子供の頃、
誰に渡されたのか憶えていないけれど、
小さなスケッチブックを持っていた。
お気に入りのクレヨンで気ままに描き、
まっさらな白いページをめくるたびにわくわくした。
白いページからは風が吹いてきた。
何もないところから歌が聴こえてきた。
風の歌が僕を導いていた。
風の歌の中を僕は歩いていた。
あのスケッチブックは今はどこにあるのだろう。
いつの間にか僕はスケッチブックをなくしていた。
代わりに持っているのは、
先の先まで予定で埋まった黒皮の手帳。
めくっても、めくっても、
もう風は吹いてこない。
どこからも歌は聴こえてこない。
もう僕は風の中にはいない。
どこにいるのかって、
黒皮の手帳の中さ。
(今は手帳から抜け出せた気がするのですが、さて、どうでしょう。)
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