「MASTERキートン」(1998年作品)第39話・最終回 感想 | 深層昭和帯

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原作:浦沢直樹・勝鹿北星・長崎尚志、監督:小島正幸、制作:マッドハウス。

 

 

第39話・最終回(狩人の季節・後編)

 

SAS最強と謳われたジェームズ・ウルフ曹長は、除隊後に麻薬の密輸に手を染めた。コルシカマフィアの密輸ルートを奪った彼とスパローは、多くの利益を得た。ところが麻薬密売の後見人をやっていたスワン卿は、ウルフをコルシカマフィアに売る決断をした。

それが原因となってウルフとスパローは仲違いをし、ウルフがスパローを殺した。

殺人事件にSASのジェームズ・ウルフが関わっていると知った陸軍は、彼の戦闘術に対抗するために教え子のキートンに白羽の矢を立てた。キートンはコルシカマフィアが警護するスワン卿の屋敷の木に細工をして、自分が来ていることをウルフに伝えた。

キートンは、SAS時代に自分が原因となってウルフを除隊に追い込んだと思い込んでおり、何とか助けたいと願っていた。

ウルフには行きずりに助けたクレアという女性がいた。そのクレアの存在はコルシカマフィアが知るところとなり、彼女はウルフをおびき出すための人質にされてしまった。ウルフは彼女の中に、自分の娘であるエレンを見ていた。エレンはコルシカマフィアの麻薬で依存症になった後に死んでいた。

ウルフはマフィアを敵と見定め、復讐の機会を窺っていた。彼はヘロインでマフィアに対抗できないと知ると南米からコカインを仕入れてヘロイン市場を崩壊寸前まで追い込んだ。ところがそこで、カレンに麻薬を売っていたのはスパローであると知ることになった。

娘のエレンは麻薬を打っていた場面を咎められて父に反抗し、外に飛び出してトラックにはねられて死んだ。ウルフはスパローを殺した。そのあとは彼には目的がなかったのだ。娘に麻薬を売っていたのはコルシカの連中ではなかった。復讐相手は、スワン卿だけになっていた。

ウルフはキートンを通じてスワン卿に関する情報を提供し、彼とともに屋敷に乗り込んでクレアを救出した。

すべての目標を失った彼は、警察への出頭を拒み、キートンの元を去った。コルシカマフィアが自分を見つけ、麻薬組織である彼らとの戦いの中で死ぬことが、エレンのためになると信じていたのだ。

<雑感>

 

なるほど、なかなか味わい深い作品だった。

ウルフは生まれて初めて狩りをしたときに、ウサギを仕留めた。脚を撃たれたウサギは必死に逃げた。そのときウルフはそのウサギにとどめを刺すべきなのか、手当てをしてやるべきなのか答えを見つけられなかった。そしてずっとどうしたらいいのかわからないままになっていた。

彼は答えを見つけられない。そしてキートンにはそんな彼がウサギに見えてしまう。実際のウサギは戦うウサギもいれば逃げるウサギもいるが、ウルフにとってウサギは臆病で敵を目の前にすると脚がすくんで動けなくなる生き物だった。

キートンはそのことを伝えようとしたのだろう。コルシカマフィアのところに乗り込んで戦うわけでもなく、ヤードに出頭して、つまり逃げるのでもなく、どちらの選択もせずに状況の真ん中で何かが起こるのを待っている。あなたはそんなウサギだと。

クレアにとってウルフは強い男なので、彼は戦うだろうと信じている・・・。ウルフと呼ばれた1匹のウサギは、麻薬犯罪という敵を前にして、どんな行動をとるのかぼやかして終わっているわけだな。