ここ数年、独走状態を続けている新日本を追いかける第二の団体とされているのは、やはりプロレスリングNOAHであろう。
かつて新日本が存亡の危機に立たされたとき、その盟主の座を手中にしていたのは、このNOAHである。
やがてNOAHが地上波TV中継の打ち切り、選手の離脱&引退などで急降下をしてしまったときに、選手の世代交代を成功させて盟主の座を再び奪還したのが、かつての盟主・新日本であった。
今度はNOAHが存亡の危機に立たされたが、これを救ったのが意外にもライバル関係にある新日本で、表向きには鈴木軍の侵攻で完全なる敵対関係にあったが、経営面のヘルプでNOAHは窮地を救われていた。
やがてNOAHも度重なるオーナーチェンジの果てに回復の兆しを見せ、サイバーエージェント・グループ入りすることで経営も安定。新日本の独走に迫る最右翼として期待が高まっている。
がしかし…、今のNOAHはどうなのだろう?
こちらも新日本同様に、本来の良さを失ってしまった感がある。選手の軽量化は今に始まったことではないが、もっと重大なことが実際にリング上で起こっていた。
こちらの記事を読んで頂きたい。実際に会場に行っていた訳ではないし、中継を見ていた訳ではないのでその状況は分からないが、何と試合中にボイコットして、対戦中の選手がリングから去ってしまったというのだ!
リングを後にしたのは鼓太郎と論外、取り残されたのはGHCジュニアタッグ王者の小川とHAYATA。王座挑戦を控えたセコンドの日高も介入し、小川の足を徹底的に痛め付けるや、もう用は済んだとばかりにリングを後にし、そのままリングアウト負けになったという。
タイトルマッチの前哨戦であろうがなかろうが、会場にチケットを買ってやってきてくれたお客さんには関係のないこと。しかもこのコロナ渦にあえて観戦に来てくれているファンを前にして、途中で放棄して試合を投げ出すなんて、絶対にあってはならないことだ。
「プロレスをもっとメジャーなモノにしたい!」
といってNOAHを設立した三沢光晴は、どんな会場の、どんなカードであっても来てくれたお客さんに満足してもらい、また観戦してもらえるように常に全力ファイトをすることを信条としていた。当然、その姿勢は三沢だけでなく、他の所属選手にも伝わっていた。
必死に勝負した上でエキサイトしてリングアウトや反則決着になったのならまだしも、途中で試合を投げ出すなんて。三沢や小橋らが作り上げてきたNOAHの世界観=プロレスからすれば、間違いなく、厳罰ものである。
確かに話題性が乏しいことがNOAHの弱点とも言われていたが、それにしてもやっていいことと悪いことがある。
会場までやってきてくれた観客、中継を見てくれているファン、その誰もが支払ってくれている代金がひとつひとつ積み重なって自分たちのビジネスが成り立っているということを理解していれば、試合放棄などという愚かな結果はありえないはずだ。
これは、昔なら暴動が起きてもおかしくない事件である。もちろん、暴動はあってはならないことだが、試合放棄もそれに等しい、ファンを冒涜した行為である。一定期間の出場停止、罰金刑があってしかるべき。話題性がほしいならなおさらのこと、サラッと流していい問題ではない。
NOAHというプロレス団体の強みは、ファンとの強い信頼関係から成り立っていた。NOAHに行けば最高のプロレスを楽しめる、誰を連れて行っても共に満足して帰れる、それが一度は盟主になり得た最大の秘訣であったといえる。
それを思えば、試合放棄などどんな会場、どんな状況であってもあってはならないこと。目の前の1試合を大切にできないようでは、選手権に出る資格はないし、プロのアスリートとして失格である。
『GHCの真実2020』