「GET ACTION!!」(2014年作品)感想 | 深層昭和帯

深層昭和帯

映画、ドラマ、アニメ、特撮など映像作品の感想を中心に書いています。

近藤順也監督による日本のドキュメンタリー映画。

 

 

<あらすじ>

 

今から20年前。世の中はバブル崩壊、インターネット前夜、日本の音楽業界ではロックを喰い物にするバンドブームがようやく終焉。そんな時代に僅か3年に満たない活動期間にもかかわらず、凄絶な足跡を残したバンドがこの国にいた。

 

アメリカ、カナダ、フランス、ベルギー、ドイツ、スペイン、オーストラリア、海外レーベルからリリースされたおびただしい数のシングルとアルバム。R&Rをあくまでも"今"のものとして独自に再構築、無駄を徹底的に削ぎ落とした約90秒のプリミティブR&Rを速射砲のごとく連発した、日本ロック史に類をみないバンド、それがTEENGENERATEだ。

 

しかし日本の音楽メディアはごく一部を除いて彼等を黙殺。一方、海外では少年たちの人生を変えるほどのスーパーヒーローとなっていた。あの時代、一体何が起きていたのか?メンバーや当時の関係者、総勢40人に上る貴重な証言によって彼等の短くも太すぎる足跡を辿る。

 

<雑感>

 

90年代の終わり、ちょうど日本人がバブル崩壊を実感し始めたころに活動したバンドTEENGENERATEを語りつくすドキュメンタリー。この世代の若者にとっては、彼らが「若者たちの創造への渇望」としてのパンクなのだろう。音楽性も影響を与えたのだろうが、「若者たちの創造への渇望」を刺激したことが最大の功績なのだと思っている。

 

日本で90年代に起こっていたバンドブームは、英国で80年代に起こっていたバンドブームのようなもので、ビッグビジネスを前提としたものであった。LUNA SEA、黒夢、L'Arc〜en〜Cielなどが先行して、後続のGLAYやその他諸々とにかくよく売れた。

 

すでに社会人だったこともあり、彼らが業界にもたらしてくれた恩恵は、他業種ながら非常にありがたかったものだ。80年代に、デュラン・デュランやカルチャー・クラブが英国にもたらしたような恩恵が、まさか日本にもたらされるとは思わず、信じられないような気持で彼らフロントマンたちの巨大広告を遠くから眺めていた。

 

一方で、商業的な成功を前提とした音楽づくりは、その中に入れなかった若者たちに鬱積を募らせる。一流大学卒の大手レーベル社員、音大卒のエンジニア、プロのカメラマン、広告代理店、そんな大人たちの世界の大金が動く話だけが音楽ではないと、満を持していた人たちがいたのだ。彼らはまさに「若者たちの創造への渇望」を心の中にマグマのように溜め込んでいた。

 

そしてそれこそが「パンク」であって、彼らの音楽性が「パンク」というわけではない。そこの違いを強調した内容であった。素晴らしいと思う。

 

☆4.5。ただ、「怒れる若者たち」との間違った解釈も散見される。