「私、オルガ・ヘプナロヴァー」(2016年作品)感想 | 深層昭和帯

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トマーシュ・ヴァインレプ、ペトル・カズダ監督によるスロバキア、チェコ、フランス、ポーランドの犯罪映画。出演はミハリナ・オルシャニスカ、マリカ・ソポスカー、クラーラ・メリーシコヴァー。

 

 

<あらすじ>

 

オルガ・ヘプナロヴァーは、DVを繰り返す銀行員の父と、歯科医で娘に愛情を注がない母の間で育った。彼女は鬱状態となり、コミュニケーション障害を患い、引きこもりになって、13歳で精神病院に入れられる。退院後は両親と絶縁し、製本工場やドライバーとして自立する道を選んだ。

 

レズビアンの彼女は、社会主義国であったチェコスロバキアにおいて性的障害者と見做されており、孤独感が癒えることはなかった。

 

そしてオルガは、路面電車を待つ群衆にトラックで突っ込み、8人を殺し、12人を負傷させる。彼女はチェコスロバキア最後の女性死刑囚となった。

 

<雑感>

 

いつの時代にもある、わが身の不幸を社会の責任にする人間の話。彼女は社会主義国に生まれたことを後悔しており、アメリカに生まれれば沈鬱で暴力的な家庭で育つこともなく、両親からもっと愛情を注いでもらえ、友人も多く作ることができ、レズビアンでも生きていけた。

 

勝手にそう考えている。実際はどこでも同じような運命になることはあるのに、すべてを社会の責任に押し付け、何の罪もない人間を殺す。そして、自分をもっと早く処分しなかった社会が悪い、自殺などしない、私を殺せと死刑を迫る。宅間守と同じ人間なのだ。

 

そういう特殊な人間を、BGMなし、説明なし、描写のみで描いている。映画としては演出を極力控えながら、オルガ・ヘプナロヴァーという人物に感情移入するように作ってあるので、決して悪くはない。ざらついた印象のあるモノクロの画面も効果的だ。

 

☆3.4。映画としてはよくできているが、かといってこの人物に感情移入するほどオレは子供じゃない。