執行猶予中に殺人事件を起こした神戸の事件で、

不思議だった事が、

執行猶予者の保護観察処分が、

令和5年では僅か5.9%で、

平成以来最低だったと知り、

合点がいった。





逮捕されたこの事件の谷本将志容疑者が、

執行猶予中の事件を3年前に起こした後、

何故神戸から東京へ転居できたのか、 

不思議だった。


5年前の最初のストーカー事案では、

略式命令の罰金刑だった。

それでも前科はつくはずなのだが、

3年前の事件で裁判官は、

再犯リスクの高さに言及していながら、

保護観察をつけていなかった。


罰金刑であっても3年前の時点で既に再犯だった訳だ。

であれば、保護観察をつけずに野放しにした裁判官の罪は重い。



保護観察がついていれば、 

自由に転居もできないし、

定期的に報告もしなければならない。

そうする事で罪に向き合える。


だが執行猶予だけなら、

生活は何も変わらない。

引っ越しも転職も自由。

本人にとっては無罪放免と何ら変わらない。



昭和後期には約20%だった保護観察率が、

徐々に下がり、遂には6%を切ったそうだ。


何故か。


保護観察をつけると重罪化のイメージがあり、

裁判官が行為責任を超えさせないために、

窃盗や傷害事件などで保護観察をつけない判断をする傾向が強まったことが主な要因らしい。

実際、谷本容疑者の3年前の事件も、 

殺人未遂で逮捕されたにも拘らず、

起訴は傷害で保護観察はつかなかった。


そういう判例が積み重なり、 

法の世界では前例主義(判例法主義)が当たり前になっている為に、

保護観察をつけない判決がどんどん増えてきたと考えられる。



確かに保護観察をつけたから再犯が減った、という明確な数値はない。

つけた場合とつけなかった場合の、

比較対象ができないからだ。



だが裁判員裁判の場合、

保護観察率は50%を越える。

これは、元々重罪を扱っている、という事もあるだろうが、

野放しは怖い、という普通の市民感情もあるのだろう。


つまり裁判官の判断は、

市民感情と乖離しており、

その結果、被告に軽い判決を下し、

軽く見られて再犯されているのではないのか。



過度に重罪化する事が良いとは思わないが、

少なくとも即収監されず、

執行猶予がついて普通の生活が継続できるだけでも、

犯罪者にとって、十分な温情だと思うが。


せめて執行猶予期間中位、

自分は執行猶予がついているだけで、

違反すれば取り消されて実刑になる、と思い出させる事は必要で、 

その為にも定期的に報告させ、

面談をする事は意味があると思う。



勿論、執行猶予が明けてから再犯する可能性はある。

保護観察をつけたからといって、

再犯が全て防げる訳では無い。

だからといって、

実刑以外は無罪放免と同等、でいいのか?



谷本容疑者に保護観察がついていれば今回の殺人が起こらなかったかどうかは、

正直分からない。

だが少なくとも、

保護観察がついていれば、

執行猶予中だという自覚位は持ったのではないか。



保護観察の扱いともう一つ、

性犯罪やそれに繋がるストーカー犯罪の被疑者には、

カウンセリングを義務化する様に、

法律を変えて欲しいと思う。


この手の犯罪は繰り返すし、

次第にエスカレートする傾向がある。

それを止められる可能性があるのは、

法律家ではなく、医療だと思うからだ。


早急な対策を望みたい。