2016年9月の読書メーター
鬼の感想
人間の恐ろしさが描かれているブラックな10編の短編集。人間のいやらしい部分や下手に出て注意しても防ぎきれない、いつ何処で我が身に降りかかるかもしれない恐ろしさが巧く描かれ読者の想像力に委ねるラストなど読んだ後にゾワっとくる短編集が素晴らしい。
読了日:9月15日 著者:今邑彩
赤い博物館の感想
捜査一課の巡査部長・寺田は容疑者の自宅に捜査資料を置き忘れるという大失態を犯してしまい警視庁付属犯罪資料館、通称赤い博物館に左遷。そこにはキャリアであり8年も館長を務めている緋色冴子がいた。5編の連作短編集で資料館に送られて来る事件の資料を読んだ冴子が不審な点を見つけ寺田に命じ再捜査をし事件を解決していく。コールドケースや解決してある事件を論理的に再捜査していくのが面白く冴子の安楽椅子みたいな推理や事件の真相を見抜くのが凄い。そして冴子がキャリアでありながら何故赤い博物館にいるのかという理由の謎が気になる
読了日:9月16日 著者:大山誠一郎
ずっとあなたが好きでしたの感想
13編の短編集で恋愛小説集ということで手にとってみた。短編それぞれがラストで見ていた世界が反転するものや叙述トリックみたいなものなど共通の人物が登場し関連があるものもあればそうとは分からないものもある。だが短編の中で読んでいて思い描いていたイメージをラスト一行で見事に逆転させる「舞姫」は面白かった。恋愛小説という意味ではいまいちかも。
読了日:9月17日 著者:歌野晶午
黒野葉月は鳥籠で眠らないの感想
新米弁護士・木村を主人公に4編のリーガルミステリー。表題作の話は黒野葉月の家庭教師をしていた大学生皆瀬が15歳の葉月と性的関係を持ったとし逮捕され弁護する事となった木村。少女の両親と話し合い二度と少女に会わないことを条件に示談する事になったが皆瀬はそれを拒否する。そして葉月が木村に起訴までの日を「めいいっぱい長引かせて」と言った意味。葉月というキャラの行動力で法律の規定を巧く使い解決する。どの短編も法律の条文を適用して面白い。
読了日:9月18日 著者:織守きょうや
切り裂きジャック・100年の孤独の感想
19世紀ロンドンを恐怖の底に陥れた殺人鬼切り裂きジャックが百年の時を経て蘇る。1988年ベルリンで起こった謎の連続殺人、5人の娼婦達は頸動脈を切られ腹部を引き裂かれ内臓を引き出された状態で発見される。娼婦を狙った犯行、凄惨な死体これらは切り裂きジャックの手口そのものだった。未だ未解決の事件を百年後のベルリンでの事件に絡め巧妙な真相を探偵のクリーン・ミステリが解決していく。臨場感があり読み応えがあった。
読了日:9月19日 著者:島田荘司
小説 秒速5センチメートル (角川文庫)の感想
貴樹と明里は小学生の頃から転校を繰り返していたため自分の居場所を感じることが出来ない。そんな2人が運命的な出会いを果たし互いのことを大切に思う。だが運命は容赦なく2人を離れ離れに。明里は寂しさや悲しみを感じながらも前に進もうとする。貴樹は理解しながらも前に向けず過去を引きずりどこか虚しさを抱えたまま生きていく。しかし貴樹はいろいろな経験を経て過去に決別し自らの足で歩こうと決意する。静かな悲しみ、そして優しい澄んだ透明な物語。
読了日:9月19日 著者:新海誠
剣と紅の感想
徳川四天王に数え上げられる井伊直政の義母井伊直虎。直虎には凶事を予見する能力があり彼女の生涯が綴られる。直虎について直政が家康に語るという形式で物語は進む。戦国時代に確かに存在した直虎、彼女はかつての許嫁直親の息子直政を養子とし彼が成長するまでの中継ぎとして井伊家当主となり存続させた。タイトルの剣と紅は、紅は女性の化粧道具、剣は刀。紅はいらぬ。剣をもてと帯に書かれている正に直虎にぴったりな言葉。そして女の戦も描かれているのが良い。
