成人看護学:向老期 | 看護学生時代の勉強ブログ。

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向老期の心理的・社会的特徴と発達課題


向老期とは…
 近年、個人差もあり暦年齢のみをもって成人期と老人期を区別する事は難しく、
 こうした状況に対応する為に成人期から老年期への移行期として向老期が設けられている。
 レビンソンDJ、ライフサイクルの心理学では向老期を”老年期への過渡期”としている。
 年齢的にはおよそ60歳~65歳ぐらい。
 心身の老化・衰退の防止に努め、その後の人生を充実させて生き生きと豊かに過ごす為に、老年期 
 に向かってアイデンティティの再編を図る時期。

段階 :向老期 
状況 :視覚・聴覚 ・ 記憶・体力の衰え・配偶者など近親者の死
課題 :老化への適応、喪失経験の受容
危機 :受容、諦観、絶望   
・忍び寄る心身の衰えの自覚や定年を迎え、人生の節目とも重なることから、自己像のゆらぎを体験する。


<発達課題>
老化への適応、喪失経験の受容
(1)肉体的な力や健康の衰退に適応すること。
   →身体能力の減退を受容し、知恵や経験といったものに価値観を移行して行く事が重要
(2)地位・役割の変化への適応
   →向老期の変化として地位や役割の損失を意味する事が多く、個人にとって危機的な体験である。
(3)心身の老化・衰退の防止に努め、 老年期に備えて準備をする。
(4)親や配偶者など近親者の死に適応する。

多くの人は、長年の経験や知識を利用し、それまでに培った人間関係を支えとして、精神的には円熟・調和の方向へ発展する。

<向老期と社会問題>
更に現代の社会問題として、50~60代前半の自殺者増加が挙げられている。
向老期である60代では、自殺の動機の上位は「健康問題」「経済・生活問題」である。
リストラの嵐の中で実質所得が減少、住宅ローンなどの借財がのしかかる。健康にも自信が持てない。
等の悩みを抱えている場合が多い。
向老期は社会情勢や経済状態の波を大きく受けやすいともいえる。



発達課題・生活習慣と病気の関連について


向老期には「老化への適応と損失経験の受容」という発達課題があり、それらは生活習慣にも大きな影響を与える。


①栄養・食生活
男性も女性も年齢を重ねるごとに、肥満の人が多くなっている。
これは、年齢を重ねるごとに基礎代謝が落ちることが原因だと考えられる。
また、塩分摂取量の増加も問題視されている。
向老期では、環境の変化や喪失経験によるストレスが食生活に影響を及ぼしやすいため、食事の管理を気をつけることが大切である。

②身体活動・運動
男女ともに運動習慣のある人が増えている。これは、一般的に向老期が退職する時期で
自分の時間が増えることから、運動する人が増えたと考える。同じように、女性も子供が自立をし、時間の余裕ができるからである。

③休養・こころの健康づくり
向老期は、子育てが終わったり退職したり、公私に渡って役割の方向の転換を迫られる時期である。また、自分の死を受け入れる準備をする時期である。様々なストレスが多いこの時期は発達課題として老化に伴う身体的変化と、社会的役割からの引退に適応することが重要となる。そのために、体の休息はもちろん、他者との関わりや趣味や生きがいを持つことが必要となる。適応することができないと、抑うつ状態に陥ることや健康にも影響を及ぼすことがある。

④たばこ
向老期は壮年期に比べて喫煙率は下がっているが、老年期への過渡期である向老期は肉体的に老いる時期でもあり、喫煙に起因した病気が、非喫煙者より起こりやすくなる。長年にわたる喫煙により肺がんになるリスクが上昇する。。60代からでも禁煙すればガンなどの発症率を下げることができるのだが、この年代の人はもう遅いと諦めたり、環境が変わる、近親者の死などによるストレスからやめられないことも多い。

⑤アルコール
厚生労働省の研究班が行った調査で、依存症の割合は世代別では70歳代が2.9%で最も比率が高く、60歳代(0.9%)、50歳代(0.7%)と続くと伝えた。※参考文献 朝日新聞 04/06/18
向老期の世代でアルコール依存症を発症する患者が増えている。
健康日本21では、予防策として知識の普及や啓発などを含めた飲酒側の対策だけではなく、アルコール販売側の対策も必要とし取り組んでいく事が求められている。

⑥歯の健康
50歳以降では平均して2年に1本強の歯が喪失しており、向老期である60歳ですでに17.8歯と20歯を下回り、80歳以上の1人平均現在歯数は4.6歯となっている
※参考文献  厚生省健康政策局歯科保健課,平成5年歯科疾患実態調査,1993.