摩崖仏と忘れられた古社 | 黄昏黒猫屋敷ー布人形とイラストの小部屋

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世間からかなりずれている管理人、黄昏黒猫堂こと黒猫が自作人形やイラストを発表しつつ、ニート、ひきこもりなど生きずらさを考える。(画像一覧で作品を見ていただけるとうれしいです。)

 

森の奥なる石祠

忘れられたる石祠

知るは精霊物の怪ばかり

 

(画像と本文は直接の関係はありません)

 

 

 新年早々、バイクのライド&ハイク(バイクツーリング&山歩き)で出かけた山中で道に迷ってしまった。そして道なき山の斜面で、おそらくそこに至る道も絶えて久しい、藪に覆われた古い忘れられた「石祠」に出会った。そしてその主に導かれるように無事戻ってくることができた。何故か祠の写真を撮ることは躊躇われたため、画像を残すことはできなかったが、人々から忘れられたであろう「神」のことを思う。

 

 1月4日は暖かく穏やかな日和だった。そこで、かねてから行きたいと思っていた茨城県かすみがうら市の山中にある「百体摩崖仏」と浅間山(せんげんやま)に行ってみることにした。1月4日まで職場は年末年始の休み。と言っても、5日に出勤してすぐに3連休なので、まだまだ休みの気分。まずは排気量110ccの小型自動二輪、スーパーカブ110プロでかすみがうら市内のコンビニに乗りつけ、飲み物とパンを買う。

 県道から市道に入り、山麓に百体摩崖仏のある閑居山(227m)をのぞむ。閑居山という山は、山というより、写真の左側の浅間山(せんげんやま、345m)のなだらかな尾根を言い、山頂があるわけではない。

 麓の林業試験場の脇に「百体摩崖仏」に至る道の入り口があり、車数台を置けるスペースがあるだけで、観光的名所旧跡という雰囲気は全くない。そこにバイクを停め、少し山道を上がると摩崖仏の彫られた岩場に出る。

 険しい岩場の至る所に地蔵菩薩をはじめとする諸仏が彫られている。足場が悪いので、あまり上に上がらない方がいい。どの時期にどのようないわれで彫られたかは諸説あるようだが、江戸時代の前期に彫られたものが多いという。

 摩崖仏の岩場の先にも道は続いていて、あちこちに仏様がおられる。

 写真の道はやがて切れ切れの踏み跡のようになり、閑居山の尾根上の正規の登山道に合流する。目印等はついているものの、こういう道は、登りはいいが、下りは迷いやすい。浅間山を目指すものの、帰りが気になる。正規の登山道は摩崖仏からかなり離れた場所に降りてしまうし、不明瞭な踏み跡での磨崖仏への下山は思わぬ危険に遭遇する可能性がある。

 まあ、とりあえずは明るく平坦な尾根道を気持ちよく歩く。こういう低山は冬が一番明るい。帰りのことは、その時に考えよう。

 やがて急な登り坂となり、浅間山(345m)の山頂に。山頂には富士山の浅間神社ゆかりの祠と思われる石祠とその後ろの電波中継局がある。浅間山(せんげんやま)という山名も浅間神社からきているのだろう。それにしても古い信仰と現代の技術が隣り合わせに。面白いものだ。

 浅間山の見晴らしはあまりよくない。それでも灌木越しに筑波山が見えた。少し休憩をとってから下山する。閑居山の尾根道で摩崖仏方面に分岐する道の標識があり、正規の登山道を離れ、不明瞭な道を下る。登り道は「収束」するが降り道は「分散」して迷いやすい。山では下りこそ要注意だ。そして嫌な予感は的中した。たぶん目印を見落としたのだろう。道に迷ったことに気が付いた。さてどうしたものかと考え込む。尾根道の登山道に登り返すのが常道だが、ふと下方斜面に石の祠が見えた。祠から里に通じる道があると思い。祠まで下りてみたが、それは上からしか見えない、ぐるりと藪に囲まれ、里への道もなく、おそらくもう人が詣でることもない「忘れられた祠」のようだった。小銭を供えて礼拝した。写真は撮ってはいけないような気がして撮らなかった。そして、何故か斜面を並行移動しようと思いたった。地図を見て、滝場のある沢を避けて道なき斜面を歩くこと少しで、落ち葉に埋もれた窪地に出た。沢地のようでありながら、乾いた落ち葉に敷き詰められ、人の手が加わっていないだろうに、不思議と歩きやすい窪地の底を下って行くと、先ほどの祠といい、妙に因縁を感じさせるものに出会った。

 沢地のような窪地を下っているうちに、いつの間にか、「助六地蔵」と呼ばれる、この地ではよく知られる、人の背丈より大きな地蔵尊のところに降りていたのだ。あの祠に出会っていなかったら、ここまでのコースを辿っていなかったかもしれないと思うと、不思議な感じがする。この地の義民ゆかりの地蔵尊の参道を下ると、摩崖仏の入り口付近に出る。

 道に迷ったわりには、まだ時間に余裕があったので、やはり摩崖仏の入り口付近から歩いて行ける「杉沢の滝」を見に行った。滝まではしっかりとした道がある。道に迷った時、第一番に考えたことは、この滝のある沢に迷い込まないことだ。水量こそ少ないが、沢の岩場で滑落したら目も当てられない。

 帰り道、浅間山の遠景。あの山中で、詣でる道も途絶え、藪に覆われた「石祠」に出会ったのだが、どうしてだか説明できないが、あの祠を探しに行っても、それはもう二度と見つからない気がしてならない。

 

 

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