「あなたを抱きしめる日まで」(2013年作品)感想 | 深層昭和帯

深層昭和帯

映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

スティーヴン・フリアーズ監督によるフランス・イギリスのドラマ映画。出演はジュディ・デンチ、スティーヴ・クーガン、ソフィ・ケネディ・クラーク。

 

 

<あらすじ>

 

その日、フィロミナは、50年間かくし続けてきた秘密を娘のジェーンに打ち明けた。

 

1952年、アイルランド。10代で未婚のまま妊娠したフィロミナは家を追い出され、修道院に入れられる。フィロミナは男の子を出産、アンソニーと名付けるが、面会は1日1時間しか許されない。

 

そして3歳になったとき、アンソニーは養子に出されてしまう。以来わが子のことを一瞬たりとも忘れたことのない母の想いを受け止めたジェーンは、BBCをクビになった元ジャーナリストのマーティンに話を持ちかける。

 

アンソニーは50歳の誕生日を迎えているはずだった。マーティンは協力を申し出、修道院を取材するが、そこはアメリカに子供を1000ポンドで売っていたことがわかる。アメリカでの養子先を探したふたりは、アンソニーがマイケル・ヘスという名前で政府の顧問弁護士だった事実を知る。だが彼は8年前に亡くなっていた。

 

アンソニーはゲイで、ピートというパートナーがいた。彼から話を聞き、アンソニーもまた母親を探していたことを知るフィロミナ。彼女は、ゲイになってすでに死んでしまった息子のことを記事にしないようにマーティンに頼んだが、彼の墓参りをして心を落ち着かせると、記事にしてもいいと申し出た。

 

<雑感>

 

マーティンはそれほど乗り気ではなかったのだが、調べ初めの段階で修道院が人身売買をやっていたことがわかり、ジャーナリスト魂に火が付く。そこから彼の調査能力が発揮され、真相に迫っていったはいいが、すでに死んでいることがわかり雲行きが変わる。

 

マイケル・ヘスと名を変えた息子は、アメリカで重要な職に就くほど出世していたが、一方でゲイとわかり、しかも死因はエイズ。母親の心はここで折れかかる。しかし、息子もまた母を探していたこと、無念のうちに死んだこと、修道院を告発したいマーティンの心情を鑑み、許可を出すのだ。この心の移ろいが上手く描いてある。故に感情移入しやすい。

 

カミングアウトする内容の映画と構造は同じだ。それが母の視点から描かれている。

 

☆3.6。母が息子のありのままの人生を受け入れる内容になっている。