読了日:9月20日 著者:高殿円
傘をもたない蟻たちはの感想
加藤シゲアキ初読みの短編集。ぞっとする男女の怖さの話やSFみたいな話、青春小説など短編どれもが毛色が違って凄い。暗い闇が垣間見える話から生々しい話もあり後味の悪い話が多かったが洗練されていて興味深く堪能できた。
読了日:9月21日 著者:加藤シゲアキ
彼女は存在しない (幻冬舎文庫)の感想
平凡な日常を送る香奈子の生活がある日を境に狂い始める。信じていたものが信じられなくなった時人は壊れ始める。ミステリーというよりグロいとも思ったが謎解きは読み進むにつれ早かった。結末は張り巡らされている伏線の罠に見事にハマり引っかかってしまった。多重人格ものラストの後味は良くなかった。
読了日:9月21日 著者:浦賀和宏
レイク・クローバーの感想
経済制裁下にあるミャンマーでの天然ガス田の発見に絡んだ事件で様々な政治的思惑とCDC(疾病予防管理センター)の前に大きな壁となり立ち塞がる。そして極秘任務でミャンマーに潜入したCIAの工作員も帰還中のアメリカ海軍原子力潜水艦バッファローの中で新種の寄生虫により大量の血を吐いて死んでしまう。その血を浴びた海軍のSEALSの隊員も次々と感染艦内はパニックに。レイク・クローバーでの未知の寄生虫との戦いと同時進行で進んでいきハラハラドキドキさせられた。
読了日:9月22日 著者:楡周平
イナイ×イナイ (講談社ノベルス)の感想
椙田の探偵事務所で助手の令子と真鍋が奇妙な事件に遭遇する。「私の兄を捜してほしい」と双子の妹・千春と共に都心の広大な旧家に暮らす千鶴。兄の鎮夫は母屋の地下牢に幽閉されているという。椙田の代行で令子と事務所の留守番役の美大生真鍋が屋敷に赴くがそこで事件が起こる。令子とぼーっとしているのに妙に観察と勘の鋭い真鍋のコンビが事件を解決する。そして千鶴達とは遠い親戚だという探偵の鷹知も関わり、ラストで西之園萌絵が大学に赴任して間もない頃とほんの少し登場。Xシリーズ読み進めます。
読了日:9月23日 著者:森博嗣
太陽おばばの感想
舞はフリーライター、不妊を理由に離婚され一人暮らし。向かいにある老人専用のアパートから高枝切りバサミが伸びてきて舞のお気に入りの下着を切られてしまう、それが太陽おばばこと耶知子さんとの出会い。連作短編集で耶知子さんの幼友達やサークルの仲間達の死に方について親族や友達と勢いと竜巻を起こす不思議なパワーで解決していく。生と死をテーマに暗くなる内容だが竜巻のような元気なおばばのおかげで明るく描かれていて良かった。
読了日:9月23日 著者:雀野日名子
光と影の誘惑 (創元推理文庫)の感想
作者の懐の広さを示し罠が仕掛けられている3編とコミカルの1編の短編集。「長く孤独な誘拐」は1人息子を誘拐された森脇に犯人が突きつけた要求は本命の誘拐、悲壮な森脇の決意が痛々しく…。表題作の「光と影の誘惑」は平凡で貧しい日々に鬱屈下2人の男が出会い銀行の現金輸送襲撃計画を企てる。計画は上手くいったかに思えたが、ところが「長く孤独な誘拐」の話が絡みラストに罠が。短編どれもが秀逸で楽しめた。
読了日:9月24日 著者:貫井徳郎
空ばかり見ていた (文春文庫)の感想
旅する床屋の物語。それぞれの短編の舞台や登場人物は違うがどれにも旅する床屋が出てくる。旅する床屋はホクトという名で若い頃フランスでパントマイムの修行をしていたことがあるらしい。幻想小説的な色彩を感じ不思議な終わり方をする短編も多い。最初のエピソードと最後のエピソードがリンクし最初にあるいくつかの謎が最初のエピソードでちゃんと解き明かされ品が良くふわふわしていながらも感動的だった。
読了日:9月24日 著者:吉田篤弘
