「めくらのお市 みだれ笠」(1969年作品)感想 | 深層昭和帯

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市村泰一監督による日本の時代劇映画。出演は松山容子、伊吹吾郎、光川環世。

 



<あらすじ>

あるときお市は新火薬製法の巻物を蘭学者室伏鉄斎に届けるようにと託された。巻物を託した若者は死に、仕事を引き受けたお市であったが、次々に刺客が現れついに谷底に突き落とされてしまった。それを救ったのが、鉄斎の弟子榊弦之介だった。

弦之介の介抱により回復したお市は、ともに連れ立って室伏鉄斎に会いに行くことになった。ところが鉄斎は反の家老に幽閉されていた。そうと知り激怒した弦之介は単身乗り込んで師匠を救出しようと試みるが、藩の用心棒宍戸左近の前に窮地に陥る。

そこにやってきたのはお市だった。宍戸左近を斬って捨て、鉄斎、弦之介ともに助けるが、心を寄せる弦之介には許婚の琴絵がいる。一抹の寂しさを堪え、お市は再び旅に出るのだった。

<雑感>

おっさんがこの映画に萌えるのは、おそらくはセットのせいだろう。ロケのシーンもあるが、ほぼセットで組まれたシーンの連続である。これがいまでは考えられない。狭い空間に机を並べるだけの現代のセットと違い、原野から峠の茶屋まで全部セットで組んで撮影されている。

遠景や風景が入るシーンだけロケなのだ。昔はこれが当たり前で、オレの世代などはこの作品のような撮影方法を当然のように享受していたのだが、時代劇が少なくなり、映画やドラマの予算が少なくなるにつれこうした作品は減っていった。それがあまりにも寂しい。

セットで江戸の風景を組んだときのスクリーンの背景、舞い散る雪、芝居がかったそれらがいまとなっては贅沢極まりないのである。

☆5.0。時代考証を無視した脚本もこの作品の魅力のひとつだ。