東洋医学で考える ~味付けと健康・病気の関係①~ | ゴッドハンドではない鍼灸師の日々これこれ

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あすなろ院長が臨床で感じたこと、その他について気軽に書いていきます!(*^-^*)

皆さんは日ごろ何にでも醤油をかけたり、ついつい甘いお茶菓子を食べ過ぎたり、酒の肴として油の多いものや辛い物など摂り過ぎたりしていませんか?

これら塩分や砂糖、油の取り過ぎについては口酸っぱくいわれている人もいるかと思います(私も人のことは言えませんが・・・(-_-))

体質によって好きな味や嫌いな味があったり、病状によって摂った方が良い味や摂らない方が良い味が東洋医学には存在します。現代栄養学とは少し異なる世界もあるかもしれませんが、ちょっと変わった東洋医学的な味と健康観が覗いてもらえばと思っています。

味覚の話をする前に(珍しく)東洋医学の基礎概念である陰陽論と五行説のことを載せておきました。陰陽と五行の考えは東洋思想の根底をなすもので東洋医学をやる人には非常に大事な考えで、鍼灸学校でもしっかり学ぶ分野でもあります。

 

 

○陰陽と五行って知っていますか?

陰陽とは世の中のすべてのものを陰と陽に分けて把握しようとする考え方です。この考え方は「易」からきているといわれており、中医学の分野にも相当古くから存在している概念です。

下の図をみると何となく”陰”と”陽”のイメージが湧いてくると思うのですが如何でしょう。

秋冬

冷やす

鎮静

下る

入る

収斂

潤す

太陽

春夏

温める

活動

上る

出る

発散

乾かす

 

五行も相当古くから存在する概念で、木、火、土、金、水の五つの性質にすべてのものを当てはめていて分類したものです。2つ合わせて陰陽五行説といったりします。

五行

五色

五方

五季

五邪

五臓

五腑

五主

五官

五志

五味

五華

五精

小腸

血脈

中央

土用

湿

肌肉

思憂

意智

西

大腸

皮毛

膀胱

驚恐

精志

 

木は伸びやかに成長する木、火は熱く燃え盛る火、土は生命の根本・滋養、金は凛とする静寂・金属、水は冷たい水のイメージが基本にあります。

木を例に挙げますと中国の東方は樹木が青々と繁茂し、大海(青)に面している地域です。ここでは春になると、植物が一斉に活動し、春一番(風)が吹きます。

例えば、伸びやかになっていることを好む性質の”肝”は「疳の虫」という言葉から分かるようにストレス(怒)と関係し、抑えられるのを嫌う臓器です。肝は血と関係が深く、これらは筋肉や目、爪と関係が深いです。5邪では”風”が該当し、「脳卒中」のことを昔は「中風 風に中る(あたる)」と言っていましたが、脳血管疾患は東洋医学では肝の病証であることが多いです。

東洋医学でいう臓器は西洋医学の臓器とは異なり、例えば”心”はまるっきり心臓そのものではなく、「精神」も心の分野となっていて、解剖学的な臓器とは切り離して考えなければなりません。

 

 

◎酸っぱいものは肉体疲労、イライラ、血圧高め、食欲ありすぎ、お酒のみの方に特にどうぞ。

酸味は収斂作用(縮む)があり、熱を抑えたり引き締めるような働きをします。ここでいう熱とは体温計で計る熱だけではありません。平熱ですが様々な臓器の水分が無くなり乾燥気味になっている状態も東洋医学では「熱」と考えます。

この熱が身体の様々なところに波及して病気を起こします。例えば高血圧や動悸、食欲亢進、便秘、イライラ、目の充血なども熱の症状と考え、この熱を抑えるのが「酸味」のある食物です。

酸味と関係が深い臓器に肝があります。肝は血を貯めこんでる臓器で、疲労や病気などでこの血が肝に無くなると目の疲れ、筋肉性の痛み・疲労、女性器疾患、男性器疾患などを引き起こすとされています。

酸味は血を肝に集める作用を強くし、筋中の血を増やすことで肉体労働などによる疲労・だるさを取り除きます。また、イライラしたりするとすぐに発散したい為、トウガラシやコーヒー(これらは五行では辛に属する)を飲みたくなりますが、肝血不足から起こるので実は酸味を取った方が良いのです。

また、熱を抑える作用がありますので、血圧が高めの人や食欲亢進気味の人、お酒をよく飲む人は食事や酒の肴に酢の物など取ることをお勧めします。

逆に冷え症で、食が細く、胃腸が弱い、低血圧気味のいわゆる陽虚証タイプの人はあまりお勧めできません。それは、酸味の収斂作用は熱を抑えたり、引き締める作用がありますので、陽気の少ないこのタイプはますます陽気が無くなるからです。苦味も同じことがいえますのでご注意を。

酸味の食べ物にはすっぱいものや青いもの、例えば青菜、レモン、リンゴ、梅干し、酢などがあります。

 

 

 

☆さらに熱をとる苦味。夏にゴーヤは良いんです!

苦味は酸味の収斂作用がより強まったものです。苦味と関係の深い臓器に心があります。心は肝が蓄えた血を全身に送っている活動的な陽の臓器です。心が活動的に動くことは良いのですが、逆にいうとオーバーヒートしやすい臓器ともいえます。健康ならば心の気がラジエターして働いていますが、加齢やストレスなどで心が干上がると心熱が発生し、高血圧や動悸などの症状を現します。それで普段から酸味や苦味といったものを適当に摂り、熱を抑えることが必要になってきます。また酸味でも述べました食欲亢進や便秘などの症状にも苦味は良いです。

日本では鎌倉時代に栄西という人が「喫茶養生記」(1214年)という書物に心臓に対する苦味の必要性としてお茶の効能を説いています。

苦味の食べ物には苦いもの、例えばピーマンや春菊、ゴーヤ、青汁、日本茶などがあります。

 

続く