「誘惑 Perfetta illusione」(2022年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

パピ・コルシカト監督によるイタリアの恋愛映画。出演はジュゼッペ・マッジョ、カロリーナ・サラ、マルゲリータ・ヴィカリオ。

 

 

<あらすじ>

 

トニとパオラは幸せな夫婦生活を送っていた。トニは売れない画家であったが、パオラと出会ったことで絵を諦めて働き始めていた。そんなおり、パオラは長年の自分の夢であり、家計を助ける意味合いも兼ねて、自分のブティックを持とうと計画した。

 

ふたりの生活のために夢を諦めたトニは釈然としなかった。パオラに不満はないが、彼女だけ自分の夢を叶えるのかと。そんなおり、トニは彼の絵を高く評価する美術評論家のキアラと出会った。彼女の家は裕福で、芸術に溢れる生活をしている。彼女と生活できれば、トニは自分の夢を追い続けることができる。しかし、彼はパオラを愛しており、深い懊悩に苦しむ。

 

キアラは、芸術に造詣が深く、絵画を取り扱っている両親に早く一人前になったと認めてもらう必要があった。ところが、両親はトニの才能をあまり高く買っておらず、平凡と評した。そのころパオラは、店のことで出資金の半分を要求されたばかりだった。トニは借金してでも金を用意すると約束する。

 

トニは借金するつもりはなく、絵で稼いだ金でパオラの開業資金を用意しようと、キアラの家に入り浸った。キアラはトニのためにスポンサーを探すなど、彼女もまたトニの成功を焦っていた。パオラとキアラの間で二重生活をすることが、徐々にトニの重荷になってくる。

 

成功を焦るキアラは、携帯に気を取られて人を轢き殺してしまった。両親に「目の前で女の人が死んだ」とウソをついたために彼女は轢き逃げ犯として警察に追われることに。トニの個展は6週間後に迫っていたが、彼はキアラの両親から30万ユーロで身代わり出頭をするよう求められる。トニとパウラは要求を50万ユーロに増額して身代わりを引き受けることに決めた。

 

トニは数か月拘束されてそのあとで個展を開催するつもりでいたが、パウラはキアラに直接会って、トニが浮気していた事実を知る。すると彼女は、慰謝料として50万ユーロを自分が貰って別れると告げてきた。そのころキアラもまたトニが既婚者だったと知ってショックを受けていた。

 

だがキアラは、別れてしまうと真実を証言されて重大な罪を負わされる立場にあった。気持ちは冷めても簡単に別れられない。留置が終わったトニは社会復帰するが、キアラは彼に冷たく、社交界にいる自分と底辺の彼の間に線を引いた。トニは静かに個展会場を後にする。

 

<雑感>

 

情報がない作品だったので、若干詳しくあらすじを書いておいた。イタリアのテレビ映画で、利己的なふたりの女性の間で揺れ動く男性が、どちらにも捨てられる作品である。

 

女性は利己的であって、決して男性や家族に対して献身的ではないと描くのは近代的な手法。いわゆる母性の否定というもので、100年くらい前からよく目にするようになった文芸である。

 

ポリコレ全盛の昨今ではそれは当たり前になっており、逆にあまり目にしない作風なので、ある意味古典的といえるのかもしれない。

 

☆3.5。序盤は夢を追う話で、後半は現実に引き戻される話になっている。