「もっと遠くへ行こう。」(2023年作品)感想 | 深層昭和帯

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映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

ガース・デイヴィス監督によるアメリカ・オーストラリア・イギリスのドラマ映画。出演はシアーシャ・ローナン、ポール・メスカル、アーロン・ピエール。

 

 

<あらすじ>

 

2065年アメリカ。ヘンとジュニアが住む家に、見知らぬ来訪者がある。彼はふたりに宇宙移住計画を勧める。ところが検査は2年後だという。作物が育たなくなった地球。宇宙では作物が育つと聞いてふたりは移住に興味を持ち始めた。

 

1年後、再び男はやってきた。ジュニアだけが選ばれたから移住してくれという。ジュニアは断ったが、ランダムなグループのデータを取る必要があるという。出発は数週間後。男は有無を言わさず移住させることに同意させた。

 

そこに荒くれ者の集団がやってきて、ふたりの牧場の納屋に放火した。ジュニアは暴行を受けて怪我を負った。それでも男はふたりに対する聞き取り調査をやめなかった。男は、ヘンとジュニアの過去をほじくり返し、ふたりの間に溝を作っていく。

 

ジュニアの家への嫌がらせは続いた。怒ったジュニアは銃で応戦して、逆に殴られてしまう。

 

ところがこれらの出来事は、ジュニアが宇宙へ旅立った後のことだった。ジュニアと思われていたのは、AIのアンドロイドだった。アンドロイドは意識を持てるかどうかの実験であり、ヘンにとっては人間とのかかわりの中でアンドロイドをどう捉えるかの実験であった。ヘンは、アンドロイドをジュニアだと思い込んでいた。

 

ジュニアは地球に戻ってきた。そして自分の妻がアンドロイドを愛している事実を突きつけられた。ジュニアはそれに我慢できず、ヘンはおかしくなって家を出て遠くへ旅立った。ジュニアはヘンと同じ顔をしたアンドロイドと暮らし始めた。

 

<雑感>

 

アマゾンオリジナル作品。シアーシャ・ローナンは素晴らしい演技だった。ただ、悪趣味な脚本というか、よくできてはいるけど好きなタイプの物語ではなかった。

 

ほとんどヘンとジュニアの演技だけで成り立っていて、ヘン役もジュニア役もアンドロイドと二役である。ジュニアのアンドロイドは真空パックされて運び出されていく。ああいう細かいシーンがあるかないかで、リアリティに差が出てくる。

 

この時代では普通の乗り物なのか、空飛ぶ車も出てくるし、ジュニアが宇宙ステーションで訓練を受けているシーンも出てくる。終わらない日常の閉塞感の中で病んでいくふたり、自分を取り戻していくそれぞれ、本物と偽物の境界に悩むぞれぞれ、熱烈に求めあうふたり、様々なシチュエーションの演じ分けが素晴らしい。

 

☆4.3。好きな話ではなかったが、よくできた脚本と素晴らしい演技。