尼崎は謎の街。私の番組『探偵!ナイトスクープ』でも尼崎をたびたび取り上げてきた。その一つ、およそ20年前に「どこから来ましたか?」と聞くと尼崎の人は「尼ですわ」皆と答える。本当か調べて!というような依頼が来た。大阪駅前で聞くと全員「尼ですわ」と答えた。尼崎は兵庫県にあるのに大阪の匂いがする。つい、どっちやねんといいたくなる、もやもやさせる謎の街だ。

 先日、nhkラジオの『高橋源一郎の飛ぶ教室』で尼崎出身の芸術家、松田修の著書『尼人』が取り上げられていた。耳を傾けるとたちまち好奇心に火が付き、近くの本屋に買いに行った。棚を隅々さがしても見当たらなかった。ではとネットで探したが、どこも取り寄せ商品になっていた。早く読みたいと焦る気持ちを抑えながらキーを叩いてやっと一つ見つけた。早速登録して申し込んだ。

 『尼人』は松田修の自伝だ。自分は尼崎にあった訳アリ風俗街で育ち、クラスの8割はパンチパーマという中で、別にヤンキーという意識もなくヤンチャを繰り返した結果、2度鑑別所に収容される少年時代を過ごした。と、高橋源一郎は著書の本文を引用しながら紹介している。えらヤバ!と思って聞いていると、『おかん』の話になった。どうも著者の母親『おかん』は、大変興味深い人で、なんと芸術家の息子を詐欺師と思っている。その『おかん』の誤解を解くために書いた本だという。

 尼崎、そういえば探偵の間寛平さんも尼崎に住んでいた時があり、息子さんが通う中学校がヤンキーだらけで難儀したといっていたのを思い出した。しかし、極貧の街がある尼崎や大阪の釜ヶ崎で生まれ育った私の知り合いたちは、皆凄い生活力を発揮し逞しく生きている。ダウンタウンの2人松本人志,浜田雅功も尼崎出身だし、この街はその他ガッツのある芸能人やサッカー選手など多くの有名をも輩出している。

 尼崎は確かに特別な、特殊な街というイメージが強いが、血の気が多い人々が住む岸和田に生まれ、子供時代を過ごした私にとって、どこか眩しく羨ましい謎の街でもある。