目が醒めた。
でも体が1cmさえ動かない。
ちがう、体が動かないのじゃない。
心が動かない。
まるで失速したようだ。
失速した心は、どこまでも沈んでいく。
深い海の、日の光も届かない暗闇に、沈んでいく。
ゆっくりと、ゆっくりと。
時々あることだ。
うつ病で苦しんでいた時は、毎日がこうだった。
こんな時は、いつも、またああなるのかと思う。
今日も、そう思った。
心も体も1mmさえ動かない。
それでいて、ゆっくりと沈んでいく。
危ないんだ。こういう時は。
深い沈黙の入り口にいるのを感じた。
そういえば、今日は保護猫ハウスにキャットフードを送るんだっけ。
何も考えるな。とにかくキャットフードを送ろう。
やっとの思いで体を起こして、僕は出かけた。
もう昼は過ぎ、2時になっていた。
ぼんやりしながらコンビニからキャットフードを送る。
体は動いてるけれど、心は失速している。
何かきっかけが必要だ。
それがないと僕は暗闇に落ちる。
手芸店に幽霊のように入る。
誰か合図をくれないか。ほんの少しでいいから。
ふと、何に使うか知らないけれど、妙に気を引く糸玉があった。
それを手に取った時、浮力を感じた。
この糸を使って人形を作りたいな。
そんな思いが心を1cm動かした。
その動きは少しずつ加速していく。
完成形の人形は頭にはない。
でも、糸が僕を確実に引っ張っていく。
どうやら、僕は動けそうだ。大丈夫。
今はもう通常モードに戻っている。
でも、簡単に考えないで欲しい。
僕がこんな心の動かし方を掴みとるまで、
心はどれだけ血を流したか。
僕は幸運だ。運よく自分を導くものを手に入れた。
それができず、どれほどの人々が苦しんでいるか。
合図が必要なんだ。でも、その合図がどこから来るか、
誰もわからないんだ。
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