（真夜中）
母ネズミ
（薄明かりの中、神妙な面持ちで座っている）
父ネズミ
「（ヘトヘトな様子で帰ってくる）ただいま・・・。」
母ネズミ
「おかえり！
すごく心配したのよ？
連絡もなくこんな時間まで帰って来ないから・・・。」
父ネズミ
「（時計を見て）３時・・・。
そりゃ疲れるわけだ・・・。」
母ネズミ
「とりあえずソファに座って。
今、お茶出すから。」
父ネズミ
「子供たちは？」
母ネズミ
「１１時くらいまでお父さんの帰りを待ってたけど、
さすがに眠くなったみたいでもう寝てる・・・。」
父ネズミ
（子供部屋の扉を少し開けて、中の様子を見てまた閉じる）
母ネズミ
「はい、お茶。まぁ座って。」
父ネズミ
「（財布や紙などをテーブルに置きソファに座る）ふぅ・・・。」
母ネズミ
「で、何があったの？」
父ネズミ
「今朝のことなんだけど、
いつものようにこの家の食べ物を探して
台所をウロウロしてたんだけどさ。」
母ネズミ
「うん。」
父ネズミ
「突然、虫取り網で捕まって。」
母ネズミ
「人間に？」
父ネズミ
「そう。
『ヤバい！駆除される？！』と思ったら、
魔女の元に連れてかれて、魔法をかけられたの。」
母ネズミ
「・・・え？」
父ネズミ
「うん。」
母ネズミ
「・・・魔女？」
父ネズミ
「うん。」
母ネズミ
「・・・魔法を？」
父ネズミ
「うん。
話が飛躍しすぎてるけど、とりあえず聞いて。」
母ネズミ
「うん。
とりあえず聞く。」
父ネズミ
「で、気がついたら自分の体が馬の姿になってて。」
母ネズミ
「魔法の力で？」
父ネズミ
「そう。
で、カボチャの馬車を曳いて城まで行けって言われたの。」
母ネズミ
「魔女に？」
父ネズミ
「いや、俺を捕まえた人間に。」
母ネズミ
「あなた１人で曳いたの？」
父ネズミ
「もう１匹別のネズミも捕まってたんだけど、
そいつも馬に変えられてて、２頭で。」
母ネズミ
「曳けたの？」
父ネズミ
「馬になると違うね。
力もスピードも全然違う。」
母ネズミ
「そうなんだ。」
父ネズミ
「一気にお城まで駆け抜けた。」
母ネズミ
「へぇ。」
父ネズミ
「で、外で待機してたら０時の鐘がなって、
その人間が走ってきて『０時だから！０時だから！』って言うの。」
母ネズミ
「どういうこと？」
父ネズミ
「よくわからないけど、
深夜割増がバカにならないと思ったからなのか、
ものすごく急かすから同じ道を戻ったんだよね。」
母ネズミ
「そうなんだ。」
父ネズミ
「でも、気がついたら俺ももう１匹もネズミの姿に戻ってて。」
母ネズミ
「いつの間に？」
父ネズミ
「わかんない。
で、後ろ見たらカボチャの馬車もただのカボチャに戻ってて
その上に俺を捕まえた人間が乗ってるの。」
母ネズミ
「え、なに？
どういう状態？」
父ネズミ
「全くわからない。
俺らも『この状態で引っ張るの無理っすよ』って何度もその人間に言ってんだけど
『０時だから！０時だから』としか言われなくて。」
母ネズミ
「会話になってないわね。」
父ネズミ
「結局、カボチャの下に丸太を入れて
ピラミッド作る時の石を運ぶみたいな要領で
人間とカボチャをここまで運んできた。」
母ネズミ
「何かすごい１日ね。」
父ネズミ
「で、もう３時でしょ？
そりゃ疲れるわ。」
母ネズミ
「お疲れ様。
で、その仕事はなに？
今後も続くの？」
父ネズミ
「わからない。
突発的な出来事なのか、今後これが日常になるのか。
最後まで何の説明もなかったから。」
母ネズミ
「でも、仕事がもらえるんならお給料もらえるからいいじゃない。」
父ネズミ
「いや、でもあの人間の下で働くの絶対ヤバいよ。
間違いなくブラックだよ。」
母ネズミ
「そうね。」
父ネズミ
「馬車馬のように働かされて・・・。」
母ネズミ
「『ように』というか、馬車馬として働かされたわよね。」
父ネズミ
「とりあえず明日以降もどうなるかわからないから。」
母ネズミ
「わかったわ。
でもよかった。
無事に帰ってきて。明日の朝になっても連絡つかなかったら
警察に相談しようかと思ってたんだから。」
父ネズミ
「馬の姿だとスマホも使えなくて。」
母ネズミ
「そういうことね。
てっきり、ねずみ取りにでも捕まったかと思ったわ。」
父ネズミ
「ホントごめん。
心配かけて。」
母ネズミ
「ん？
（テーブルの上に置かれた紙切れを見て）この紙はなに？」
父ネズミ
「あぁ、行きの道中でスピード出しすぎて切符切られた。」
母ネズミ
「一応、ねずみ取りにはひっかかったのね。」
別目線から見るおとぎ話。
今回はネズミ目線のシンデレラ。
意外とこの目線から見たコントってなかったのでは・・・？
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