「ブルーベルベット」(1986年作品)感想 | 深層昭和帯

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デヴィッド・リンチ監督によるアメリカのスリラー映画。出演はカイル・マクラクラン、イザベラ・ロッセリーニ、デニス・ホッパー。

 

 

<あらすじ>

 

大学生のジェフリーが、散歩中に人間の耳を発見する。届け出を受けて警察が捜査を開始。ウィリアムズ刑事の娘で幼馴染のサンディが、歌手のドロシーが捜査対象になっていると教えてくれた。ジェフリーとサンディは、好奇心から業者を装いドロシーの自宅に潜入する。だが同じ日に、ゴードンという男がドロシーの家に潜入して計画は失敗に終わる。

 

クラブでドロシーの歌声を聴いたジェフリーは、彼女に魅せられてしまい、自宅に潜入する。クローゼットに隠れたジェフリーは、彼女の夫ドニーと息子ドンが誘拐されている事実を知ってしまう。犯人はフランクという暴力的な男で、彼は恐喝によりドロシーに性的関係を強要していた。発見した耳は、ドロシーの夫ドニーのものだった。

 

クローゼットに隠れていたところをドロシーに見つかったジェフリー。ドロシーはなぜか彼と性的関係を結ぶ。彼女を好きになったジェフリーは、ドロシーをフランクの暴力から助けようとする。その計画に、サンディを巻き込む。自宅を突き止めたジェフリーは、彼が麻薬関係者と会っていることを突き止めた。

 

ドロシーとの肉体関係は続いた。あるとき、ドロシーの家から出てくるところをフランクに見つかり、ドロシーともども連れ出される。そこで、ドニーとドンが、麻薬密売人のゴードンの家に匿われていると知る。ゴードンは最初の潜入時に、黄色いジャケットで家に入ってきた男だ。そのあと、ジェフリーはリンチされる。

 

怖くなったジェフリーは、ウィリアムズ刑事を頼るために警察に赴くが、そこにいたのはゴードンだった。彼は、ウィリアムズの同僚の刑事だったのだ。結局何も言い出せず、ゴードンの監視だけが強まる。サンディとパーティーに出掛けた夜のこと、暴行を受けて裸のまま逃げ出したドロシーを保護したふたりは、サンディの家で彼女を匿うことにした。

 

サンディは、父親に連絡をした。ウィリアムズはドロシーの自宅に急行する。するとそこには、ゴードンとドニーの死体があった。実はゴードンは、麻薬の潜入捜査官で、フランクに取り入って近づいていたが、ジェフリーの行動により正体がバレてフランクに殺されたのだ。

 

同僚を殺されたウィリアムズは、フランク宅に突入する。しかし、警察無線を傍受していたフランクは、ドロシーの家にジェフリーがいると知って彼女の家に向かっていた。拳銃を手にクローゼットに隠れるジェフリー。それに気づくフランク。先に銃を使ったのはジェフリーだった。

 

事件は解決する。ジェフリーはサンディとの日常に戻り、ドロシーはドンと再会した。

 

<雑感>

 

デヴィッド・リンチ監督作品は、なんといってもねちっこい演出とインパクトのある色彩である。奇妙なシーンはより奇妙に。淫靡なシーンはより淫靡に。爽やかなシーンはより爽やかに。この繰り返しの中で物語の中にグイグイ引き込まれ、感情を揺さぶられていく。

 

この映画が公開された3年ほど前、「クラッシャージョー」というアニメ映画があった。これが、作画などは良くできているはずなのに、全然面白くない。なぜこんなに面白く感じないのかと仲間内で議論となり、結論としては「演出がダメ」ということで落ち着いた。

 

そのころ、演出に関して曖昧な知識しかなかったので、ひとつのシーンをどう見せるか、どう撮るか、ストーリーと演出を頭の中で分解する作業をよくやっていた。物語はこうで、それを演出でこう撮っていると、頭の中で分けるのだ。それまではこの行為が出来ていなかった。ひたすら訓練のつもりでやり続けた。

 

そんなときに出会ったのが「ブルーベルベット」だった。ストーリーはかなり陰惨なのに、映像の色彩はカラフルで、ポップで、50年代風である。全体的にはとても軽いのに、ドロシーが絡むシーンになると重々しく豹変する。こうやって演出に落差をつけて観客を引き込むのかなどと、演出についてさらに勉強するきっかけになった。

 

そこにフランク役のデニス・ホッパーの演技と存在感が加わる。頭の中で、ストーリーと演出と演技が分解されていった。映画というのはこうしたものが一体となって面白さを作っているわけだから、漫然と目にしているだけでは、何がどう面白かったのか見えてこない。

 

「クラッシャージョー」という納得がいないアニメを目にしたのは高校生のとき。なぜ納得できないのか、面白く感じないのかと考え続けてしまったことで、いまこうやって毎日映画ばかり見ている人間になってしまった。

 

☆5.0。何がきっかけで人生が狂うかわかったもんじゃない。