ステファノ・モルディーニ監督によるイタリアのサスペンス映画。出演はリッカルド・スカマルチョ、ミリアム・レオーネ、マリア・パイアート。
<あらすじ>
愛人の写真家ラウラを殺害した疑いをかけられ、絶体絶命の実業家アドリアーノ・ドリア。事業の成功で得た名声を失いたくない彼の前に、これまで敗訴したことのない敏腕弁護士フェラーラ・ヴァージニアが現れる。圧倒的に不利な状況にも関わらず「アドリアーノを無実にしてみせる」と豪語するヴァージニア。彼女は残り3時間しかないと、真実を話すよう促す。
ドリアはラウラとの不倫をバラされたくなかったら金を払えと脅迫されていた。しかし彼はラウラと別れようとしており、その話の最中に事故で若者を死なせていた。事故の際、対向車線を車が通過した。ドリアは警察を呼ぼうとする。しかし、ラウラに説得され、事故を隠蔽したドリアは、ラウラに弱みを握られている状況だった。
事故車の修理を依頼したラウラは、ひとりでレッカーの到着を待っていた。そこに撥ねた若者の祖父がやってきて、何も知らずに車の修理を申し出た。ラウラはそれを受け入れたが、老人は孫ダニエルを撥ねたのではと疑い始め、ラウラとドリアから真実を聞き出そうとする。だが、若者の車はすでに湖に沈めてしまっていた。
老人の名はトンマーゾ。ドリアは彼がホテルでラウラを殺害したと考えていた。しかしこのストーリーにすると、事故で若者を死なせたことを認めなければならない。そこでヴァージニアは、自動車事故はラウラが単独で起こしたことにするシナリオを作り出した。
これで裁判に勝てると考えた彼女だったが、実は話にはまだ続きがあった。ダニエルは事故では死んでおらず、ドリアが首を絞めて殺していたのだ。こうなるとダニエイルの遺体が見つかってから再度ドリアが疑われる可能性があることから、ヴァージニアは激怒したが、時間が迫っており、それは警察の捜査を待つしかないと告げる。
裁判用のシナリオが完成したことから、ヴァージニアは部屋を辞した。彼女が得たのは、ダニエルの車を沈めた場所を記した地図。これは、今回のシナリオを完成させるために弁護士だけに渡された情報であり、決して検察が得ることができない証拠のはずだった。
ところが、やってきたフェラーラ・ヴァージニアは、トンマーゾの妻だった。ふたりは、孫の死を警察に訴え出たときに本物のフェラーラ・ヴァージニアに捜査を握り潰され、それでも諦めずにずっとドリアの監視を続けていたのだった。そして彼の元に、本物のフェラーラ・ヴァージニアが遅れてやってくる。
<雑感>
最後のどんでん返しが見事な作品。トンマーゾ夫妻は、孫の死についてドリアとラウラを怪しみ、警察に相談するが、金持ちの顧問弁護士ふたりの権力の前に何もできずに悔しい思いをする。そこで、孫の死体が見つかれば事件にするしかなくなることから、事件を推理し、ドリアが何を隠していて、検察が何を得られないか検証した上で一芝居打ったのだ。
結局、ラウラを殺したのはドリアだった。ドリアはそのことは絶対に隠し通すつもりであったが、それも孫を失った老婦人により阻止された。遺体を沈めた場所を書いたペンからインクが漏れて、中に盗聴器が仕込まれていたと気づくところも良い。なかなか良くできたシナリオだ。
☆4.0。ほぼ会話劇だが、最後のどんでん返しには驚いた。