「おヤエのもぐり医者」(1959年作品)感想 | 深層昭和帯

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春原政久監督による日本のコメディ映画。出演は若水ヤエ子、待田京介、藤村有弘。

 

 

<あらすじ>

 

若水医院は貧しい住民から重宝がられていたが、助手をしていたおヤエを残し院長が他界してしまう。看護婦の免状だけでは開業出来ず閉院を決めたが、患者に懇願されて医師法違反と知りながらも診療を続けざるを得なくなってしまう。

 

若水医院にやってくるのは貧しい下町の人間ばかり。おヤエは、見よう見まねで適当な診察を続ける。そして盲腸で担ぎ込まれてきたチンドン屋の手術をすることに。何とか手術は成功したが、チンドン屋は手術代の代わりにクラリネットを置いて逃げてしまった。

 

世話焼きのおヤエは、失業中の男を代わりに雇ってくれるよう頼んだ。失業中の男は喜んでクラリネットの練習に励んだが、脚の状態が悪くなってまた手術をしなければならなくなった。手術は成功。しかしこのまま営業を続けてはいつか事故になると、おヤエは廃業を宣言した。

 

すると、お別れ会の最中におヤエは医師法違反で検挙された。悲しむ一同であったが、彼女はすぐに釈放された。それというのも、手術で助手を務めた男が、医師免許を持っていたからである。

 

<雑感>

 

これはいまの時代だったらさすがに問題になる内容だろう。医師法違反はいかん。危なすぎる。昭和の時代はこういうギャグすら許容された寛容な時代だったのだ。貧しい人たちのために医院を開業してくれる人情医師というのは、江戸時代から脈々と続く話だ。

 

いまだったらブラックジョークの類でギリギリいけるかどうかのネタだが、この作品はブラックな笑いを含みつつも、全体を包むのはおおらかな精神だ。細かいことは気にしない昭和の善いところだけが描かれているのかな。

 

☆3.5。筒井康隆ならもっと恐ろしい描写になっていただろう。そういう短編が確かあったな。