尊属殺の違憲判決 | Asuka in Wonderland

    朝ドラ、虎に翼が最終週になり、

    いよいよ明日、

    尊属殺に違憲判決が下りる。


    我々は結果が出てからこの事件を知り、

    内容からしても当たり前だろう、と思っていたが、

    当時そう判断した最高裁の15人の判事には、

    数々の葛藤や圧力があった事を、

    このドラマで初めて知った。



    この事件については以前、

    別件に絡めて書いたことがある。



    (この父親はその後、

     高裁で無罪を破棄され、

     最高裁まで争ったらしいが、

     懲役10年が確定している。)



    親を敬え、というのは、

    道徳的には間違ってはいないのだろう。

    だがそれはあくまで、

    当たり前の親に対しての話であり、

    「本件において、道徳の原理を踏みにじったのは誰か?」と強く問いかけた、

    ヨネさんの弁論は説得力があった。


    「暴力行為だけでも許し難いのに背徳行為を重ね、

    畜生道に落ちた父親でも彼を尊属として保護し、

    子供である被告人は服従と従順な女体であることを要求されるのでしょうか? 

    それが人類普遍の道徳原理ならば、

    この社会とわれわれも畜生道に落ちたと言わざるをえない。いや畜生以下、クソだ!」と大法廷の場で言い放ち、

    弁護人は言動に気を付けるように、と注意を受けたものの、

    判事達の心に響いたのだと思う。


    ま、実際に当時の弁護人が、

    こんな言い方をしたとは思わないけどね(笑)


    21世紀になった今でも、
    改憲にはアレルギー反応を起こす日本人は多い。
    それと同様に、違憲判決も滅多に出ない。
    何しろ施行から77年が過ぎても、
    法令が違憲と判断されたのは、
    たった13例に過ぎない。

    ましてやこの時代、
    激しい抵抗もあっただろう。
    この余りにも酷い事件でさえも、
    違憲判決を下すのは簡単ではなかったのだ。


    だからこの裁判が、
    初めて違憲判決を出した事で、
    風穴を空けてくれた、と言えるかもしれない。


    違憲判決は15人の判事の、
    全員一致でなければならない。
    あの時代に、全員一致で違憲である、と判断した判事達には、
    かつて法律を齧った1人として、
    心から敬意を表したいと思う。


    だが、時代が変わり人も変わり、
    時代や人に合わない法律も出てきて当然なのだ。
    今だに遅々として進まない、
    選択的夫婦別姓問題でも、
    保守的な人が徐々に減っては来ているものの、 
    必要な人だけ選択すればいい、
    同姓で問題ない人は同姓を選択すればいい、のだから、
    何が気に入らなくて反対しているのか、
    サッパリ理解できない。

    横並びを良しとしてきた日本の文化が、
    こんな所にも現れているのか。
    個性を伸ばそう、
    個人を尊重しよう、とお題目の様に言いながら、
    実態が伴っていない様に思うのは、
    私だけだろうか。


    今回、いわゆるホームドラマを作ってきた朝ドラが、
    こういうテーマを選んだ事は興味深い。
    勿論、家族の問題も内包しているが、
    そこに法律を絡めた意義は大きいと思う。

    少なくとも自分には関係ない、と、
    今まで知識も関心もなかった人々が、
    興味を持って下さったのなら、
    取り上げた意味があったのではないか、と思う。

    後3日、楽しませて貰いますわ。