プロレスの魅力 | 俺ってデビルマン!?

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知ってる人は知ってるし、知らない人はまったく知らない…私、元・週刊ゴングの鈴木淳雄と申します。かつて所属していたプロレス業界に限らずに、今現在の私をありのままに記していきたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。

"プロレスの魅力"
といっても、そこには多種多様な要素があるので一言では言い表せない。アメリカマットのようにエンターテイメント的要素を重視して魅せるスタイルもあれば、日本マットのように勝負論ありきで闘いが重視されるものもある。となれば当然、そのマットによって見せ方も変わってくるし、見る側にとっても楽しみ方は変わってくる。

 ただ歴史の積み重ねによって日本マットの事情もかなり様変わりしてみせた。エンターテイメント、デスマッチ、ルチャ、格闘スタイルなど、団体それぞれの個性を打ち出すことで固定ファンの支持を得て、成功している団体も数多く存在する。それでも、今の日本マットで名実ともにメジャー団体と呼べるのは新日本のみ。そこには全ての要素を併せ持つ豊富な陣容と企画力、実行力の違い故にそう評価されているといえる。

 それでは、新日本以外の団体の何が問題でメジャーとはなり得ないのか?それは一言では語りきれないが、一番の問題はその企画力のような気がする。

 まず原点に戻って考えてみてほしい。日本プロレス界の父・力道山は戦争に敗れて沈むこの国に、生きる活力を与えてくれた。屈強なアメリカ人レスラーを空手チョップでなぎ倒すその様は、まさしく国民的ヒーローとして君臨した。やがてBI時代となり、馬場は世界最高峰と言われるNWA世界王座を3度獲得。対する猪木はストロングスタイルを標榜し、異種格闘技戦でプロレスの強さをアピール。馬場は"純粋なプロレス=王道"を突き詰め、猪木は"強さこそ正義=ストロングスタイル"を突き詰めたのである。

 闘魂三銃士、全日四天王の時代になると、さらにプロレスは多様化していった。四天王は"究極のプロレス"を突き詰め、三銃士はアメリカ的要素を日本流にアレンジ。新世代のヒール、軍団抗争の熱さを巧妙に取り入れ、一大ムーブメントを起こしたのである。この地上波TV中継を持つ二大メジャーに負けじとインディーの枠に留まらず台頭してきたのが大仁田厚率いるFMW。電流爆破、ファイヤーデスマッチなど、これまでにない過激なデスマッチのリングに往年の名レスラーを巻き込むことで、メジャー顔負けのビッグマッチを連発。年に何度もドーム&野球場で興行を行う新日本とFMW。当たり前のようにシリーズ毎に日本武道館大会を行う全日本。ある意味、この時代は日本プロレス界にとって最も輝いていた時代といえるのかも知れない。

 ではこの時代と今の日本マット界を比較してみたらどうだろう? 正直、新日本以外は細分化されてしまった現状では、多くの新鮮な外国人選手を呼ぶことはできず。日本にいる限られた日本人選手と留学してきている外国人選手のみで興行を行い、同じようなカードで、延々とタイトルマッチとその前哨戦を繰り返しているという印象が拭えない。

 プロレスに求められるのは非日常の世界。だから驚きと輝きこそがファンを惹き付ける最大の魅力だ。だからこそ、何を見せることで見る者を魅きつけるのか⁉ 熱くさせるのか⁉ もっと考えてほしい。確かにいい試合を見せることが一番大事なことは言うまでもない。ただそれだけでは日常の枠を越えられず、非日常の世界を作り上げるまでには至っていない。

 資金力がなければアイデアを練ればいい。信用がなければバックアップしてくれる仲間を集えばいい。ただ闇雲に同じことを続けていくだけでは、窮状を打破することはできない。勝負をかけるべきポイントでは総力を結集して大勝負を仕掛けていく、その度量がなければ新日本一強時代を打ち砕くことなど不可能だ。

 5カウント以内なら反則が許される曖昧さがプロレスの魅力である。ならば試合内容のみならず、それ以外の面でも考えに考えていけば、必ずや浮上の鍵は隠されているはず。かつて全日本や新日本がなぜ大国を維持できたのか? FMWやUWFがメジャーに負けずとも劣らない活躍をしてみせたのか? その答えが分かれば、自ずと道は拓けるはずだ。