関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦監督による日本のドラマ映画。出演は香川照之、津田寛治、尾美としのり。
<あらすじ>
宮松は端役専門のエキストラ役者。ある日は時代劇で弓矢に打たれ、ある日は大勢のヤクザのひとりとして路上で撃たれ、またある日はヒットマンの凶弾に倒れる。来る日も来る日も殺され続けている。真面目に殺され続ける宮松の生活は、派手さはないけれども慎ましく静かな日々。
そんな宮松だが、実は彼には過去の記憶がなかった。なにが好きだったのか、どこで何をしていたのか、自分が何者だったのか。なにも思い出せない中、彼は毎日数ページだけ渡される「主人公ではない人生」を演じ続けるのだった。
そこに、彼を知る人物が訪ねてくる。男によれば、宮松の本当の名は山下だという。職業はタクシー運転手で、野球部ではどこポジションも守るユーティリティ・プレイヤーだった。結婚している妹がいるというので、何か思い出すかもしれないと実家に泊まることになった。
野球グラブを見ても何も思い出さなかった宮松であったが、妹に「昔はよくHOPEを吸っていた」と教えてもらい、タバコ屋で買い求め一服したところ、彼の記憶は戻った。
妹は、異母妹だった。山下だった頃の彼は、妹を女として見ていた。だが何をするわけでもなかったが、同じタクシー会社に勤める妹の夫になる男にそのことを指摘され、キレて暴れた。そのあと、彼は事故に遭い、記憶を失ったのだった。
宮松の記憶喪失は、すべてを忘れてしまいたい願望の故だった。
彼はすべてを思い出したが、妹の幸せを考え、記憶が戻らないふりをして、エキストラ生活へと戻っていった。
<雑感>
香川照之は上手い。これはもう認めるしかない。記憶を失っている間はちょっと青白いようなメイクをして、自信なさげな所作。タバコを吸って記憶を取り戻した後は、もう宮松ではなく山下になっている。こういう控えめな顔芸はいいな。
劇中で、宮松が撃たれた描写があるが、妹の旦那に本当のことを言われてショックを受けた暗喩だと勝手に解釈した。本当に撃たれたなら、記憶が戻ったらまず復讐するだろうし、演技がおかしいということになる。でもそうじゃないよ、きっと。
☆5.0。これは良かった。こういう抑制の効いたエンタメもいいね。