昨日7月5日、『探偵!ナイトスクープ』の収録があった。2本撮りで1本目の1つ目は、「1秒間で言い切れなくなる最初の数字は何?」という依頼で、最後の2本目3つ目は、「若い頃踊ったジャネット・ジャクソンのダンスをして息子を見返したい」という6つの依頼を取り上げた。

 収録後、家に帰って風呂に入りテレビを点けるある画面にくぎ付けになった。それはNHKの『時をかけるテレビ』という番組で、全盲ろう者の東大の福島智教授が母校の小学校で、指点字の助けを借りながら課外授業をするシーンだった。このシーンを見て、私のお気に入りイタリアの医療ドラマ『DOC』で、光と音を失くした息子に父親が指で息子の手に触ってコミュニケーションを取るという場面を思い出した。日本でも同じような指を使ったコミュニケーシンの方法があるのだと驚いた。ただこの福島さんが使う指のコミュニーケーションは福島さんのお母さんが考え出したものとだいう。凄い母の愛だ。

 番組はスタジオで司会の池上彰とゲストの福島智教授は、2008年に福島教授が母校を訪れた『課外授業 ようこそ先輩~みんな生きていればいい』のビデオを見ながらトークする構成だ。6年生35人の子供たちは、教壇に座る視覚も聴覚も失福島教授を理解しがたいのか不安な面持ちで見つめる。福島教授は全盲ろう者であるが18歳まで耳が聞こえていたので言葉を発することは出来る。

 福島教授は切々と自分の現状とこれまで感じてきたことを話し始めた。「光も音もない世界でいるとというのは、宇宙の中で一人ぼっちでいるようなもので、ほとんど存在しないのと同じ」「僕はドン底まで落ちても死ぬことを考えなかった」「ぼくは何が何でも生きて行こうとした。生きているということがクリアーされていれば人生が成功しているのだ」となどと熱く語り、当時前例のなかった大学進学まで考えた。先生に受験させてくれる大学があるかと相談すると、「あるかないかはわからない。先のことは分からない。まず一歩踏み出すこと。もし上手く行かなかったら、その時考えたらいい」という。先生の返事はどうにもとれるいい加減なものだったが、この「いい加減」が気持ちを楽にしてくれたようだ。このいい意味での「いい加減」を大事にしようと思ったという。この「いい加減」に出会ったことが彼のそれからの人生に重要なものとなった。社会的に不確かな存在の人間には運命を決めつけない「いい加減」が大きな救けになることがある。

 子供から「人生の中で一番良かったことは?」と聞かれて、福島教授は一瞬戸惑った。「生きていること、人とコミュニケーションすること」と答えている。宇宙の中で一人ぼっちだった福島さんが一歩前へ踏み出そうとした時、周りの人々が暖かい手を差し伸べてくれた。この時初めてコミュニケーションが取れたと感じ、生きている意義と喜びを知ったという。これに似た情景が番組の画面から読み取れる。それは福島さんの両側で指にタッチして必死にコミュニケーションを取ろうとしている指点字通訳者の二人の女性だ。この二人のやさしく差し伸べる指の動きを見ているとなぜか普遍的な愛を感じる。人間には必要な普遍的な愛を感じる。なぜだろう?

 我が『探偵!ナイトスクープ』も、これまで目の見えない人や耳に聞こえない人、車の運転をしたい半身不随の人、超ラグビー愛の亡き息子の気持ちを知るために息子になりラグビー部に入部したいというお母さんなど様々な個性を持つ人々を取り上げてきた。昨夜7月5日の放送では、謎解きが超得意な人、トイレを愛する少年、片腕のボクサーなど個性的な人々も登場した。これからも感動と愛があふれる番組を放送続けたい