プロレスクラシック~伝承~第12回TV感戦記 | 俺ってデビルマン!?

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知ってる人は知ってるし、知らない人はまったく知らない…私、元・週刊ゴングの鈴木淳雄と申します。かつて所属していたプロレス業界に限らずに、今現在の私をありのままに記していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

 今回の放送は1989年6月5日の日本武道館大会。今にして思えば、この頃はプロレス界全体が一大転機を迎えていたのではないだろうか? この放送を見て、改めてそう思った。

 馬場政権時の全日本、特に鶴龍時代までは、古き善きアメリカン・プロレスをしっかりと受け継ぎ、まさに王道ファイトといえる闘いを展開していた。

 しかし長州を初めとするジャパン勢が参戦してくると、そこにスピーディーでスタンディングを中心としたハイスパート・プロレスと呼ばれる部分が重視されるようになり、やがてロード・ウォリアーズの出現によって大技オンリーの攻防ももてはやされるようになった。

 ちなみに今回の放送で最初に流された試合、百田vs寺西の世界Jr戦などは、いわゆるオーソドックスな伝統を引き継ぐ、ならではの試合展開であり、逆にスパイビーvsスティングは当時の最先端、とにかく連続的に大技を叩き込んでいく、やたらと見た目に派手な試合である。

 別に両者の優劣を問うつもりはない。馬場が常々語っていたように、プロレスとは色んなスタイルがあり、そのすべてを含んだものがプロレスなんだと、つまり小さな枠にとらわれない、プロレスとは本当に大きな世界なんだと、それを体現して見せていたのが当時の全日本なのだろう。

 そういった意味でも、この日のメインで行われた鶴田vs天龍の三冠戦は、本当にその頂点の座を争うにふさわしい素晴らしい闘いであった。

 基本に忠実なじっくりとした序盤の攻防も、スタンディングで激しく撃ち合うラフ的な展開も、大技を連続的に叩き込んでいくハイスバートな展開も、あらゆる要素を含んだ極上のプロレス。

 それを共に190cm近いスーパーヘビー級の日本人同士で行っているのだから、その迫力とその価値観たるやいうまでもない。

 スティングの試合が敗れたスティングのトップロープ越えスーパープランチャの印象しか残らなかったように、常人を超えた人間同士だからこその、素晴らしい世界がそこにある。

 やはり、鶴龍対決は全日本のみならず、プロレス界を代表する最高峰の闘いといっていいだろう。

 全日本プロレス=王道スタイル。それはあらゆるエッセンスを交えても変わらない部分は変わらない、変えない、いい意味で取り入れながら、しっかりと伝統を守っていく、それ故のメジャー大国・全日本であったといえる。

 馬場時代から受け継がれた鶴龍時代、この一戦はある意味、その象徴となる大会だったのかも知れない。


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