけられイジメの対象になり、中学生の兄雅彦はヤクザになった先輩の誘いで危ない仕事の片棒を担ぎとトラブルに見舞われるが兄弟の危機一髪を救ったのは怖いと思っていたおじいちゃん。そして3人で暮らす為に正社員になろうとパート先で奮闘する景子は職場でモンスタークレーマーに会いトラブルに。それを救ったのは善吉の妻春江だった。善吉夫婦が人情味もあり度胸もあり頼もしい。火事の原因を探る刑事宮藤、失火なのか放火なのか意外な展開に。⬇︎
読了日:4月25日 著者:中山七里
綺譚集 (創元推理文庫)の感想心が折れる小説と言っていいのだろうか。美しいものを醜く、醜いものを美しく表現されている悪魔的な文才。死が限りなく私たちの世界の近くにあり死者は当然のようにそこに住み着き死は恐ろしいるものなのだけれども限りなく美しい世界でもある。美しさと死が表裏一体みたいな世界、そして幻想と快楽の入り組んだ世界でもある。15編の短編がそれぞれ異なる文体で書かれている凝りよう。ホラー寄りな幻想小説。
読了日:4月25日 著者:津原泰水
ガーディアンの感想いじめ、不登校と現在中学校を取り巻く問題は後を絶たないと思う。秋葉が異動により赴任した石原中学校はそういう問題もなく表面上は平和な学校。実は陰で学校を牛耳っているかのような匿名の自警団ガーディアンにより平和が作り出されていた。ガーディアンとはある出来事がきっかけで生徒達が自主的に作った自警団。SNSやスマホが普及しているとはいえ生徒達全体の心を掴み統制する事が出来るのか。得体の知れないものの力が働くのってなんだが気味が悪いような。⬇︎
読了日:4月26日 著者:薬丸岳
フォルトゥナの瞳 (新潮文庫)の感想慎一郎はある日身体の一部が透けて見える人間を見かける。あり得ない出来事に慎一郎は混乱し現実のものとして受け入ることが出来ない自分は精神が病んでしまったのではないかと不安になる。慎一郎が力を持ったこと葵と運命的な出会いをしたこと黒川と知り合ったことも全てが偶然のようでもあり運命のようでもある。慎一郎の決断は多くの人の命を守った。彼の成したことの意味は誰にも知られることはない。過去を変えることは出来ないが最初から対価を払わなければならないと知っていたとしたら慎一郎も幸せを掴むことが出来たのかも哀切を感じた。
読了日:4月27日 著者:百田尚樹
火車 (新潮文庫)の感想何かに翻弄される人生彼女の生き方はけっして褒められたものではない。けれどそうやって生きていくしか道はなかったのだと思う。毎日が辛いものだっただろう。何かあるたびに怯え逃げ道を探し追われるように別の場所へと。自分の存在を消すことは過去の全てを捨てること。誰かの人生を引き継ぐことはその人の過去の全てを引き受けること。個人情報が今ほど厳しくなかった時代だからこそあり得た事件。ひたすら目立たずひっそりと人目を忍んで生きていかなければならない人生、それでも新しい人生を手に入れたかった彼女の想いが哀しい。
読了日:4月28日 著者:宮部みゆき
インシテミル (文春文庫)の感想クローズドサークル、人が集まり集団になるとそこには必ず自然にリーダーが発生する。最初にリーダー的位置についたのは大迫何事もなく過ぎていくと思われたが12名の緊張を一気に高めたのはひとつの死体。殺された人間がいれば殺した人間もいなければならない。疑心暗鬼にかられた被験者達は周囲の人間に対してある者は過剰に怯えある者は過剰に疑いの目を向ける。誰かが犯人だと解れば人は安心するのだろう。より多くの報酬を求める者がいる限り犠牲者は増えていく。人が人を殺す、うまい話には裏がある。正体が掴めないものこそが最も恐ろしい。
読了日:4月29日 著者:米澤穂信
BUTTERの感想木嶋佳苗事件をモチーフに描かれている。綺麗でもなく太っている女性にどうして何人もの男性が。男達から次々に金を奪った末三件の殺害容疑で逮捕された梶井真奈子。週刊誌記者の里佳は梶井への取材を重ねるうち欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。確固たる自分がない里佳が人の弱い部分に取り入れるのが上手い梶井に溺れていく様は読んでいて辛くなった。だが取り込まれる人は一人だけではなく…。周りの人の存在の大きさを感じた。⬇︎
読了日:4月30日 著者:柚木麻子