灰色の虹 (新潮文庫)の感想
身に覚えのない殺人の罪で服役することになった江木。仕事、家族、日常と全てを奪い去られ理不尽な運命に翻弄される。彼の人生そのものが灰色に染まってしまった。彼は自分の人生を奪った者達への復讐を誓う。強引に自白を迫った刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。7年前江木を冤罪に追いやった者達が次々に殺され、ひとりの刑事が被害者達の繋がりを見出し殺人の容疑者を絞り込んでいくが江木の行方は杳と知れず。だが予想外の結末にあまりに悲しくやりきれない深い悲しみの余韻を残す。慟哭のミステリー。
読了日:9月25日 著者:貫井徳郎
津軽百年食堂 (小学館文庫)の感想
大森食堂の歴史と3代目の哲夫が営む現在の大森食堂そして東京の陽一と七海。読み始めはバラバラに語られているが徐々に物語が弘前でひとつの方向へ向かっていく。津軽百年食堂というタイトルは青森県が定めている3世代70年以上続いている大衆食堂、メインの津軽蕎麦は普通の中華そばとは作り方が異なり時間と手間がかかるもの。その伝統の作り方と味を哲夫が引き継ぎ守り続けている。生きることは簡単じゃない複雑だ。複雑な中で生きる人々の姿が描かれ、人々の心温まる交流や恋愛などを織り込まれピュアで心に響く物語だった。
読了日:9月27日 著者:森沢明夫
琥珀のまたたきの感想
琥珀という名を与えられた少年、彼には姉のオパール弟の瑪瑙という姉弟がいる。末妹は病で亡くなったが彼らの母親はその原因になった魔犬の呪いから逃れるという口実で父親が残した別荘に3姉弟を閉じ込める。姉弟は敷地内から出ることも許されず。ある日琥珀は自らの左目に異常を感じ見えなくなった目の中に亡くなった妹の姿を見出す。父親が残した大量図鑑の片隅にその姿を描き留める。それは生き生きと妹の姿を蘇らせ母と姉弟たち皆で見る場面は強く心に残る。静謐で温かいのに物悲しく残酷な物語。
読了日:9月27日 著者:小川洋子
後悔と真実の色 (幻冬舎文庫)の感想
指蒐集家と名乗る殺人鬼、犯人は殺した女性の右手の人差し指を持ち去っていた。そして挑発的なネットでの殺人予告、捜査陣を嘲笑うかのように犯行は繰り返され糸口も掴めない。そんな中警察は捜査に一心に取り組み多くの登場人物が様々な思惑を持ちながら捜査していく。捜査一課の西條も仕事熱心で対立も厭わない、だが西條はその性格により運命を翻弄され転落まで…。ラスト直前で真犯人が明らかになるが不幸な過去のせいでこうなってしまうとは。ラストまで緻密で考えぬかれた構成は素晴らしい。
読了日:9月28日 著者:貫井徳郎
ぼんくら(上) (講談社文庫)の感想
鉄瓶長屋を舞台にした6編の連作短編集。主人公はぼんくら同心・井筒平四郎。長屋に住む煮売屋のお徳さんは女手一つで働き威勢が良く世話焼きで長屋のまとめ役。上巻では長屋の幾つかの親子関係がテーマになっている。「博打打ち」では博打狂いの親父の権吉と器量良しで親孝行なお律が物語の中心となり親娘の間に立つ差配人の佐吉も若いながら親子関係では重い因果を背負っている、だから佐吉が下す権吉とお律の裁きは読みどころ。人情味あふれる物語、下巻を読みます。
読了日:9月29日 著者:宮部みゆき
ぼんくら(下) (講談社文庫)の感想
平四郎の妻の姉の子で甥の弓之助は美少年。平四郎夫婦には子供がいないので、いずれは弓之助を養子にしようと…。この弓之助と平四郎が鉄瓶長屋の事件の真相に迫る。鉄瓶長屋での隠された真相を12歳の子供ながら頭の働きは抜群で美少年ときている、ぼんくらな平四郎に代わり機転の早さと意外な特技で謎に迫っていく。そして記憶力の良いおでここと三太郎と魅力的な沢山の登場人物ミステリーあり人間ドラマありと面白い。
