その仔猫は痩せてひ弱そうで、ちゃんと育つのか心配だった。
道端でうずくまっていたところを娘が連れてきた。
乳離れがすんだところで母猫とはぐれたのか。たぶん野良の仔猫。
ミルク入りの猫缶を食べたら、落ち着いたらしく、
家のあちこちを探検し始めた。食欲があるから大丈夫みたいだ。
猫が家の探検を始めるのはこれから住むところの様子を知るため。
この子はどうやら我が家を住処に決めたようだ。
まだ階段は上がれないらしく、2階へは行かなかったけれど、
いいかげんうろついて、家の1階のあちこちを見て回った。
それから居間で落ち着いて寝そべっていた。
この子の適応力はたいしたものだ。ここは安全なところとわかったみたい。
その顔は、「これからアタシはここに住むの。」と言っているみたいだった。
さっそく「サクラ」と名付けられたその子は、その夜、娘と一緒に寝た。
野良で栄養不足だったせいか、ひどく小さく見えたけれど。
雌なのに5kgの大きな猫になった。
あれから16年が過ぎて、サクラも歳をとった。
それでも白い胸の毛は相変わらず眩しい白さで、見たところ変わらない。
それでも、階段を上がるのが、ずいぶんゆっくりになった気がする。
それと家の周りのパトロールが前は10分だったのが今は2分になった。
サクラはいつでも家の中心にいた。まるでこの家の主のようだ。
我が家には大変なことがたくさんあったけれど、サクラはいつも幸せそうだった。
そんなサクラを家族は「幸せさん」と呼んでいた。
大変なことも、苦しいことも、「幸せさん」の上を通り過ぎた。
みんなサクラのおかげでまるくおさまったのかもしれない。
いつのまにか、サクラがいないことなんて考えられなくなっていた。
サクラさん、まだまだ元気でいて下さい。
それと妹分のクーさんも。
(後から来たクーさんは猫離れした不思議な生物なので後で詳しく書きたいです。)
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