「ハーバーマン 誇り高き男」(2010年作品)感想 | 深層昭和帯

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ユライ・ヘルツ監督によるドイツ・チェコ・オーストリアの戦争映画。出演はマルク・ヴァシュケ、カレル・ローデン、ベン・ベッカー。

 



<あらすじ>

ドイツと隣接するチェコスロバキアのズデーテン地方で製材所と製粉所を営むドイツ人経営者のアウグスト・ハーバーマン。彼の職場には多くのチェコ人が採用され、チェコ人女性ヤナと結婚。しかし彼女にはユダヤの血が流れていたが、幸せの絶頂にいたアウグストは、チェコ人の親友カレルからその事実を教えてもらうことはなかった。

1938年、ドイツがズデーデンを占領。村に来た親衛隊少佐コスロウスキーはチェコ人を虐待するが、それに同調しないアウグストは彼を苛立たせる。一方、アウグストの弟ハンスは、ヒトラーに傾倒、ドイツ国防軍に加わる。コスロウスキーの非道がエスカレートする中、チェコ人の処刑を止めるため、アウグストは家に伝わる宝飾を賄賂としてコスロウスキーに渡す。

しかしドイツは敗戦。奪ったものはアウグストの父が犯した女とその子供が奪っていく。アウグストはチェコ人を救うために宝石や財産はコスロウスキーに渡したと話すが製材所と製粉所のチェコ人従業員らは信用せず、彼を水車に縛り付けて拷問。殺害してしまう。

ハーバーマン家はすべてを奪われ、破産した。ヤナとハンス、それに子供は引き上げ列車でドイツに帰っていった。家族はアウグストが従業員たちに拷問に遭ったとは知らないまま生き残り、戦後に裁判を起こしたが、死体を焼かれていたために証拠不十分で不起訴となった。

<雑感>

実話を基にした作品。ナチスの横暴と、一般ドイツ人の善良を同時に描いた作品はそれほど多くないので好感を持った。アウグストは妻を守るためにユダヤ人を救おうとしたのだが、結局なにも救えず、すべてを失い、最後はチェコ人に殺される。そしてチェコ人はユダヤ人を迫害して追い払う。

なぜそんなにユダヤ人が嫌われていたのか、おそらく日本で生まれすんだ我々には本当のところはわからないのだと思う。わかるという人間がいたらそれは嘘つきだ。

☆5.0。金持ちを嫌い、憎む心理がナチスによるユダヤ人迫害に繋がるのだと警鐘を鳴らした作品であった。