読了日:9月30日 著者:宮部みゆき
読書メーター
鬼の感想人間の恐ろしさが描かれているブラックな10編の短編集。人間のいやらしい部分や下手に出て注意しても防ぎきれない、いつ何処で我が身に降りかかるかもしれない恐ろしさが巧く描かれ読者の想像力に委ねるラストなど読んだ後にゾワっとくる短編集が素晴らしい。
読了日:9月15日 著者:今邑彩
赤い博物館の感想捜査一課の巡査部長・寺田は容疑者の自宅に捜査資料を置き忘れるという大失態を犯してしまい警視庁付属犯罪資料館、通称赤い博物館に左遷。そこにはキャリアであり8年も館長を務めている緋色冴子がいた。5編の連作短編集で資料館に送られて来る事件の資料を読んだ冴子が不審な点を見つけ寺田に命じ再捜査をし事件を解決していく。コールドケースや解決してある事件を論理的に再捜査していくのが面白く冴子の安楽椅子みたいな推理や事件の真相を見抜くのが凄い。そして冴子がキャリアでありながら何故赤い博物館にいるのかという理由の謎が気になる
読了日:9月16日 著者:大山誠一郎
ずっとあなたが好きでしたの感想13編の短編集で恋愛小説集ということで手にとってみた。短編それぞれがラストで見ていた世界が反転するものや叙述トリックみたいなものなど共通の人物が登場し関連があるものもあればそうとは分からないものもある。だが短編の中で読んでいて思い描いていたイメージをラスト一行で見事に逆転させる「舞姫」は面白かった。恋愛小説という意味ではいまいちかも。
読了日:9月17日 著者:歌野晶午
黒野葉月は鳥籠で眠らないの感想新米弁護士・木村を主人公に4編のリーガルミステリー。表題作の話は黒野葉月の家庭教師をしていた大学生皆瀬が15歳の葉月と性的関係を持ったとし逮捕され弁護する事となった木村。少女の両親と話し合い二度と少女に会わないことを条件に示談する事になったが皆瀬はそれを拒否する。そして葉月が木村に起訴までの日を「めいいっぱい長引かせて」と言った意味。葉月というキャラの行動力で法律の規定を巧く使い解決する。どの短編も法律の条文を適用して面白い。
読了日:9月18日 著者:織守きょうや
切り裂きジャック・100年の孤独の感想19世紀ロンドンを恐怖の底に陥れた殺人鬼切り裂きジャックが百年の時を経て蘇る。1988年ベルリンで起こった謎の連続殺人、5人の娼婦達は頸動脈を切られ腹部を引き裂かれ内臓を引き出された状態で発見される。娼婦を狙った犯行、凄惨な死体これらは切り裂きジャックの手口そのものだった。未だ未解決の事件を百年後のベルリンでの事件に絡め巧妙な真相を探偵のクリーン・ミステリが解決していく。臨場感があり読み応えがあった。
読了日:9月19日 著者:島田荘司
小説 秒速5センチメートル (角川文庫)の感想貴樹と明里は小学生の頃から転校を繰り返していたため自分の居場所を感じることが出来ない。そんな2人が運命的な出会いを果たし互いのことを大切に思う。だが運命は容赦なく2人を離れ離れに。明里は寂しさや悲しみを感じながらも前に進もうとする。貴樹は理解しながらも前に向けず過去を引きずりどこか虚しさを抱えたまま生きていく。しかし貴樹はいろいろな経験を経て過去に決別し自らの足で歩こうと決意する。静かな悲しみ、そして優しい澄んだ透明な物語。
読了日:9月19日 著者:新海誠
剣と紅の感想徳川四天王に数え上げられる井伊直政の義母井伊直虎。直虎には凶事を予見する能力があり彼女の生涯が綴られる。直虎について直政が家康に語るという形式で物語は進む。戦国時代に確かに存在した直虎、彼女はかつての許嫁直親の息子直政を養子とし彼が成長するまでの中継ぎとして井伊家当主となり存続させた。タイトルの剣と紅は、紅は女性の化粧道具、剣は刀。紅はいらぬ。剣をもてと帯に書かれている正に直虎にぴったりな言葉。そして女の戦も描かれているのが良い。
