ダーレン・アロノフスキー監督によるアメリカのサスペンス映画。出演はナタリー・ポートマン、ヴァンサン・カッセル、ミラ・クニス。
<あらすじ>
プリマドンナのニナは、次回公演で主役を射止めた。これを快く思わなかったのは、ライバルのベスだった。彼女はベテランで、新人起用に積極的な演出家が気に入らなかった。演出家のトマは、若いダンサーの起用に積極的で、それはニナに限らなかった。
比較されることはニナのストレスになった。彼女には自傷癖があり、身体には傷がいくつもある。そしてストレスを感じると幻覚を見る。もうひとりのプリマ候補であるリリーと遊びに出ると、羽目を外しすぎて翌日の練習に遅れた。代わりにプリマ役をやっていたのはリリーだった。ニナはリリーの陰謀だと感じた。
プリマはニナ、代役はリリーと決まった。リリーに疑念を持つニナは、トマに彼女を外してくれと頼んだが、考えすぎだと諭された。
幻覚はますます酷くなり、初演当日、彼女は自分の背中に黒い羽が生えたような気になって失神した。開演ギリギリまで寝ていた彼女は慌てて会場へと向かい、妖艶な踊りで観客の視線を釘付けにした。彼女は幻覚と現実の区別がつかないまま踊り続け、閉幕と同時に死んでしまった。
<雑感>
この作品は友人に勧められて劇場鑑賞したはずだ。そのときも感心したものだが、やはり素晴らしい内容。ブログで映画の感想記事を書き始めたのは2017年の夏からだから、それ以前に劇場鑑賞した作品は記事がないものが多い。
全体にサスペンス調に仕上げられているが、サスペンスというわけではなく、ニナの内面を身体的に表出させることで、何か事件が起きているように見せている。ニナの身体には痣があるのだが、それが自傷によるものなのか、他傷によるものなのか、はたまた幻覚なのか、最後まで曖昧なまま推移して、最後は内面をすべてさらけ出すと同時に死んでしまう。
主に気に入ったのはこの脚本だった。人間の内面にある善悪を、白鳥と黒鳥で表現し、そのどちらも表現できなければプリマにはしてもらえない。ニナは、自分の中で押し殺してきた黒鳥(悪い部分)をさらけ出そうともがき、外面の白鳥が黒鳥の表出により死んでしまう。
わかりやすい良い脚本だと感心したわけだ。
☆4.0。こういうアイデアのある作品が好きだ。