「ランジュ氏の犯罪」(1936年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ジャン・ルノワール監督によるフランスのサスペンス映画。出演はルネ・ルフェーブル、フロレル、ジュール・ベリ。

 

 

<あらすじ>

 

アメデ・ランジュは小さな出版社で働くかたわら、仕事の合間に冒険小説アリゾナ・ジムの冒険」を書いている。金と女にだらしない社長のバタラは、経営が傾くとランジュをだまして彼の小説を無断で出版する。小説はベストセラーとなるが、バタラは行方をくらましてしまう。

 

債権者や警察から逃れるために高飛びするつもりだったバタラだが、列車事故に巻き込まれて死んでしまう。アリゾナ・ジムの冒険」の権利はすでに売り払われていていた。連載は打ち切りにするしかなく、ランジュはどうしたらいいかわからない。

 

ランジュの恋人エステルはバタラの子供を妊娠してしまった。エステルはさらに別の男性と付き合っていて、ランジュのところに来そうにない。それでもランジュはめげずに、出版社を再建させた。アリゾナ・ジムの冒険」のおかげで経営は安定した。

 

しばらくしたころ、ランジュの前にバタラが姿を現した。彼は事故で死んでいなかったのだ。多額の借金を残して逃げていたバタラは、出版社は自分が作ったもので、社長に復帰する権利があると言い出した。怒ったランジュは、彼を撃ち殺してしまった。

 

ランシュは、恋人を連れて逃亡する。

 

<雑感>

 

これは経済に関する問題を提起した作品。バタラは自分で作った出版社で放漫経営をする。会社の金を使い込み、愛人に貢ぐ日々を送り、借金ばかりが増える。そして社員が書いた小説を無断で加筆して雑誌に掲載。金は払わず、儲けた金でさらに放蕩の日々を送り、最後は逃げてしまう。

 

ランジュは自分の小説の権利を取り戻して、出版社を立て直し、会社を組合のものにする。これで社員は救われ、給与が出るようになる。またそこにバタラが現れ、組合員全員を解雇して浮いた金で会社の権利を買い戻すと脅してくる。

 

社員はどうなると問うランジュに対し、そんなもの知るかと応える。お前を殺してやりたい、悲しむ者はいないだろうと言うと、女たちが悲しむと応える。これにキレたランジュが、バタラを撃つ。バタラはそのとき神父の格好をしているのだが、もうすぐ死ぬから神父を呼んでくれと頼む。しかし、誰もバタラのために動かず、彼は死ぬ。

 

これは会社は誰のものなのかと問う話なのだ。

 

☆4.0。ランジュが逃走して話が終わるのが少し残念だ。