読了日:9月20日 著者:高殿円
傘をもたない蟻たちはの感想加藤シゲアキ初読みの短編集。ぞっとする男女の怖さの話やSFみたいな話、青春小説など短編どれもが毛色が違って凄い。暗い闇が垣間見える話から生々しい話もあり後味の悪い話が多かったが洗練されていて興味深く堪能できた。
読了日:9月21日 著者:加藤シゲアキ
彼女は存在しない (幻冬舎文庫)の感想平凡な日常を送る香奈子の生活がある日を境に狂い始める。信じていたものが信じられなくなった時人は壊れ始める。ミステリーというよりグロいとも思ったが謎解きは読み進むにつれ早かった。結末は張り巡らされている伏線の罠に見事にハマり引っかかってしまった。多重人格ものラストの後味は良くなかった。
読了日:9月21日 著者:浦賀和宏
レイク・クローバーの感想経済制裁下にあるミャンマーでの天然ガス田の発見に絡んだ事件で様々な政治的思惑とCDC(疾病予防管理センター)の前に大きな壁となり立ち塞がる。そして極秘任務でミャンマーに潜入したCIAの工作員も帰還中のアメリカ海軍原子力潜水艦バッファローの中で新種の寄生虫により大量の血を吐いて死んでしまう。その血を浴びた海軍のSEALSの隊員も次々と感染艦内はパニックに。レイク・クローバーでの未知の寄生虫との戦いと同時進行で進んでいきハラハラドキドキさせられた。
読了日:9月22日 著者:楡周平
イナイ×イナイ (講談社ノベルス)の感想椙田の探偵事務所で助手の令子と真鍋が奇妙な事件に遭遇する。「私の兄を捜してほしい」と双子の妹・千春と共に都心の広大な旧家に暮らす千鶴。兄の鎮夫は母屋の地下牢に幽閉されているという。椙田の代行で令子と事務所の留守番役の美大生真鍋が屋敷に赴くがそこで事件が起こる。令子とぼーっとしているのに妙に観察と勘の鋭い真鍋のコンビが事件を解決する。そして千鶴達とは遠い親戚だという探偵の鷹知も関わり、ラストで西之園萌絵が大学に赴任して間もない頃とほんの少し登場。Xシリーズ読み進めます。
読了日:9月23日 著者:森博嗣
太陽おばばの感想舞はフリーライター、不妊を理由に離婚され一人暮らし。向かいにある老人専用のアパートから高枝切りバサミが伸びてきて舞のお気に入りの下着を切られてしまう、それが太陽おばばこと耶知子さんとの出会い。連作短編集で耶知子さんの幼友達やサークルの仲間達の死に方について親族や友達と勢いと竜巻を起こす不思議なパワーで解決していく。生と死をテーマに暗くなる内容だが竜巻のような元気なおばばのおかげで明るく描かれていて良かった。
読了日:9月23日 著者:雀野日名子
光と影の誘惑 (創元推理文庫)の感想作者の懐の広さを示し罠が仕掛けられている3編とコミカルの1編の短編集。「長く孤独な誘拐」は1人息子を誘拐された森脇に犯人が突きつけた要求は本命の誘拐、悲壮な森脇の決意が痛々しく…。表題作の「光と影の誘惑」は平凡で貧しい日々に鬱屈下2人の男が出会い銀行の現金輸送襲撃計画を企てる。計画は上手くいったかに思えたが、ところが「長く孤独な誘拐」の話が絡みラストに罠が。短編どれもが秀逸で楽しめた。
読了日:9月24日 著者:貫井徳郎
空ばかり見ていた (文春文庫)の感想旅する床屋の物語。それぞれの短編の舞台や登場人物は違うがどれにも旅する床屋が出てくる。旅する床屋はホクトという名で若い頃フランスでパントマイムの修行をしていたことがあるらしい。幻想小説的な色彩を感じ不思議な終わり方をする短編も多い。最初のエピソードと最後のエピソードがリンクし最初にあるいくつかの謎が最初のエピソードでちゃんと解き明かされ品が良くふわふわしていながらも感動的だった。
読了日:9月24日 著者:吉田篤弘
