「トランク 走る密室」(2024年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

マルク・シーサー監督によるドイツのサスペンス映画。出演はシーナ・マルテンス、アルチョム・ギルツ、ルイーゼ・ヘルム。

 

 

 

 

<あらすじ>

 

ロックされた車のトランクの中で目を覚ました28歳の医学生マリーナ。状況が把握できずにいるが、恐ろしいことに自分が失ったのは何が起こったかの記憶だけではないことに気づく。彼女は恋人のエノとともに南米旅行に旅立つところを拉致されていた。

 

ヒッチハイクした車に拉致されたようだった。携帯電話だけが命綱の彼女は、友人に電話して状況を伝える。マリーナはすでに腎臓を切り取られている。マリーナの父は医師。父の元には身代金の要求が届いていた。マリーナは携帯に移っていた犯人の写真を送ると、病院に来ていた患者の父親だという。その患者は少女で、腎臓移植を必要としていた。

 

車は暴走を繰り返し国境を越えてチェコに入った。いまだに犯人の車のナンバーさえわからないというので、マリーナはトランク内部から破壊してできたわずかな隙間から割れた鏡を差し込み、ナンバーを読み取った。友人は車を特定してマリーナが拉致されている車を追っていた。

 

携帯電話のバッテリー残量はごくわずかだった。フェリーに乗せられ接触は叶わなかったが、友人は確実に追いついていた。恋人だと思っていたエノが、犯人の仲間だった。エノがマリーナを誘惑して身代金目的で誘拐するはずが、腎臓を取られることになり、エノはさすがに気が滅入ったらしく、謝罪の電話をかけてきた。

 

エノは、マリーナに嫉妬し、彼女の父の病院委からものを盗んで売り捌いていた。彼は借金を作り、悪い連中と縁が切れなかった。悪いと思っていながら、大病院の娘で成績も優秀なマリーナを凌辱することに快感を覚えていた。マリーナはエノに対し、お腹にはあなたの子がいると訴えた。犯人と一緒に車に乗っているエノは、青ざめることになった。

 

バッテリー残量が2%になったとき、エノが行動を起こした。強制的に車を止め、彼女を救おうとしたのだ。トランクが開けられ、助け出されようとしたとき、エノは犯人に撃たれて死んだ。エノの死体はマリーナと一緒にトランクに閉じ込められた。

 

携帯電話が使えなくなり、トランクの中にあったカメラの録画機能を使い、マリーナは遺言を残した。そして必死に開けた床下の穴から棒を伸ばし、タイヤのホイールに突っ込む。すると車は事故を起こし、湖に突っ込んだ。トランク内部はすぐに水が溢れ、彼女は溺れそうになるが、後部座席側の網を外して沈みゆく車内から脱出した。

 

<雑感>

 

ドイツのアマゾンオリジナル作品。どこにも情報がなかったので詳しくあらすじを書いておいた。「シルバー 夢の扉」もドイツのアマゾンオリジナル作品だったが、ドイツのアマゾン作品はすごいな。レベルが高い。この作品も劇場公開してもおかしくない出来だった。

 

車のトランクの中に閉じ込められている女性が主人公なので、ほぼ主役の女性のひとり芝居。そこにエノ役の男性と、犯人役の男性が絡むだけなので、登場人物は3人。その他は検問所の警官とか、最後にちらっと登場するチェコの警官だけだ。

 

映像のほとんどを低予算で作れる利点に加え、効果的に全体映像を出すことで、閉鎖空間からの解放を演出できる。ラストシーンも、息詰まる監禁状況から水中への脱出、その後に水中から顔を出して息をするところで終わる。

 

最後に彼女はトランクの中にあったカメラに遺言を残し、車外に捨てる。そのカメラは警察の車両が轢き潰して壊してしまう。つまり、遺言は誰にも届かず無効になって、彼女は生き残ることを暗示させている。こういう細かい演出がいい。

 

スマートフォンでできること、トランクの中でできることなど、限られた状況をフルに使ってサスペンスを盛り上げている。確かにトランクの中には修理用の備品などがあり、リアのウィンカーなどは中から破壊できる。車に関する知識を上手く設定に落とし込んである。最後の脱出シーンもそうだ。トランクから後部座席に抜けるルートを見つけてある。

 

☆5.0。サスペンス作品として一流。ドイツのアマゾンオリジナルは熱いな。