フェアリーパープルです。黄昏森の仲間からはパープルと呼ばれています。フェアリー系の人形で、一見おとなしそうですが、結構やんちゃで向こう見ずなところがあって、みんなをハラハラさせる時があります。
僕がまだ、東京のとある街を根城にしていたころのこと。
僕が入りびたっていたジャズ喫茶には、歳のころ30代の怪しげな芸術家のグループが常連でいて。僕はドライジンをすすりながら、よく彼らの話を聞いていた。彼らは食えているのか食えていないのかわからない無名の絵描きや工芸家たちで、話を聞く限りでは、本業では食えていなくて、アルバイトで食いつないでいるようだった。いい歳をして、まだ諦めていないのかと思ったけれど、まともじゃない人間独特の雰囲気が、妙にキラキラしたものに感じて、とても魅力的に見えた。
彼らが僕に向かって、「おい、こいつはなあ、35でまだお袋の扶養に入ってるんだぜ。笑えるだろう。」と言って仲間のひとりを指さした。そう言われた彼も、まったく悪びれもせず、「お前らだってお先真っ暗だろ。変わりねえんだよ。」と笑い、その後、みんなでどっと笑った。その姿がどこか眩しくて、自分の未来が彼らのようだとしても、それも悪くはないな、とそう思った。
それでも僕は結局東京を離れてしまい、彼らが今どうしているのかは、まるでわからない。絵は今は描いていないけれど、それでも埒もなくポンコツな人形やぬいぐるみを作っているのが可笑しくなる。やっぱり僕は相変わらず、あの街のあの場所に心を置きっぱなしにしているのかもしれない。
それから、消息のわかる僕の仲間たちだが、山暮らしをしていたり、万年フリーターをしていたりするが、とりあえず元気でやってるみたいだ。
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