灰色の虹 (新潮文庫)の感想身に覚えのない殺人の罪で服役することになった江木。仕事、家族、日常と全てを奪い去られ理不尽な運命に翻弄される。彼の人生そのものが灰色に染まってしまった。彼は自分の人生を奪った者達への復讐を誓う。強引に自白を迫った刑事、怜悧冷徹な検事、不誠実だった弁護士。7年前江木を冤罪に追いやった者達が次々に殺され、ひとりの刑事が被害者達の繋がりを見出し殺人の容疑者を絞り込んでいくが江木の行方は杳と知れず。だが予想外の結末にあまりに悲しくやりきれない深い悲しみの余韻を残す。慟哭のミステリー。
読了日:9月25日 著者:貫井徳郎
津軽百年食堂 (小学館文庫)の感想大森食堂の歴史と3代目の哲夫が営む現在の大森食堂そして東京の陽一と七海。読み始めはバラバラに語られているが徐々に物語が弘前でひとつの方向へ向かっていく。津軽百年食堂というタイトルは青森県が定めている3世代70年以上続いている大衆食堂、メインの津軽蕎麦は普通の中華そばとは作り方が異なり時間と手間がかかるもの。その伝統の作り方と味を哲夫が引き継ぎ守り続けている。生きることは簡単じゃない複雑だ。複雑な中で生きる人々の姿が描かれ、人々の心温まる交流や恋愛などを織り込まれピュアで心に響く物語だった。
読了日:9月27日 著者:森沢明夫
琥珀のまたたきの感想琥珀という名を与えられた少年、彼には姉のオパール弟の瑪瑙という姉弟がいる。末妹は病で亡くなったが彼らの母親はその原因になった魔犬の呪いから逃れるという口実で父親が残した別荘に3姉弟を閉じ込める。姉弟は敷地内から出ることも許されず。ある日琥珀は自らの左目に異常を感じ見えなくなった目の中に亡くなった妹の姿を見出す。父親が残した大量図鑑の片隅にその姿を描き留める。それは生き生きと妹の姿を蘇らせ母と姉弟たち皆で見る場面は強く心に残る。静謐で温かいのに物悲しく残酷な物語。
読了日:9月27日 著者:小川洋子
後悔と真実の色 (幻冬舎文庫)の感想指蒐集家と名乗る殺人鬼、犯人は殺した女性の右手の人差し指を持ち去っていた。そして挑発的なネットでの殺人予告、捜査陣を嘲笑うかのように犯行は繰り返され糸口も掴めない。そんな中警察は捜査に一心に取り組み多くの登場人物が様々な思惑を持ちながら捜査していく。捜査一課の西條も仕事熱心で対立も厭わない、だが西條はその性格により運命を翻弄され転落まで…。ラスト直前で真犯人が明らかになるが不幸な過去のせいでこうなってしまうとは。ラストまで緻密で考えぬかれた構成は素晴らしい。
読了日:9月28日 著者:貫井徳郎
ぼんくら(上) (講談社文庫)の感想鉄瓶長屋を舞台にした6編の連作短編集。主人公はぼんくら同心・井筒平四郎。長屋に住む煮売屋のお徳さんは女手一つで働き威勢が良く世話焼きで長屋のまとめ役。上巻では長屋の幾つかの親子関係がテーマになっている。「博打打ち」では博打狂いの親父の権吉と器量良しで親孝行なお律が物語の中心となり親娘の間に立つ差配人の佐吉も若いながら親子関係では重い因果を背負っている、だから佐吉が下す権吉とお律の裁きは読みどころ。人情味あふれる物語、下巻を読みます。
読了日:9月29日 著者:宮部みゆき
ぼんくら(下) (講談社文庫)の感想平四郎の妻の姉の子で甥の弓之助は美少年。平四郎夫婦には子供がいないので、いずれは弓之助を養子にしようと…。この弓之助と平四郎が鉄瓶長屋の事件の真相に迫る。鉄瓶長屋での隠された真相を12歳の子供ながら頭の働きは抜群で美少年ときている、ぼんくらな平四郎に代わり機転の早さと意外な特技で謎に迫っていく。そして記憶力の良いおでここと三太郎と魅力的な沢山の登場人物ミステリーあり人間ドラマありと面白い。
読了日:9月30日 著者:宮部みゆき
読書メーター