「シャニダールの花」(2012年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

石井岳龍監督による日本のドラマ映画。出演は綾野剛、黒木華、刈谷友衣子。

 

 

<あらすじ>

 

極少数の限られた女性の胸にだけ、見たことのない世にも美しい花が咲くという不思議な現象が起こっていた。満開時に採取されたその花の成分は、画期的な新薬の開発に繋がるとされ、億単位で取引されていた。そんな花の研究に没頭する植物学者の大瀧賢治と、提供者のケアを担当するセラピストの美月響子は、次第に恋に落ちていく。

 

しかし、提供者の女性が謎の死を遂げる事件が相次ぎ、研究所に対し不信感を抱き始める大瀧。一方で、響子は花の魅力にのめり込んでいく。花が美しく咲く女性と、咲かない女性がいる。咲かない女性は美しく花を咲かせた女性に嫉妬する。だが、花を切除すると毒が回って女性は死んでしまう。そんなある日、響子の胸に花の芽が出た。

 

心配になった賢治は、花の芽を摘み取ってしまう。響子は賢治の元を去り、研究所も閉鎖が決まってしまう。

 

大学に再就職した賢治のところに、響子の積んだ芽から栽培されたシャニダールの花の種が届いた。窓から捨てるとそれは庭で美しく咲いた。響子を訪ねてみると、彼女は昏睡状態になっていた。花の秘密を探る賢治。そして彼は、ネアンデルタール人が死者に花を供えた話がウソであるとの仮説を聞かさせる。

 

ネアンデルタール人は、シャニダールの花に滅ぼされたのだ。人間は生命の最終形態などではなく、花に進化して絶滅する運命だった。そんなことあるのかと驚く賢治は、いつしかシャニダールの花が咲く場所へ迷い込む。そこには響子がおり、あなたは進化したのだと諭される。

 

<雑感>

 

この作品は昨夜視聴した作品の中で最も面白かった作品。シャニダールの花について、暗喩するものを探す楽しみ方もあるだろうが、オレは逆に純粋に人間が花に進化するSFのような内容だと思って楽しんだ。花の意味を探るより、人が花に進化する方が意味深いと考えたからだ。

 

だから解釈は2通りの方向性があると思う。花を問うか、進化を問うか。人間が滅び、別の生命に進化するSFは数多いが、それはさらなる知的生命体であったり、あるいは環境に順応するために人類の記憶を失ったり、いずれにせよ知性あるものに進化する作品が多かった。

 

花になって種として消え去る内容は、それ自体が衝撃的だ。ネアンデルタール人が死者に花を添えて弔ったとの一般的解釈を、こういう形で再解釈したアイデアは秀逸であった。

 

☆5.0。女性の胸に花が咲いたところで、また性欲の話かと身構えたのだが、これは違ったな。