「非難」(1950年作品)感想 | 深層昭和帯

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ジャコモ・ジェンティローモ監督によるイタリアのサスペンス映画。出演はレア・パドヴァニ、マルチェロ・マストロヤンニ、アンドレア・チェッキ。

 

 

<あらすじ>

 

レナートと、結婚して夫がいるイレーネは洋裁師の家で逢引きをした。ふたりは幼馴染で愛し合った仲だったが、イレーネは会ったことを後悔していた。ふたりが喧嘩している最中、イレーネの夫マッシモ・ルスカが洋裁師を訪ね、弾みで彼女を殺してしまった。彼は用心深く逃げた。

 

翌朝になると新聞が殺人事件を騒ぎ立てた。犯人として疑われたのはレナートだった。イレーネは警察に出頭して潔白を証明しようと説得するが、レナートは証拠がないと断った。レナートは小学校の教師、イレーネの夫は弁護士。事件に関する知識が違いすぎた。

 

イレーネは頻繁にレナートに会い、怯える彼を励ました。そして愛のない結婚に決着をつけるために夫マッシモに別れを切り出した。若い妻と別れたくない彼は、警察がレナートを捕まえれば解決すると信じた。そこでまず、イレーネ宛に金を要求する手紙を送り、目撃者の女性を殺した。

 

危険を感じたレナートは、警察に自首した。真実を話すしかないと覚悟したのだ。だが、イレーネの存在を隠して証言するために逆に怪しまれた。そしてレナートの弁護は、マッシモが担当することになった。マッシモはこの依頼を進んで受けた。

 

そのころ警察は、レナートの交友関係を洗うなかで、イレーネに事情を聴いた。イレーネはレナートを庇うためにウソの証言をした。だが警察は、目撃されたコートがマッシモの家にあるのを目にした。ふたりの関係を知られたマッシモは、妻が浮気をしている恥ずべき事実の前に震えた。

 

妻も、夫に殺される夢を見て、彼に怯えるようになった。警察にはほとんど自分を有罪にする証拠はないが、このままでは妻は自分から離れていく。思いつめた彼は、妻を殺そうとする。マッシモの関与に気づいた警察が家に踏み込んだとき、彼は拳銃で自殺していた。

 

<雑感>

 

古い作品ではあるが、なかなか凝ったサスペンスだった。マッシモは洋裁師の家を出るとき、家の中の金品を洗いざらい奪った。これにより物取りの犯行と思わせることができたが、普通は奪わないコインまで奪っていること、貴金属品など売らねば価値のないものまで盗んだ。これが結果として刑事に怪しまれる。

 

妻を怖がらせようと脅迫文を送った際に、イレーネは売れるものはないかと家の中を引っ掻き回して、マッシモが奪った貴金属を見つけてしまう。逆にレナートは、コインを奪うほど生活に困窮していないし、派手な支出もない。

 

そして刑事がマッシモの家で発見したコートは、マッシモが殺した目撃者のものだった。さらに、マッシモが目撃者の女性を隣に乗せて外出したことは、彼女が手袋を助手席に忘れていったことで証言されてしまう。刑事と弁護士は、互いに確証がないまま、相手がすべて知っているのではないかと疑心暗鬼になった。

 

最後は、イレーネが自分を恐怖するようになったことで、マッシモが勝手に破綻する。この部分のサスペンスの盛り上げ方がとても上手い。

 

☆4.8。古典的なサスペンス映画としてはかなり上の評価。