清水宏監督による日本のドラマ映画。出演は岡田嘉子、大日方伝、千早晶子。
<あらすじ>
北海道へ向かう船。渡り者の坑夫健二たちと流れ女お浜らは海峡を渡り、北海道の炭坑町に着いた。男達はお浜らの働くバーに遊びに行った。そこで、若い健二とお藤はお互いに惹かれていった。が、お浜と健二もお互いに何となく意識するようになっていた。
一方 坑夫頭のぐず安はお浜を狙っていた。お浜とお藤、健二とぐず安がそれぞれ恋の葛藤を続ける。健二はお浜の娘おみつの遊び仲間で、ある日、お浜は健二から娘に対する母としての愛を教えられた。
健二の親友忠公もお藤に惹かれていたが、お藤の心が健二に向いていると知って忠公は気を落とした。
その夜、炭坑では落盤が起こって忠公が命を落とした。健二は、忠公の死を鼻で笑うぐず安を殴り倒した。そして、お浜たちの屋根裏に逃れ、お藤は傷ついた健二を労った。そこに子分を連れたぐず安が乗り込んできた。
お浜の計らいで健二とお藤は出航する船に逃れていく。お浜は無事を祈りながら窓から寂しく船を見送った。
<雑感>
戦前の松竹映画。フィルムの損傷がかなり激しい。BGMがないなど、当時の様式なので戸惑う人がいるかもしれない。また世相もいまと随分違う。
若い男女の恋愛に、子持ち未亡人の年増女が横恋慕する話。お浜は健二に惹かれながらも女として見てもらえず、子供の世話のことで説教される哀れさ。またこの子供が健気で「今日も抱っこして寝てくれる?」などとお浜にねだる。
お浜も「これからは毎日抱っこして寝てあげるさ」などと健二の忠告を実行するが、結局は若いふたりのために骨を折っただけで、自分は北海道に取り残される。
北海道についても、おそらくいまとは感覚が大きく違うだろう。最後にお浜が南の国への憧れを口にするところなど、1933年はかなり切羽詰まった科白だったはずだ。
☆3.4。映像と演出に見どころの多い作品。様式が古い点を考慮すれば楽しめる。