「大河への道」(2022年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

中西健二監督による日本のコメディ映画。出演は中井貴一、松山ケンイチ、北川景子。

 

 

<あらすじ>

 

千葉の市役所で働く池本は、企画会議で「伊能忠敬の大河ドラマを作ろう」と提案した。苦し紛れの発言だったが、企画はあれよあれよと県知事にまで通り、脚本家まで決まってしまった。指名を受けた脚本家の加藤浩造は、伊能忠敬は地図が完成する3年前に死んでいることを指摘。これでは脚本は書けないと難色を示した。

 

たしかに伊能忠敬は地図が完成する前に死んでいた。江戸時代末期、残された彼の弟子たちは、忠敬の死を3年間隠し、その間は公金を貰いながら地図の完成に邁進することになった。勘定奉行に怪しまれながらこれを巧みにいなし、大日本沿海輿地全図は完成した。

 

江戸城でお披露目される晴れの舞台に、伊能忠敬が来ないことで、弟子たちは詰問を受ける。しかし、「伊能忠敬はいます」と、彼が履いていた草鞋を差し出した。地図の完成度の高さに驚いた徳川家斉は、「わたしには伊能忠敬が見える」と口にし、伊能の死を隠したことは不問になった。

 

加藤は脚本を断ってしまうが、池本は自ら脚本を書くために加藤に弟子入りを志願する。

 

<雑感>

 

昭和の時代の時代劇は、時代劇をバカにしながら作っている節があった。たしかに、江戸時代といっても長く、初期、中期、後期で街並みなどは全然違うはずなのに、時代劇には時代劇という時代があり、どれも同じセットで撮影されていた。

 

昭和の後期から平成初期にかけては、トレンディドラマが流行して、時代劇は時代遅れと見做され、あまり製作されなくなる。だが、優れた原作者や脚本家、監督というものはいるもので、平成の後期くらいから新しい形の時代劇が数多く作られる。どれも工夫されていて楽しめる。

 

この映画は松竹の製作。俳優たちは、現代と江戸時代でそれぞれに多様な立場にある人物を一人二役で演じている。どの役者も素晴らしく、徳川家斉に伊能忠敬愛用の草鞋を差し出すシーンは感動的である。こういう素晴らしいドラマは昭和の後期にはなくなっていた。時代劇の可能性を感じる作品であったな。

 

☆5.0。伊能忠敬の地図は、何度見てもデカイ。